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20話 孤児院救済大作戦 2

 

「ただいま〜。領主邸行ってきたよ。」


 フェリスが領主邸から戻り、翌日の正午に面会の約束をしたと話す。


「ありがとうございますフェリスさん。では明日に備えて、今日はゆっくり休んでください。」


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます。」


「アタシ達3人で行くって事で良いの?」


「いや、フェリスには別に頼みたい事があるんだよ。」


「え〜、ずっと別行動じゃん。」


 拗ねるフェリスにトーマはある頼みごとをする。


「そう言うなって、めちゃくちゃ大事な事なんだ。」


「...わかった。で、何をすればいいの?」


 頬を膨らませたフェリスは、渋々といった表情で納得する。


「お菓子に使う材料の価格調査だ。ここで正確な数字を手に入れられないと、いくら作っても儲けが出ない、なんて事にもなり得るからな。」


「なるほどねー。でも何の値段を調べるの?」


「それは後でメモにまとめとくよ。」


「フェリスさん、宜しくお願いします。」


「任せてよ!」


 頼もしい返事が飛び出したところで、明日に備えるため、あてがわれた部屋で眠りについた。




「さてと、そしたら作戦開始だな。イリナさん、宜しくお願いします。」


「こちらこそ宜しくお願いします。では領主邸へ向かいましょうか。」


 領主邸までは徒歩10分程と近い。


 歩きながら、トーマはイリナに尋ねる。


「ところで、俺の事は領主様にどのように紹介するつもりですか?」


「そうですわね、とても聡明でお優しい方だと。あと異世界人とも。」


 その言葉にトーマは驚く。


「...まだ俺が異世界人だとは名乗ってなかったですよね?」


『確実に異世界人とは名乗っていません。』


(だよな...)


「ええ、ですが分かります。珍しい名前ですし、この世界の常識に捉われない発想は、きっと異世界人だからこそだろう、と。それにその反応は間違いなさそうですね。」


 イリナは悪戯っぽく微笑む。


「すみません、隠すつもりは無かったんですが...」


「いえ、私はトーマさんがどんな出自でも信じる事に決めていますので。」


「そう言っていただけるとありがたいです。」


 この世界にはフェリスやイリナのような善人もいれば、ガトーのような極悪人もいる。


 みんな努力し、苦労し、助け合い、時には争い、生きている。


(世界は違っても、人の根っこは変わらないのかもな。)


 トーマは、急にこの世界を身近なものに感じた。


『トーマ、地球に帰りたくなりましたか?』


(いや、逆にここも地球と変わらないなって思ってるよ。)


 ARIAから、どこかホッとしたような雰囲気を感じた。




「なのでトーマさんは身分を隠す事なく領主様とお話をしていただければと思います。」


 イリナの声に現実に引き戻されたトーマは、話を続ける。


「領主様の名前を覚えとかないと失礼ですよね?何という方なんですか?」


「領主様はヘイデン・パージルト男爵と言います。少し変わっていますが、とても良い方ですよ。」


「なるほど、パージルト男爵ですね。何か事前に知っておいた方がいい事はありますか?」


「そうですわね...あの方は相手の本質を見たがる方なので、綺麗事は好きではないと思います。あとは人を驚かせるのも好きです。」


 イリナはそう言うと、フフッと微笑む。


 そんな話をしているうちに、商業区の繁華街に出た。


 犬獣人のおじさんは、相変わらず元気にたこ焼きを焼いている。


 トーマ達に気づいた彼は、屋台の中から話しかける。


「おーい兄ちゃん!昨日ぶりだな!さっきフェリスがウロチョロしてたんだが、アイツ何やってるんだ?」


「こんにちは。昨日はありがとうございました。彼女は市場調査中なんですよ。色んなお店の商品価格を調べてます。」


「そうなのか、じゃあ新しい商売でも始めるつもりなのか?」


(妙に鋭いな、このおじさん。)


『やはり商売人という事でしょうか。』


「はい、孤児院の子供達の生活を良くするために新しく屋台でも始めようかと。」


「そいつは立派な事じゃねえか!俺達も応援するからよ、頑張ってくれ!」


「はは、ありがとうございます。とても心強いですよ。」


「でもよ、あのチビ達を悪い大人から守る方法も考えとかねぇとな。ここも善人ばかりじゃねぇからな。」


「確かにそうですね。その辺も含めて計画する事にします。ご助言ありがとうございます。」


「良いってことよ!じゃあ頑張れよ!院長さんもな!」


「ええ、ありがとう存じます。」


(お、貴族っぽい言葉遣いだ。イリナさんも元貴族だから色々気を遣ってるんだな...)




 たこ焼き屋のおじさんの元を辞し、領主邸へと向かう。


「ところでイリナさん、さっきから視界の端で黒い影が高速で動いてるんですが...」


「そのようですわね。...フェリスさん、あなたの頑張りはしっかりと見ていますよ。」


 イリナがそう言うと、黒い影ことフェリスが照れくさそうに姿を現す。


「えへへ、バレちゃった。リストの商品は殆ど調べ終えたよ!卵と砂糖ってビックリするほど高いんだね!時間余ったから他の物もついでに調べとくね!」


「ああ、頼んだフェリス。」


 やる気に満ち溢れたフェリスを見送り、今度こそ領主邸へと向かう。




「立派な屋敷ですね。でも貴族の屋敷ってもっと派手なものを想像してました。」


 目の前にあるのは、煉瓦造りの大きな建物だ。


 3階建で、横幅は50m程ある。


 しかしヨーロッパ貴族の屋敷のような優美さは無く、どちらかといえば団地と言った方がしっくりくる。


「パージルト男爵は過剰な装飾を嫌いますので、他の貴族屋敷よりもかなりシンプルなのですよ。」


「なんか良い人そうですね。」


「ええ、とても。」


 イリナが門番に来訪を伝えると、メイドに案内され、すぐに中に通される。


 屋敷の中も質実剛健な造りで、市役所を思い出す。


「ここまで飾りっ気のない貴族の屋敷って珍しいんですか?」


「ええ、おそらくパージルト男爵だけだと思います。普通の貴族は自らの権威を示すために華美な装飾を好みますから。私の家もそうでした。」


 貴族のやり方に思うところがあるのか、イリナは少し暗い声でそう答えた。


「こちらの部屋でお待ちください。」


 メイドに通された部屋は応接間のようで、多少の美術品や刀剣などが飾られている。


 柔らかいソファーに横並びで座り、メイドの淹れた紅茶を飲む。


(この世界でも紅茶は美味いな...)


 そんな事を考えながら20分程待っていると、ノックの音が響く。


 待機していたメイドがドアを少し開けて確認し、トーマ達に告げる。


「大変お待たせ致しました。パージルト男爵でございます。」


 するとイリナはソファーから立ち、ドア前に片膝を立ててしゃがみ、胸の前で両腕を交差させて下を向く。


「トーマさん、私と同じように。」


(なるほど、これがこの世界でのお辞儀か)


 トーマはイリナに倣い、同じ姿勢を取る。


 するとドアが開き、パージルト男爵の足下が視界に入る。




「よう!さっきぶりだな兄ちゃん!」


 その声と口調に、トーマは思わず顔を上げて男爵を見る。


「え、たこ焼き屋のおじさん...?」


 もしかしたらフォーシアに転移して1番驚いたかもしれないと思いながら、トーマは男爵から目が離せない。


「わははは!驚いたか?俺がこの街の領主、ヘイデン・パージルト男爵だ!宜しくな!」


 しばらく固まっていたトーマだが、ハッと我に返り言葉を返す。


「だ、男爵様とは知らず、無礼な態度を...失礼致しました。」


「おいおい、そんなに畏まるんじゃねぇよ。と言ってもここは貴族の屋敷で俺は男爵だからな、まぁ仕方ないか。」


「ご配慮、感謝します。」


 トーマはぎこちなくヘイデンに礼を言う。


(屋台でイリナさんが貴族っぽい喋り方をしてたのはそう言う事だったのか...)


『これは私も予想外でした。』


 ARIAが悔しそうな声で呟く。


「ところでよ、さっき言ってた孤児院の子供の仕事を作るって話だが、今回ここに来たのもそれが理由だろ?」


 それにイリナが答える。


「はい、仰る通りです。それにつきましては、トーマさんに詳しく説明していただいた方が確実かと。」


「そうか。まぁ立ち話もなんだ、そっちで腰を据えて話そうや。」


 そう言うと、2人をソファーへと促す。


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