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19話 孤児院救済大作戦 1

 

「俺が提案するのは、2つの方法です。1つに絞るのも良いし、両方に着手するのもありです。」


 そう前置きをして、トーマはARIAの話を頭の中で噛み砕きながら、具体的な方法を話す。


「1つ目は飲食店の屋台です。この街の商業区を歩きましたが、いろんな食材が豊富にありました。それを利用して、お菓子を作りましょう。」


「お菓子、ですか。でもどのようなものを作るのですか?」


 トーマの提案にイリナが質問をする。


「幾つか候補がありますが、まずは揃えられる材料の種類と原価を調べてから決めるつもりです。」


「なるほど...」


「2つ目の方法ですが、街の便利屋としての活動です。例えば足腰の悪い老人の買い物代行、街に訪れた人の観光案内、他の屋台や商店の手伝い、領主様との繋がりもあるようなので、掛け合って清掃事業などを請け負っても良いでしょう。」


 フェリスが尊敬に満ちた目でトーマを見る。


「屋台は売上がそのまま報酬となります。2つ目に関しては、成果報酬にしても、時間給や日当にしても良いでしょう。」


 トーマが一気に説明すると、イリナは驚いたような表情で話す。


「私は今まで孤児は保護するものだとばかり思い込んでいました。けれどそれは子供達の可能性を潰す考え方だったのかも知れません...」


「これは子供達が一人立ちするための訓練でもあるんですよ。自立できる歳になったら、その経験が必ず役に立ちますからね。」


「そのようですね...トーマさん、私に出来る事はなんでもさせていただきます。どうか宜しくお願い致します。」


「ええ、一緒に孤児院を良くしていきましょう。」


(ARIA、助かったよ。ここまで具体的なプランを一瞬で考えるとは流石だな。)


『いえ、トーマの記憶を基に作成したプランですので。』


「お、お金はアタシが出すからね!」


 フェリスが慌てて資金提供を申し出る。


「そうだ、フェリスにはお願いしたい事があったんだよ。」


「やるわ!任せて!」


「ははは、落ち着いてくれ。最初に解決しないといけないのは、子供達の見た目だ。今の服装だと、人によっては差別的な目で見られるかも知れないから、働く子達の服を買って欲しいんだよ。」


「そうね、じゃあアタシは早速服を買ってくるわ!」


「ああ、頼んだ。最低1人2セットは用意してくれ。新品じゃなくて良いから、小綺麗で仕事のしやすそうなもので。」


「分かったわ!!」


 そう言うなり、フェリスは風のような速さで孤児院を出て商業区へと向かった。


「さて、次はどの事業をやるかですが、まず働ける歳の子供は何人いますか?」


「そうですわね...9人です。」


「分かりました。早速その子達を集めてください。本人の希望を聞きながら仕事を割り振っていきたいと思います。」


「畏まりました。では先程の食堂に集めて参りますので、先に向かってお待ちください。」


 イリナは気品のある所作でスッと立ち上がり、子供達のもとへ向かった。


「さてと、孤児院救済大作戦の開始だな!ARIA、子供達の分析と配置を考えてくれ。」


『畏まりました。』




 暫くして、トーマが待つ食堂にイリナと9人の子供達が入ってくる。


 男の子5人、女の子4人で、年齢は8〜13歳くらいまで。


 ヒューマン、獣人、エルフっぽい子も居る。


「お待たせしました。この子達に仕事をしてもらいます。簡単にですが説明はしてあります。」


「ありがとうございます。じゃあまずは自己紹介だな。俺はトーマ、この孤児院をもっと良くするために、みんなに協力してもらいたいんだ。宜しく頼むよ。」


 子供達も順番に自己紹介をする。


「カイ、13歳です。料理が得意です。」


「俺はジャンです!11歳です!体力に自信あります!」


「ノルンです。12歳です。みんなのまとめ役をやってます。」


 他の子供達もそれぞれ、得意な事を口にしていった。


 勉強が好きな子、走るのが速い子、編み物が得意な子。


 皆しっかりと強みを持っている。


「みんな宜しく。早速だけど、みんなには2つの仕事を用意してるんだ。お菓子を作って売る仕事と、街のお手伝いの仕事だ。まずはどっちの仕事をやってもらうか、みんなで話し合おう。」


「あの、質問良いですか?」


 ノルンが控えめに手を挙げて尋ねる。


「ああ、勿論良いよ。」


「この仕事をすれば、院長はもっと良い生活が出来るんですか?」


 心優しい少女の問いに胸を打たれつつ、トーマは答える。


「そうだね、みんなで一緒に頑張れば、お金で苦労する事は無くなるよ。」


「そうですか。なら私はどんな仕事でもやります。」


 それを聞いたイリナは口元に手を当て、瞳を潤ませる。


「俺も俺も!何でもやるよ!院長に恩返しするんだ!」


「僕もです。お金の事で悩んでるのは知ってましたから。院長にもっと楽をしてほしいです。」


 ジャンとカイがそれに続き、他の子供達も口々に決意を固める。


 イリナは立つことすら出来ず、その場に崩れ落ちて静かに嗚咽を漏らす。


「イリナさん、本当に良い子達ですね。」


「はい...はい...本当に...」


(絶対に失敗出来ないな。ARIA、宜しくな。)


『はい、勿論です。孤児院救済大作戦開始ですね。』





「トーマ!服買ってきたわよ!」


 そこへ、フェリスが服を買って戻ってきた。


 しかし明らかに荷物の量がおかしい。


 自身の3倍はあろうかという程の大きな包みを背負い、孤児院に戻ってきたのだ。


(あ、子供の人数伝えるの忘れてた...)


 孤児院の子供達は、ここにいる9人を含め全員で20人になる。


 彼女は20人分の服を2セット買ってきたのだ。


「フェリスごめん!働く9人の分だけで良かったんだ!」


「え、そうなの?なら早く言ってよね〜。」


 フェリスは呆れたような、可笑しいような表情を浮かべてトーマを見る。


「本当にごめん!必要分以外は俺が返品してくるよ。」


「いーよ返品しなくても。トーマもおっちょこちょいな所あるんだね!あははは!」


 トーマの意外な一面を見たフェリスは、上機嫌でドサリと荷物を下ろす。


「よっし、じゃあ早速みんなに配っちゃおう!ノルン、カイ、みんなを呼んできて!」


 そう言うと2人はすぐに部屋を出て、他の子供達を連れて来た。


「みんな!アタシからのプレゼントだよー!」


 そう言いながら包みを開けると、中から大量の服が出てくる。


「え!服がこんなにいっぱい!」


「すごいすごい!フェリスありがとう!」


「やったー!ありがとうフェリス!」


 子供達は目を輝かせて服の山を見る。


「1人2セットあるからね、ケンカせずにみんなで分けるんだよ。」


 フェリスの言葉をきっかけに、子供達が服を手にしはじめる。


 暫くして、全員が嬉しそうに服を抱えてフェリスにお礼を言う。


「フェリスさん、本当にありがとうございます。久しぶりにこんな明るい表情の子供達を見ました。」


「気にしないで。アタシも院長と同じで、道楽でやってる事だからね。」


 イタズラっ子のような笑顔を浮かべてフェリスが応える。




「よし、それじゃ働く9人はこっちで班分けをしよう。屋台班とお手伝い班だ。」


 そう言ってトーマはノルン達9人を集めて班分けを始める。


 その結果、カイを含めた4人が屋台班に、ジャンとノルン含め5人がお手伝い班に決まった。


「お菓子はあまり作った事ないけど頑張ります。」


「俺は力仕事だな!」


「やった!お菓子作りだ!」


 子供達は口々に期待とやる気を膨らませている。


「イリナさん、お願いがあります。」


「はい、何でしょう?」


「この街の領主様に取り次いでいただきたいんです。そこで子供達の仕事についての許可と斡旋をお願いしようかと。」


「畏まりました。領主様からはいつでも来て良いと仰せつかっておりますので、先触れを出してその後に伺いましょう。フェリスさん、お願い出来ますか?」


「勿論!じゃあ早速行ってくるね!」


「何度も悪いなフェリス。」


「いいよー。その代わりアタシのお願いも聞いてね!」


「ああ、俺に出来る事なら。」


 そんなやりとりをして、フェリスは領主邸に向かった。


 どんなに早くても明日以降だろうという事なので、イリナの言葉に甘えて今日は孤児院に泊まらせてもらうことにした。


(領主との話が最大のポイントだな。)


『そうですね。返答次第では計画の修正が必要になるかも知れません。』


 一抹の不安を抱えながらも、トーマは領主との話し合いに向けて心の準備をする。


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