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17話 異世界人

 

 店を出ようと1階まで降りてきたトーマ達。


 ふとそこで、処分品セールのワゴンがある事に気づく。


「お、もしかしたら掘り出し物があるかも。フェリス、ちょっと見ていこう。」


「何も無いと思うけどね。まぁいいわ。」


 そこにあるのは、色褪せた革小物やほつれのある服、刃の欠けたナイフなど、明らかに粗悪品の部類に入る物だった。


「うわ〜、どれもボロいな。」


「まぁ処分品だからね〜。」


 しばらく漁っていると、ひとつの商品に目が止まる。


「え、これって...」


 そこにあったのは、手のひらに収まるくらいの大きさの、金属製の黒い物体。


 いくつかのボタンと、小型のマイクが付いている。


「ボイスレコーダーだ...」


「何それ?」


 フェリスがコテンと首を傾げる。


「俺のいた世界では、これで声を記録するんだ。もしかしたら何か入ってるかも。」


『見たところ、バッテリー切れのようですね。現状では充電方法がありません。』


「よし、これを買う。」


「今も使えるの?」


「いや、今は使えない。でもこれは俺以外には意味のない物だと思う。」


「そうなんだ〜。」


 フェリスは全く興味なさそうな返事をする。


 ともあれ、トーマはこの世界では明らかなオーバーテクノロジーのアイテムを手に入れた。銅貨1枚で。





「はぁ、来てしまった...」


「だからこれが本来の目的だってば!」


 トーマ達は、商業区を抜けて基地の前まで来た。


 周囲を石造りの高い塀で囲んだ、西洋風の要塞だ。


 来る者を拒むかのような荘厳な佇まいは、いかにも基地という印象を受ける。


 この期に及んでもまだ拒否感の強いトーマを、フェリスは引き摺るようにして基地の中に入る。


「クロイ班フェリシファル・トゥアリス、異世界人を保護し、聴取のため連行しました。」


「お疲れ様です。既に報告は受けていますので、取調室に進んでください。」


 事前申請のおかげで、受付係もすんなりとフェリス達を通した。




 通された取調室は4畳ほどの小さな部屋で、中央に机が置いてあり、それを挟むように椅子が2脚配置されている。


 その他には採光用の格子窓があるくらいで、他は何も無い。


(うわ〜、いかにもって感じの部屋だな...なんか緊張してきた。)


 フェリスに片方の椅子に座るよう促され、暫くするとヒューマンの男性が入ってきた。


 40歳くらいで、オールバックに整えられた髪型とモノクルが特徴的だ。


 兵士というには線が細く、事務仕事専門だろうと当たりをつける。


「私は書記官のケニスと申します。宜しく。」


 椅子に座るなりメモを取り出し、トーマの方を見ずに話しかけ、定規で測ったような文字を書いている。


 話し方や雰囲気は無愛想ではないが、とっつきやすくもない人物だとトーマは思う。


「クロイからの報告書は読ませてもらいました。今回はそれに補足する形で質問していきたいと思います。因みに私には嘘を見破る能力がありますので、虚偽の申告はしないよう願います。」


「分かりました。」


 人間嘘発見器だな、などと思いながら、トーマは答える。


(魔法的な能力かな?)


『興味深いですね。魔法はある意味で私と対極の位置にある技術なので、どいうった原理なのか気になります。』


 ARIAも興味津々である。


「まず最初に、お名前をお聞かせ願えますか。」


「トーマ・スズキです。」


「ではトーマさん、あなたが異世界から来たというのは聞いていますが、出身国は何処ですか?」


「日本という国です。」


「ふむ...では次の質問ですが--」


 ケニスから様々な事を根掘り葉掘り聞かれて、かれこれ20分程になる。


「では最後の質問です。あなたはフォーシアに転移してきた際に、何者かの啓示を受けましたか?」


「啓示?いや、何もなかったです。気がついたらこの世界に居ました。」


 何故そんな事を聞くのか分からないままトーマは答える。


「そうですか。では質問は以上になります。」


「それで、何か分かったんですか?」


「ええ。隠しても仕方ないので正直にお答えしますが、最後の質問に"はい"と答えた場合、トーマさんを拘束する予定でした。」


 まさかの答えにトーマは驚く。


「え!?何故ですか?」


「フォーシアに転移する際に何者かの啓示を受けた人間は、この世界にとって危険因子である場合が多いのです。啓示を与える者が誰なのかまでは分かっていませんが、一説によると悪い神なのではないかと言われています。」


「危険というのはどうしてですか?」


「大抵の場合、啓示を受けた人間は魔法や特殊能力など強い力を持っています。そしてその殆どが自分の力に溺れて周囲に害を為すからです。」


 まさかの事実を知り、トーマの動悸が激しくなる。


「そ、そうなんですね...今までという事は、何人もそういった危険人物が転移してきたという事ですよね?」


「そうですね。遡ると数百年以上前からになりますが、そういった人物は秘密裏に処分されてきました。この取り調べも、あなたが危険かどうかを判断する為のものなんですよ。」


 そこにフェリスが口を挟む。


「そんなの聞いてないわ!話を聞くだけって言ったじゃない!!」


 凄まじい怒気を発し、ケニスを威圧する。


 彼は焦りながらも、フェリスを宥める。


「お、落ち着いてください。トーマさんはその対象ではないと分かったので、以後自由にしていただいて構いませんから。」


 しかしそれはフェリスの怒りに油を注いだだけだった。


「もし対象だったらどうするのよ!!アタシはトーマを守るためにここまで連れてきたのよ!こんな事なら最初から連れてこなかったわ!!」


 彼女の小さな身体が、今にも爆発しそうなほどのオーラを発している。


 手はワナワナと震え、今にも腰のナイフに手が伸びそうだ。


 これは本格的にヤバいと感じたトーマは、落ち着かせるためフェリスに優しく話しかける。


「フェリス、庇ってくれてありがとう。でも俺は大丈夫だよ。」


「でも!!」


「フェリスが怒ってくれただけで十分だよ。それにケニスさんがさっき言ったように、これからは自由だからな、やりたいようにやるさ。」


「・・・分かった。」


 ようやくフェリスの怒りが収まり、事態の収束に安堵するトーマとケニス。


「私の言い方が悪かったですね、失礼しました。」


「いえ、ケニスさんも仕事ですからね。仕方ありませんよ。」


 そこでフェリスが小さな爆弾を落とす。




「アタシ、兵士辞める。」


「「えっ!?」」


 トーマとケニスの声が綺麗に重なった。


「トーマがいいって言ってる以上、アタシからはもう何も言わない。でも信用もしない。だから辞める。」


「そんな突然...」


 ケニスが愕然とした表情で引き留めようとする。


「うるさいわね、もう決めたから!これ以上誰かに裏切られるなんて御免だわ!トーマ、今すぐ手続きしてくるからちょっと待ってて。」


 そう言うなり、フェリスは取調室から足早に出て行った。


 遠くのほうで、幾人かの引き止める声と、直後に連続して聞こえるゴンッという鈍い音。


「・・・なんかすみません。あれは俺のせいですね。」


 トーマがケニスに謝る。


「・・・いえ、こちらこそ。私としても本来このような事はしたくないのですが...」


 ケニスもトーマに謝る。


 そして気まずい沈黙が数分続いた時、革製のバックパックを背負ったフェリスが戻ってきた。


「辞めてきた。宿舎の荷物は全部捨ててもらって構わないわ。」


(凄まじい行動力だな...)


『まさに直情型ですね。』


「もうここに用はないわ。行きましょ。」


「はい...」


 フェリスの先導で取調室を出ようとしたところ、ケニスから声がかかる。


「トーマさん、お詫びではないですが、最後にひとつだけ。実は危険だと判断されたにも関わらず、この世界を自由に生きている異世界人がいるようです。詳細については私には分かりませんが、取り調べを担当した書記官の様子がおかしいと聞きました。」


 ケニスから重要な情報が飛び出してきた。


(様子がおかしい?どういう事だろう...)


『現状では情報が足りないので、判断は難しいですね。』


(要するに、フォーシアを脅やかす存在が野放しにされているという事か。)


「分かりました、気に留めておきます。」


 謎を増やしながらも、トーマはファネでの目的を達した。


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