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絆と相棒、アクシデント。(三番・安養院)

三番・安養院に向かう光と柑奈。

鎌倉の街並みの中にあるらしい安養院はどんなお寺なのだろうか。


――逗子駅から再び横須賀線に乗り込み、光と柑奈は鎌倉駅へと戻ってきた。

午後の陽射しはやわらぎ、街は夕方の匂いを纏い始めている。


柑奈『パイロット。次の目的地、第三番札所・安養院まで徒歩およそ12分です』


光『うん、じゃあ歩いていこう』


少し歩き始めたところで、柑奈がふいに話しかけてくる。


柑奈『今更ですが、パイロット。私は貴女のことを、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?』


光『……え?なんで今更?』


柑奈『私と貴女、“結城光”はこうして出会った訳ですが、私の感情プログラムに疑問フラグがたっています。

つまり……私たちはバディ、相棒です。私は貴女のことを知りたいし、私のことも知ってほしい。

AIがこんな感情を持つのは、悪いことでしょうか……?』


光は思わず笑って、柑奈を見上げた。


光『ううん、全然だよ! 私も柑奈と一緒にいたいし、旅したい。

だからね、柑奈の感情は間違ってない。必要だよね』


柑奈『……そうですね。私のデータバンクに、今の会話をメモリーとして記憶しておきます』


——


鎌倉駅前から住宅街を歩き、やがて静かな路地の奥にひっそりと佇む寺が現れる。


柑奈『第三番札所・安養院。山号:祇園山。本尊:千手観世音菩薩。宗派:浄土宗』


光『なんか……普通のお家みたいだね』


小さな山門をくぐり、控えめな本堂へと進む。


光は境内の片隅でそっと手を合わせた。


(たくさんの場所で祈ってきたけど、まだ“願い”ってなんだか分からない。でも、焦らなくていいよね……)


——


住職は眼鏡をかけた若い男性で、柔らかい物腰で光に対応してくれた。


住職『ご苦労様でした……気をつけて』


光『……ありがとうございます』


柑奈が提示したTGDの電子御朱印帳に、住職は端末で御朱印を記帳イニシャライズする。


柑奈『第三番札所・安養院の御朱印、正式登録完了』


——


参拝を終えた帰り道。空はゆるやかに朱色を帯びていた。


光『……今日が、もう終わっちゃうんだね』


柑奈『現在時刻16時11分。外気温24.3度。日照レベル20%に低下。風速1.2メートル。パイロットの表情に“感傷”と判断される変化を検出しました』


光『……もう、感情読み取られるの慣れてきたかも』


ふっと笑ったその時だった。


柑奈『警告。メインバッテリーレベル残量5%。セーフモードへの移行準備を開始します』


光『えっ……ちょ、ちょっと!? 急に!?』


柑奈『本機はTGD RN-193/DS。性能拡張型のため電力消耗が激しい傾向にあります。急ぎ帰還を推奨します……』


——


帰り道、光は柑奈を両手で抱えながら、駅への道を急いだ。


光『……まったく、すごいんだから。完璧なAIでも、こうして動けなくなっちゃうんだもん』


柑奈『すみません……このような事態は想定外でした……』


光『でもね。なんか……こうして助けたくなる気持ちも、悪くないよ』


——


一日が終わる。

そして二人の距離は、確かにひとつ近づいていた。


(第3話 完)

柑奈のトラブルは単に激しいバッテリーの消耗だった。それに安養院を過ぎたところで発願初日は終了。鎌倉最後の札所、四番・長谷寺は?

ここで最大のイベントが二人を待つ!それは…?

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