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リオンの一撃

 飛行船の操縦室で俺はレバーを操作して、風袋を後ろに移動させた。

 船尾を釣り上げられた飛行船は下に向かって前進する。


 ゴンゴンゴン……!


 遠くでドラの音がした。

 下降する飛行船の視界には、野原と砂漠が混ざった荒涼とした大地が広がり、そこに砂煙がある。


 ホーン衛兵団の騎馬隊が横陣をしいて、駆けていた。その真ん中にストーンとサイモンがいる。

 そして騎馬隊の先には、ドラゴンを先頭にしたモンスターたちがこちらに向かってきていた。

 ホーンを襲撃しようとしているモンスターたちだ。


「ドラゴンはあの金色のドラゴンじゃないけど、モンスターはなかなかな数だな」

「あわわ……あんなに沢山のモンスターが……」


 横でスピカが面食らっている。

 スピカには操縦の補佐をお願いした。まあ、本人も何か手伝いたいということで、魔力走行船もよく操縦していたこともあり、俺と一緒にいてもらうことにした。

 ちなみにマトビアは、拠点でフォーロンとの連絡係を担当している。


「あ! あのドラゴン、こっちに向かって来ていますよ!」


 緑の鱗をまとったドラゴンと目が合った。


 あちらはドラゴンが率いるモンスター百匹ほど。こちらは騎馬二十騎。数で言えば比較にならないぐらい、あちらが上だ。

 まあ、これが軍の戦いだとしたら、正面から戦うことはありえない。

 だが、こっちはドラゴン級の強者がそろっている。


 下界の衛兵団が再びドラを鳴らす。突進の合図だ。


「スピカ、ちょっと操縦を代わって」

「ふぇ?」


 俺が舵を離すと、あわててスピカがひっしと握る。


「ち、ちょっと! フェア様、これどうするんですか!?」

「事前に話したとおりだ!」

「そ、そうじゃなくて! このままだと激突しますよ! ドラゴンに!」

「大丈夫だ──」


 ドアを開けると外から風が吹き込む。

 俺は半身を外に出して、ライフルで向かってくるドラゴンを狙う。


「『火力(ファイア)』、『浮揚(レビテーション)』──」


 トリガーを引くと、短かくも重い音が握り手から伝わる。

 鉛玉はドラゴンの頬にぶち当たると、突然の見えない張り手にドラゴンは驚き、引き返した。


「ウッヒャー! ガーゴイルぐらい高いナ! こんな重たいものを良く飛ばせるナ!」


 俺の肩にぶつかったリオンが気を昂らせている。

 ツノのリボンをたなびかせて、好戦的な笑みをドラゴンに向けた。


「ち、ちょっと、俺は飛べないから押さないで!」

「心配するナ! シモベがちゃんとつかまえてくれル」

「……そうだといいんだけどね」

「じゃア、行ってくるナ!」


 リオンはピョンと外に飛び出て落ちていく。

 飛行船に張り付いていたガーゴイルがそれを見て追いかけ、リオンを空中でつかんだ。

 それを機に、飛行船の上に張り付いていたゴブリンや巨人が落ちていく。


 ゴブリンも巨人もガーゴイルも、みんな片耳には赤いリボンを結んでいた。衛兵が味方を判別するためだ。


 すでに騎馬隊がモンスター集団を貫通したあと、バラバラと黒い点が落ちていき、そこで乱戦を始めた。

 騎馬隊に注視していたモンスター集団は、急に空から降ってきて、人間に味方するモンスターに困惑している。


「足、めちゃくちゃ頑丈だな……」


 ふつうこの高さから落ちたら、骨折ぐらいじゃ済まなさそうなのに。


「さて、こっちも片付けないとな」


 一度退いたドラゴンが、地上の騎馬隊を攻撃しようとしている。

 俺はもう一度、ドラゴンの頬に撃ち込んで怯ませた。その隙にガーゴイルがリオンを宙に投げて、空高く舞い上がる。


 頂点に達したリオンが、身を翻して静止し、狙いを定めた。

 そこから一直線にドラゴンへ落ちる。


 ドラゴンは謎の一撃が飛行船から放たれ、その攻撃が囮になっていることに気付いていない。


 流星のように銀色の雷に似た光が、とてつもない速度でドラゴンに迫った。

 両手の拳を真下にして、リオンはドラゴンの体を貫通した。


「グウワアアアッ!!」


 遠くからでも聞こえる叫び声とともに、ドラゴンはじわじわと黒くなり、灰となって散っていく。

 それを見たドラゴンの手下たちは、一気に戦意喪失した。

 逃げ出したり、倒されたりして灰になる。


「やりました! フェア皇子、私たちの勝利ですね!」

「ああ……圧勝だったな。見た目に反して強いんだな、リオンは」


 ただ、サイモンが言っていたモンスター移動の本流が気になる。

 俺は少し本流となるモンスターの群れをこの目で見てから、拠点に帰ることにした。


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