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一番近くにいたかったから、もやもやするの

 アタシにとってノワ様は特別な方なの。


 いつも淡々としていて、自分を持っていて、何にもなびかない。それでいてどこか愛らしい雰囲気もあって。人になった時の容姿が整っているというのも良い点の一つではあると思うけれど、それ以上に、彼にはたくさんの魅力があるのよ。


 ノワ様の担当になって、関わるうちに、どんどん惹かれていったわ。


 案外、惹かれることに具体的なきっかけなんて必要ないのかもしれないわね。


 そんなノワ様は少し不器用で。他者と関わるのがあまり上手でなくて。でもだからこそ「アタシが護らなくちゃ」と思って、ますます深く惚れていくの。


 アタシは彼の一番近い人、パートナーよ。


 そう思っていた――ノワ様がどこかへ行ってしまった、あの日までは。


 彼は煙のように消えたわ。

 アタシに何か一言でも話してくれたなら、きっと協力したのに。

 でも目的すら分からない。

 彼が何を思って姿を消したのかさえアタシには分からなくて。


 ……アタシはノワ様のことを何も知らなかったのね。


 その現実に、ようやく気づいた。


 でもだからって諦められる? 愛しい彼と二度と会わない、そんな道を選べる? そんなのは無理。だって、アタシにとって彼は特別な存在なんだもの。いなくなっちゃったからおしまい、なんて、そんなので納得できるはずがない!


 だからアタシもゼツボーノのもとから去ることにしたの。


 アタシが会いたいのはゼツボーノでもその他の魔の者でもなく、ノワ様ただ一人。


 ならば彼を追う。


 きっといつか合流する、その決意を胸に。



 ◆



 でも、人の街でようやく彼に再会できた時。


「ソレアっていうんだ」


 ――彼には既に別の居場所ができていて。


「私は、その、ある時たまたま出会ってそれで……今は色々あって、ノワールさんと一緒に暮らしているだけのただの女です」


 現れたソレアというその娘は、明らかに、ノワ様の特別な人になっていた。


 控えめで、上品で、悪い娘ではなさそうなのだけど――愛する人の心を射止めた女がそこにいるなんてもやもやする!


 ノワ様は「愛してる」なんて言わないけれど、ソレアへ向ける視線を見れば明らかだった。


 彼は彼女を想っている。


 それが明らかに恋愛的な好意かどうかは定かでないけれど。

 ただ、ノワ様は確かに、ソレアに対して好意を持っているようだった。


 ノワ様の心に色が芽生えたのは嬉しいこと。

 でもその対象がこんなぽっと出の女だなんて切ない。


 嬉しいような、悲しいような。


 ……なんていうか、複雑。



◆終わり◆

2023.3.6 に書いた作品です。

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