3.キミが照らし出す未来に
周りと道を違えること、それはすなわち、茨の道を選ぶこと。
だがそれでも、罪を罪と知りながら重ねるよりかはずっとましだ。
ゼツボーノのもとへ戻らないことを選んだ時から、幾度も刺客となった魔の者に襲われはしたけれど、己の選んだ道を後悔したことはなかった。
人間の世界にボクの居場所はない。
たとえ人の姿になっていても、それでも、知り合いなんて一人もできないし。
悪口を言われることはない。
しかしまともに認識されることすらない、それこそ無。
けど、その時のボクはもうあの頃ほど辛くはなかった。
ボクはボクの道を歩く。
たとえそのために傷つかざるを得ないとしても、構わない。
行く道で、魔の者が立ちはだかるなら――ただ倒すだけ。
◆
そんなボクがたどり着いた夜明け前の街で出会ったのは、一人の若い女性だった。
「ここは危険です。逃げましょう!」
彼女は見知らぬボクの手を取って、無理矢理どこかへ引っ張ってゆく。
◆
ソレア、そう名乗る彼女は、かつて両親をゼツボーノによって奪われたのだという。
魔の者の被害者は星の数ほどいる。
彼女もまたそのうちの一人で。
だから、いつかボクの正体を知ったなら、彼女はボクを憎み嫌うと思っていた。
――でも、そうはならなくて。
「魔法が使えるだけで異物扱いする、そんな人も世にはいます」
そう言ってどこか寂しげに笑う彼女は、ボクを魔の者と知ってそれでもなおボクを受け入れた。
彼女もまた、人間の中においては異端だった。ただ、それでも彼女はいつも前向きにあろうとしていて。過去の悲劇を越えて、いつだってできる限り明るく振る舞っていた。
そんな姿を見ていたら、いつからか、笑っていてほしいって思うようになっていた。
だから――そのために生きるよ、これからは。
過去の罪は消えなくとも。
償いになんてならなくても。
それでもいい。
ただ、キミが照らし出す未来に……ちょっと興味があるんだ。
◆終わり◆
2023.2.24,25 に書いた作品でした。