過去話『ブレス君14才、なめられないために』
家出をしてから2週間後、ブレスは高い建物などが並ぶ街を歩いていた。
(金が完全にない、どうすんねん、これ)
そう思いながらうつむいて歩いていると、ブレスはGTPを展示している店を通りかかり、それを見つめた。
「あ、そうか」
そうつぶやくとブレスはその店の透明な壁に近づき、中を見てから店内に入った。そして、GTPに近づくと、それに触れた。
(これがある、これが)
笑顔でそう思うと、ブレスは画面を操作した。
それから少しすると、ブレスは困った顔をした。
(魔獣退治ばっかやん、どうすんねん、これ)
そう思いながら触っていると、ブレスは目を丸くした。
(これや、これなら近いし、オレでもできる)
ブレスは笑顔でそう思うと、画面を触ってその仕事に応募した。
それから、当日、ブレスは街から少し離れた倉庫に来ていた。その倉庫の敷地は広く、トラックなどが何台もあった。
(ここか、広いな)
周囲を見渡しながらブレスがそう思うと、倉庫の近くにある小屋に向かった。扉を開けてそこに入ると高齢の人物がおり、ブレスはその人物に声をかけた。
「あの、求人見て来たんやけど…」
「はい?」
「求人で、ここの荷物運びのやつに応募したんやけど」
「ああ、そうか、それじゃ、これ、この帽子を被って倉庫に入って、適当に手伝ってくれ」
ブレスが老人が指差した方を見ると、棚に灰色の帽子が積み上がっているのが見えた。
「あ、はい」
ブレスは頷くと、棚に移動し、それを手に持つと軽く頭を下げてから部屋から出ていった。
そして、帽子を被った状態で倉庫に入ると、そこには大勢の人がおり、荷物を台の上に置いていた。それを見ると、ブレスは困った顔をし、周囲を見渡した。
「そこ、ぼさっとして、何やっとんねん」
そうしていると、帽子と同じ色の作業着を着ている人物に声をかけられた。そのため、ブレスは肩を上げて驚き、その人物を見た。
「そこで何やっとんねん」
その人物が尋ねると、ブレスは困った顔で答えた。
「いや、その、困ってて」
「そうか、じゃ、あの1って書いとるとこに行って、流れてくる荷物をあの四角いやつの下に乗せればええよ、あそこ人足らんから」
「あ、はい」
ブレスが頷くと、その人物は笑顔で話した。
「日雇い?若いけど無理すんなや、旅の資金集めとかやろ、体壊したら旅どころやないで」
「は、はい」
「そんじゃ、頑張ってこい」
その人物は笑顔でそう言うと、そこから離れていった。ブレスはそれを見ると教えられた方に向かった。
それから、ブレスは他の作業員に混じって流れてくる荷物を四角い台の上に置いていた。
(重い、何が入っとんや?)
そう思いながら顔をしかめ、ブレスは荷物を運んだ。
それから、暗くなり、仕事が終わったため、ブレスはまた小屋に入り、先ほどあった老人とは別の老人に声をかけた。
「あの、仕事終わったんやけど」
「あ、そうか、それじゃ、これ」
老人は封筒を持つと、それをブレスに手渡した。それを受け取ると、ブレスは小屋から出ていき、封筒を笑顔で見ると中身を取り出した。
「はっ?」
その中には紙幣が5枚入っており、ブレスは目を広げて驚いた。そして、小屋に戻ると、老人に声をかけた。
「これ、おかしない?」
「ん?何が?」
「いや、募集だと1万マルトって、書いとったやん」
「そうなのかい?」
「ああ」
老人が頷くと、ブレスは少し困った顔でそう言った。
「確認してみるよ」
老人はそう言うと、小型のGTPを持ち、連絡をした。そして、老人は首を傾げるとこう言った。
「間違いじゃないって、あの時間じゃ、これが妥当なんだと」
それを聞くとブレスは困った顔をして少しうつむいた。
「そうか、ありがとう」
ブレスは暗い声でそう言うと、小屋から出ていった。
それから、数日後、ブレスは別の仕事を探しだし、街の裏通りにある小さな飲食店に来ていた。そこで飲食物を客に運ぶ仕事をし、それから12時間後にブレスは店主からお金を貰った。
「これ、バイト代」
「8000マルト?少なない?」
ブレスが困った顔で驚くと、店主は平坦な声でこう言った。
「こんなもんや、ありがたく受け取れ」
「そうか」
それを聞くとブレスは目をそらしてそう言い、困った顔でそれを受け取った。
そして、街にあるスーパーマーケットで買い物をし、近くの公園のベンチでお弁当を食べていた。
(こんな生活、いつまで続くんやろな)
目を細めて食べているとそう思い、ブレスはため息をついた。
(家は、帰れんし、帰りたない、どうせ帰ったところで、あいつは家に入れてくれへんな)
そう思うとブレスは手を止めた。そして、目を潤わせた状態で鼻をすすると、数秒動きを止め、大きく深呼吸をした。
「よし」
そう言うとブレスは箸を動かして、卵焼きを食べた。
(うん、うまい、金は稼げるんや、無一文よりなんとかなる、前に進むしかないんや、後ろには進めん、なんとかなるやない、なんとかするしかないんや)
そう思うとブレスは目を閉じ、大きく深呼吸をした。そして、目を開くと、顔を上げて夜空を見た。
それから、数日後、ブレスは公園にあるたこ焼き屋の屋台で昼から働いていた。そして、6時間後、ブレスは店主にお金を貰った。
「はい、1000マルト」
「いくらなんで少なすぎねーか」
顔をしかめてブレスが言うと、店主はこう言った。
「ガキの手伝いなんだからこんなもんや」
それを聞くとブレスは店主をにらみつけた。
「なんや、なんか文句あるんか?それならこれもやれへんぞ」
ニヤニヤしながら店主が言うと、ブレスは不満そうに困った顔をした。そして、それを受け取ると、ブレスはそこから走って離れていった。
そして、GTPが展示されている店に入ると、そこでGTPの画面を触り、調べ物をしていた。
(なめられたら終わりや、3度もなめられたんや、だったらなめられないように、なめられんように、オレが変わるしかない、大人は子供をなめてとるからな)
ブレスは顔をしかめてそう思いながらGTPの画面を操作した。
その数日後、ブレスはたこ焼き屋の屋台に来た。
「よう、おっさん」
鼻で笑うとブレスはそう言い、店主はブレスを見た。
「ん?うぉっ」
店主はブレスを見て目を広げて驚いた。そこには髪型をオールバックにしたブレスが腕を組んだ状態で不敵な笑顔で店主をにらんでいた。
「いったい、何用で?」
「いや、あれから調べてな、6時間で1000マルトは、低すぎるって、わかったんだよ」
ブレスが自信満々に不敵な笑顔で言うと、店主は息をのんだ。
(冷静に、冷静に、そんで堂々と)
ブレスはそう思うと、こう言った。
「それでよ、残りをもらいに来たんだ」
言葉を強調しながらブレスが言うと、店主はこう言った。
「いまさら、そんなこと言われてもな、もうあれでいいって受け取ったんはお前やろ」
「契約が法律に違反しているのなら、その契約は通らない、オレは法律に則って、正当な権利を主張する」
それを聞くと店主は顔をしかめた。
(よし、いける、たぶん)
ブレスはそう思うと、不敵な笑顔でこう言った。
「このまま警察でもなんでも、呼んでもやってもかまわないからな、穏便に解決させたいだろ?それとも経歴に、泥をつけて、人生に、白紙のスペースを入れたいのか?」
それを聞くと店主は黙り込み、ブレスは続けて話した。
「なんなら裁判でもするか、金なんていくら、どうとでもなる話だからな、互いに、時間と金を、かけようぜ?」
不敵な笑顔でブレスが言うと、店主は顔をしかめた。
「わかった、いくらほしい」
「5000マルト、それでいい」
ブレスがそう言うと、店主は目を丸くした。
「わかった」
店主は頷くと、小さなケースから紙幣を取り出し、それをブレスに手渡した。
「これ」
「ありがとう」
にやけた顔でそう言うと、ブレスは鼻で笑い、そこから立ち去った。
それから、ブレスはハンバーガーショップに来ており、そこで拳を突き上げた。
「しゃ!」
ブレスが大声を出すと、周りは彼を見た。そのため、ブレスは周囲を見渡してから苦笑いをした。そして、周りがブレスをみるのをやめると、彼はポテトを口にした。
(よし!これでなめられんぞ!これからは大丈夫や)
ブレスは笑顔でそう思うと、ニヤニヤしだした。
(これでなんとかなる、見とけやクソ親父、オレは1人でやれるって教えてやるわ)
そう考えると、ブレスは目を閉じ、笑顔で拳を握りしめた。