41話『ウェビリアとブレス』
ある日のこと、祖母は家の外にあるポストを開けた。
「あら、手紙ね」
ポストの中には白い手紙が入っており、祖母は微笑んでそう言うと、手紙を取り、宛名を見た。
「あら?ブレス君当て?珍しいわね」
宛名にはブレス・VBと書かれており、祖母はそれを見ると不思議そうに見た。
(あれ?このVBって、何かしら?見覚えはあるんだけど…)
祖母は少し困った顔をした。
(まっ、ブレス君に見せればわかるわね)
笑顔で祖母はそう思うと、それを持って家に戻った。
祖母は家に入り、キッチンにいるブレスを見た。彼はニンジンを切っており、祖母は彼に近づくと笑顔で声をかけた。
「ブレス君」
「ん?なんだよ、ばあさん?」
「はい、これ、ブレス君宛の招待状」
「はっ?」
祖母が笑顔で言うと、ブレスは困った顔をし、それを受け取ると裏返して宛名を見た。すると、ブレスは宛名を見て顔をしかめた。
「ん?どうしたの?ブレス君」
「いや、あ、あ、ちょっと待て」
ブレスは目を広げて驚いた表情でそう言うと、祖母は首を傾げた。そして、ブレスは困った顔で手紙を開き、中のカードを取り出した。
「うおっ…!」
それを見るとブレスは目を大きく広げて驚き、祖母は声をかけた。
「どうしたの?」
祖母が不思議そうに尋ねると、ブレスは目を閉じて頭を抱え、鼻でため息をついてから祖母にカードを渡した。祖母はそれを見ると首を傾げた。
「ん?ウェビリアさんからの招待状じゃない、これがどうかしたの?」
祖母は不思議そうにそう言うと、すぐに目を丸くし、申し訳なさそうに話した。
「あ、ブレス君、あの人が苦手だったわね」
すると、ブレスはため息をつき、頭を抱えたまま首を振った。
「それだけじゃない」
「ん?どういう意味?」
祖母が不思議そうに質問すると、ブレスはまたため息をついた。
「言いたくもない、マジでなんやねん、あいつ」
「ん?」
「いや、いい、しゃーない、行って問いただしてやる」
顔をしかめてブレスが言うと、祖母は不思議そうに彼を見た。
「ブレス君1人で行くの?」
それを聞くとブレスは口角を上げ、ズボンのポケットに手を入れると強気な笑顔でこう言った。
「まーっさか、ばあさんたちも招待されてんだ、全員で、お嬢のパーティーに押しかけてやるよ」
「あらま、スカイも?大丈夫かしら?」
「問題ねーよ、あいつを解き放って、パーティーめちゃくちゃにしてやるからな」
祖母が目を丸くしてそう言うと、ブレスはニヤニヤしながらそう言った。
「もう、そんなことしちゃダメよ、ブレス君」
「はいはい、わかってますよ、やりませんよ、そんなこと」
呆れた顔で祖母が言うと、ブレスは腕を組み、困った顔で返事をした。
それから、パーティー当日、スカイたちは正装をし、ウェビリアの家の近くに来ていた。彼女の家は3階建ての豪華な家が並ぶ場所にあり、その中で1番広い土地に彼女の家が立っており、スカイたちは歩道を歩いていた。
「あんなスペース取ってさー、家小さいとかー、迷惑だよなー」
「そんなことないわよブレス君」
ブレスが不満そうにそう言うと、祖母は困った顔をした。
「はいはい、そうですね」
「もう、そんなに嫌なら断りなさいよ」
「ごもっともで、だが、オレはあれについて、問いたださなきゃならんのさ」
「ブレス君、それっていったいなんのことなの?」
祖母が不思議そうに尋ねると、ブレスは困った顔でこう言った。
「VB、BVB、前に海で話ただろ?あいつ、オレの下の名前まで知ってやがるんだ」
「え?それは怖いわね…」
手を口に持っていき不安そうに祖母は言った。
「そうだろ、だから問いただしてやるのさ」
「あら、もう、なんて言えばいいのかわからないけど…、気をつけてねブレス君」
「わかってるぜ、ちょうどいいから、いろいろ問い詰めてくるよ」
「もう、本当にわかってるの?」
呆れた顔で祖母が言うと、ブレスは鼻で笑った。
「さあ?お嬢には、いろいろあるからな、多少の危険は冒してやるよ」
ブレスが微笑んでそう言うと、祖母は呆れた顔で首を振った。
それから、ウェビリアの家の前に着く頃、家の門の前で小型犬を抱えたウェビリアが門の前で立っているのが見えた。そして、4人が家に近づくと彼女は歩き、ブレスに近づいた。
「おひさしぶりですね、ブレス様」
ウェビリアが笑顔で言うと、ブレスはしかめた笑顔で返事をした。
「ご機嫌よう、お嬢様、いったい何用でしょうかねぇ?」
「フフ、ブレス様らしい返事ですね」
「そうかよ」
クスッと笑い彼女が言うと、ブレスは顔をしかめた。
「特に用があるわけではありませんよ、今日はブレス様とお話がしたかっただけです、あれを使えば、必ず来てくれると思いましたから」
それを聞くとブレスは目を細めてこう言った。
「オレもあんたと話がしたかったからな、ちょうどいい、長ったらしく、話し合おうぜ」
それを祖母が不安そうに見ていると、ウェビリアはクスクスと笑った。それを見てブレスが顔をしかめていると、スカイがブレスに声をかけた。
「ブレスー、それより入らないの?パーティーまだー?」
スカイが不満そうに言うと、ウェビリアはスカイを見て微笑んで話した。
「あら、そうですね、それでは家に入りましょう、すぐにパーティーは始まりますよ」
「よし!やった!」
スカイが両手を振って笑顔で喜ぶと、ブレスと祖母は困った顔でスカイを見つめ、彼女はクスクスと笑った。
長方形で1階建ての彼女の家に入ると、広いリビングに大きなソファとテーブルなどの家具が見えた。それを笑顔で見るとスカイはソファーに駆け寄り、飛び込んだ。
「すげー!やわらかー!はねるー!」
その上で揺れながら笑顔でスカイは言うと、ソファーを揺らしだした。
「ブレスー、クリスー、これすごい跳ねるぞー、遊ぼう」
「でも…」
ブレスと祖母が呆れた顔で見る横でクリスが少し困った顔で周囲を見ながら不安そうに答えた。
「もう、みっともないからやめなさい」
祖母が注意をすると、スカイは笑い、ソファーを揺らした。
「もう、あんたって子は」
呆れた顔で祖母は注意すると、申し訳なさそうに彼女を見た。
「すみませんね、ウェビリアさん」
「かまいませんよ、子供は元気が1番ですかね」
「そうかもしれませんが、あの子はそれなりの年ですから…」
「10才前後ならあのようなものだと思いますよ」
「えっと、あの子は…、16才なんですが…」
祖母が困った顔で恥ずかしそうに言うと、ウェビリアは目を丸くした。
「あら?」
そして、足をバタバタと動かしているスカイを見ると、目を閉じた。
「あら、もっと小柄だと思っていました」
そう言うと彼女はクスクスと笑った。
「まあ、同い年の子でもあのような子はいらっしゃいますから、ああいう子だと理解して接するのがいいと思います」
「そ、そうですか…」
「ワタシがわざわざ言う必要などありませんね、今まで通りでいいのですから」
彼女が笑顔でそう言うと、祖母は困った顔で首を傾げた。
「あ!パーーティーーまだーーーー!」
急にスカイが笑顔でそう言うと、彼女は微笑んだ。
「そうでしたね、始めましょうか」
彼女がそう言うと、祖母は周囲を見渡し、不思議そうに彼女に尋ねた。
「他のお客様は?まだ来てないようですが?」
「大丈夫です、招待したのはあなた方だけですから、それでは始めましょう」
笑顔でそう言うとウェビリアは手を3回叩いた。すると、キッチンの方から調理器具の代車やワゴンを押す使用人やシェフなどが現れ、キッチン近くの空いているスペースに並び、準備を始めた。
「すげー!」
スカイが笑顔で驚くと、ウェビリアはクスクスと笑い、笑顔でスカイに声をかけた。
「喜んでもらえて光栄です、スカイ様」
それを聞くとスカイは駆け寄り、両手を振りながら声をかけた。
「マリー様もどうぞ、クリス様は、スカイ様の面倒を見ていてはどうですか?あなたの方がしっかりしていらっしゃいますからね」
「はい」
彼女が笑顔で言うと、クリスは頷き、その子と祖母はスカイのもとに歩いた。そして、それを見るとウェビリアは笑顔でブレスを見た。ブレスは腕を組んで顔をしかめており、首
を傾げて肩を1度あげると彼女にこう言った。
「よう、お嬢、邪魔者追い払ってご機嫌そうじゃねーか」
「フフ、そうかもしれませんね」
彼女がクスクス笑うと、ブレスはムスッとした。そして、彼女はソファーに座ると、隣のクッションを叩いた。
「オレは犬じゃない」
ブレスが不満そうに言うと、彼女はクスクス笑った。それを見てブレスは顔をしかめると、ため息をつき、彼女が叩いた側と反対側に座った。
「あら?プライドがお高いのですね」
「意思表示だ」
しかめた呆れ顔でブレスが言うと、ウェビリアはクスッと笑った。
「オレから聞くぞ、なんでオレの名前を知ってんだ」
「せっかちですね」
「そうだな、早よ答えろ」
「そうですねぇ」
彼女はゆっくりとそう言うと、ブレスはムスッとした。それを見て彼女はクスクスと笑い、それをやめると質問に答えた。
「そうですね、簡単ですよ、調べたからです」
「知ってるか?それはストーカーって言うんだぞ」
「どうでしょう?気になったら調べる、なんであれそういうものでしょう?それがストーカーなら、研究者様方は皆様ストーカーですね」
彼女が笑顔でそう言うと、ブレスは彼女をにらんだ。
「それが人間相手で、引くレベルならそうだろうよ、どこまで調べた」
「手紙でわかりませんでしたか?」
「なるほどねぇ、あの親には会ったか」
「いいえ、そこまではしませんよ」
「線引きできてんだな、ここまでやってると褒めたくなるなあ」
しかめた笑顔でブレスが言うと、ウェビリアは不思議そうに返事をした。
「あら?意外な反応ですね?怒ると思っていました」
「今から怒ってやろうか?全員が引くレベルのやつで」
ブレスが顔をしかめてそう言うと、彼女はクスクス笑うと、こう言った。
「意味はわかっていますよ、それにブレス様はそんなことしないとわかっていますから」
「それ、どこ情報?」
「これはお会いしてわかったことです、あなたはそのようなことはしません、その手のことに関しては口だけです、それにわざわざ口に出すよりも、あなたは先に言ってますよね?」
彼女がそう笑顔でそう言うと、ブレスはそっぽを向いた。
「ごもっともで」
それを聞くとウェビリアはクスクスと笑った。そして、それをやめると目を開き、微笑んでこう言った。
「ブレス様、ワタシのことも知ってもらえますか?」
「もっ、じゃない、そっちが一方的に調べただけだろ、とは言え、聞いてやるよ」
「はい、それでは」
ブレスが不満そうにそう言うと、彼女は笑顔で頷き、話をしだした。
「ワタシには物事の流れ人間の本質や気持ちが見えるのです、それは目を閉じると見え、大変役に立っています」
「ふーん、それでわかるのか」
「はい、ですが、見えるからこそ厄介なもので、確かにこの目のおかげで財産を気づき上げましたが、悪いことも見えるのです」
「なるほどな、大変だな」
「優しいですね」
「純粋に相づちだ」
「そういうことにしておきましょう」
彼女が笑顔でそう言うと、ブレスはムスッとし、そっぽを向いた。
「ワタシには、人の裏や、悪いことが起こることもわかるのです、それについては、説明が難しいですね、わかるからこそ徳もありますが、損でもあります」
「そうか」
「はい、ですが人間関係はワタシの問題、こちらはどうでもいことです、ワタシは、ワタシが対応できる悪いことをなんとかしたいのです」
「なんやそら」
ブレスが目を丸くして驚くと、彼女はクスッと笑い、それから話をした。
「急に話を変えますが、ワタシは魔獣をなんとかしたいのです、魔獣の数は減りませんが、魔獣退治を生業としている方は年々減少傾向にあります」
「まぁ、そうだけどよ」
「だから、できることをしたいのです、そのためにお金を出して研究をしてもらっています」
「どんなやつなの!?」
すると、スカイがソファーの後ろから笑顔でそう尋ね、ブレスは肩を1度上げて驚いた。
「うるせえなあ、驚かすなよ、アホスカイ」
呆れた顔でブレスが言うと、スカイは笑顔で大声を出した。
「いいじゃんいいじゃん!オレも聞きたい!」
「人ん家で恥晒すなや」
「さらしてないもん」
スカイは笑顔でそっぽを向くと、彼女を見た。
「教えて教えて!」
「かまいませんよ」
「やった!」
スカイは笑顔でそう言うと、ニヤニヤしながらブレスを見つめ、ブレスはムスッとした。それを見て彼女はクスッと笑うと、説明をした。
「ワタシは魔獣を操り、それを使って魔獣を倒そうと考えています、そうすれば多くの方が魔獣討伐に当たれますから」
「そんなのあるんだ」
目を丸くして不思議そうにスカイが言うと、彼女は困った顔をした。
「いえ、実際はうまくいってないのです」
「なんで?」
「そうですね、博士様が言うには、魔獣のメカニズムが不明すぎるとのことです、実現できるか怪しいと言っていました」
「難しいことなんだな」
ブレスが困った顔でそう言うと、彼女は微笑んだ。
「そうですよ、ですから、データ集めに協力してください、ブレス様」
彼女がそう言うと、ブレスは黙り、数秒してから返事をした。
「わかったよ、やりゃいいんだろやりゃ」
「オレも入っていい!」
「ダメ」
スカイが笑顔で言うと、ブレスはそう返し、スカイはムスッとした。
「ありがとうございます、ブレス様」
「さあ、やろうじゃねーか」
ブレスが強気な笑顔でそう言うと、彼女はクスッと笑った。
そして、ブレスはエクスプロードに乗り、アイアングローブを魔術展開してから、彼女に声をかけた。
「お嬢、準備はできたぜ」
「はい、わかりました、それでは」
ウェビリアは白い結晶を持つと、そこから白色の円を出して魔術を展開した。
「魔術展開、操作ナンバー6」
円から白い光が出ると、それは形を成して猪型の魔獣になった。
「それじゃ…」
ブレスが魔獣をにらんで言うとすると、魔獣が動きだし、エクスプロードに突進した。そのため、機体は猪の魔獣の角を両手で受け止めた。
「お嬢!加減しろよ!」
「すみません!制御が効かないんです!」
小型のGTPを見つめてウェビリアが焦りながら言うと、ブレスは顔をしかめた。
「マジで制御できねーんだな!やっちまうが、問題ねーだろ!お嬢!」
「はい、大丈夫です、ブレス様お願いします」
不満そうに彼女は言い、ブレスは強気に笑った。
「しゃあ!!いくぜ!」
ブレスがそう大声を出すと、エクスプロードは片手を離し、魔獣に押されながら拳を振り上げた。そして、それを振り下ろすと、魔獣の頭部を殴りつけて地面に叩きつけた。
「しゃ!いくぜ魔術!」
エクスプロードは手から黒色の円を出した。すると、倒れている魔獣の角が飛びだし、紐でエクスプロードに巻きついた。それを見るとブレスは強気に笑い、操縦レバーを握りしめた。すると、手から黒色の円が消え、機体の足から黄色の円が出現し、魔術を展開した。
「関係ねえ!!魔術展開!サンダーゾーン!!」
機体に電流が流れると、ブレスは歯を食いしばった。それが魔獣に流れると、巻きついた紐が緩み、エクスプロードはそこから片手を出した。そして、魔獣にその手を向けて黒色の円を出すと、魔術を展開した。
「魔術展開!ファイアショット!」
円から黒い火の弾が放たれると、それはまっすぐに魔獣に向かい、それが命中すると、魔獣は光になって消滅した。
それから、パーティーが終わると、彼女と玄関口で話をした。
「それでは、今日はありがとうございます」
「楽しかった!」
彼女が言うと、スカイは笑顔でそう言った。
「それじゃあな、お嬢」
「それではご機嫌用、ブレス様、皆様」
ブレスがそう言うと、彼女は笑顔でそう言った。
「ウェビリアさん、今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
祖母とクリスがそう言うと、スカイは走って門のほうに走り、ブレスはそれを追いかけた。
そして、ウェビリアは家に戻ると、ソファーに座り、小型のGTPを触って連絡を入れた。そして、少し待つと、彼女は話を始めた。
「ご機嫌よう博士様」
『ご機嫌いかがですか、スポンサー様、魔獣はどうでしたか?』
「そのことですが、まったくコントロールができませんでした」
申し訳なさそうに彼女は謝ると、レフラは平坦な声で返事をした。
『そうでしょうね、うまくいく確率は言いたくもないほどでしたからね、操れていたら奇跡だと思いますよ、BVBがすぐに倒せるレベルに調整したんですからありがたく思ってくださいね』
「そうですか、ありがとうございます博士様、これからも、研究頑張ってくださいね」
『わかっておりますよ、スポンサー様、そちらも頑張ってくださいね、ですが、くれぐれも捕まらないようにしてくださいよ』
「博士様はワタシをどう思っているんですか?」
彼女はムスッとして不満そうに言うと、レフラはため息をついた。
『別に、深い意味はありませんよ、僕は僕のために、暴走しそうなスポンサー様がやらかさないように、先に苦言しているだけです』
「そうですか、あなた方のためにも押さえておきますね」
『ありがとうございます、それでは』
連絡が終わると、彼女は立ち上がり、ソファーの収納スペースを開けると、赤い魔術合成人形の模型を取り出した。