外伝『祭の屋台』
ある日のこと、スカイはブレスとゲインの3人で近くの町にある広い公園で行われる祭りに来ていた。まばらにテーブルだけの屋台が並ぶなかにブレスとゲインの屋台があった。
「よーし!これで準備万端だ」
「おー!」
ゲインが笑顔で言うと、スカイは笑顔で両手を振った。
「うるせぇよ、 まだ終わってねーだろ」
積み重なった透明なカップが持ちながらブレスは言うと、テーブルの上に置いた。
「設置しても準備万端じゃなーからな」
不満そうにブレスが言うと、ゲインは苦笑いをした。
「悪い悪い、手伝うよ」
「いらん、それより、あれが、変なことせんように見ててくれよ」
ブレスはそう言うと、道で両手を広げて動きながら回転しているスカイを指さし、それを見てゲインは目を丸くした。
「あれ?いつの間に?」
「目ぇ離すと、あいつすぐにどっか行ってるからな、あれの子守りでもしててくれよ」
「ああ、わかった」
困った笑顔でゲインは頷くと、その場から離れてスカイのもとに走った。
それから、祭が始まり、人が増えると、ブレスはテーブルの横に移動し、そこで笑顔で手を叩きだした。
「はいはいはーい!よってらしゃい見てらっしゃ!焼き菓子とドリンクはいりゃせんか!」
ブレスが手を叩きながらそう言うと、通行人は彼を見た。それを見ると、ブレスは強気に笑い、テーブルにあるお菓子が入った袋を持ってこう言った。
「はいはいはい!焼き菓子はふんわりサックサクでめちゃうまい!コーヒーも紅茶もあるが無糖がおすすめだ!そんでセットで20マルト引き!お得だぜ!」
すると、何人かの通行人がテーブルに近づき、ブレスは笑顔を見せた。そして、その後ろのテーブルにいるゲインは笑顔で彼に声をかけた。
「オレのドリンクも宣伝してくれよ」
「常人が飲めるわけねーだろ」
振り向いてブレスが笑顔で言うと、ゲインは苦笑いをした。すると、スカイがゲインの服を引っ張り、声をかけた。
「ゲイン、ゲイン、このお菓子食べていい?」
「ダメだぞスカイ、このは売り物だからな、ブレスに怒られるぞ?」
「いいじゃん、ケチ」
スカイが不満そうに言うと、ゲインは困った笑顔で返事をした。
「ケチもダメだぞ、ケチも、ブレスが聞いたら怒るからな」
それを聞くとスカイは笑顔でこう言った。
「それじゃゲインは?ゲインはどうなの?」
「え?オレ?」
「ゲインはどう思うの?」
ニヤニヤしながらスカイが言うと、ゲインは困った顔をした。
「でも、ダメだぞ、あれは売り物だからな」
「じゃ!ゲインがお金出して、オレにくれればいいよ」
それを聞くとゲインは困った顔でお菓子の入った袋を見た。少しすると、スカイが鳴きだし、彼はスカイを見た。
「キュー!」
「自分で払え」
そこにはスカイを脇から持ち上げる無表情のブレスがおり、ゲインは苦笑いをした。
「お金ない!」
スカイが大声で言うと、ブレスはこう言った。
「じゃ、食べるな」
「お金出して!」
「出さない」
「タテカエテ!」
「そうか」
そう言うとブレスはスカイを更に持ち上げ、腰を曲げてスカイをごと円をかいた。それを見てゲインは困った顔をした。
「そんなことするなよブレス、オレが出してやるから、スカイもそれでいいだろ?」
ゲインが困った笑顔でそう言うと、ブレスはスカイを下ろし、ゲインをにらみつけてこう言った。
「ダメだ、こいつがつけ上がる、このアホは、悪知恵だけは働くからな、カモを見つけた悪徳商人の如く、すりにすり寄ってきやがる」
それを聞くとゲインは苦笑いをし、数秒黙ってから頷いた。
「そうか」
「わかればいい、変な学習さすなよ」
「はい…」
ゲインが苦笑いで返事をすると、ブレスはゲインをにらみながらテーブルに戻った。
それから、数時間後、スカイがドリンクをカップに入れる横で、ゲインは笑顔でコーヒーをカップに入れていた。
「よし、オレの特性ドリンクが注文されるなんてな、感激だなぁ」
「よかったなゲイン」
笑顔でゲインがそう言うと、スカイも笑顔で話した。
「ありがとう」
そう言うとゲインは、砂糖が入った箱にある小さじスプーンを持ち、それを山盛りの状態で10杯入れ、次にガムシロップを2つ入れ、それを長いスプーンでかき混ぜた。そして、それに生クリームをコーヒーが見えなくなる程に盛りつけた。
「あ、そうだ、スカイ、これに何を乗せたら美味しくなると思う?」
ゲインが微笑んでスカイに尋ねると、スカイはテーブルにあるものを見渡した。すると、スカイは目を丸くした笑顔であるものを指差した。
「あれあれ!あれがいい!絶対おいしいじゃん!」
「ん?クッキーか?確かに、流行りのドリンクみたいでいいじゃないか、よし、砕いたらいい感じになりそうだな、ありがとうスカイ」
笑顔でゲインがそう言うと、スカイは笑顔で両手を振った。
「最高なのオレにも作って!」
「ああ、いいぞ、できたら作ってやるからな」
そう答えるとゲインはクッキーが入った袋を手に持った。
そして、それを持ってゲインはブレスに近づいた。
「できたぞ、ブレス」
「遅い」
振り返りながらブレスはそう言い、ドリンクを見て目を広げ、しかめた呆れ顔でこう言った。
「はっ?なんやそれ?」
「オレ特製ドリンク、なかなかいいだろ?」
「いや、その、何、その、アホみたいな、砕いたなんかは」
ブレスが戸惑いながら質問すると、ゲインは笑顔で答えた。
「クッキーだよクッキー、生クリームの上に砕いたクッキーを振りかけたんだ、流行りって感じでいいだろ?」
それを聞くとブレスは頭をかいた。
「それを振ったって言うのか?振りかけるって、いつから、こんな見えなくなるまでって、意味になったんだ?」
「あ、そうか、それを言うならまぶすだな、そうだったな」
そう言うとゲインは軽く笑い、ブレスはため息をついた。
「ん?待てよ、クッキー?」
すると、ブレスは目を丸くし、目を細めるとこう言った。
「これ、どうしたんだ、おっさん」
「ああ、これか、これはだな、あっ」
ゲインは笑顔でそう言っていると、目を丸くし、苦笑いをすると鼻で笑った。そのため、ブレスはゲインをにらんだ。
「おい、おっさん、いったい何してんだ」
「ハハ…、後で払うよ…」
「よろしい、払え」
そう言うとブレスは飲み物を持ち、それをテーブル前に立っている客に笑顔で手渡した。そして、ブレスは客がいないことを確認すると、顔をしかめて振り返ってゲインを見た。
「たっく、はっ!?」
ブレスは顔をしかめて驚いた。そこには生クリームが入った袋を持ったゲインと、手についたクリームを舐めているスカイが見えた。
「おい!アホスカイ!何食べとんねん!」
ブレスが大声を出すと、スカイは笑顔でこう言った。
「食べてないもん、舐めてるもん」
「一緒や!」
「一緒じゃないもん」
そう言うとスカイは笑顔で指を舐めた。
「意地汚いどころの話じゃなーんだよ、そもそも、クリームなら食べていいわけじゃないからな、それも商品っちゃ、商品だ」
顔をしかめてブレスが言うと、スカイはそっぽを向いた。
「お前、晩飯に生クリームぶっかけて泣かしてやろうか?」
「オレは泣かないもん、ステーキにクリームは美味しいもん」
スカイがニヤニヤしながらそう言うと、ブレスはムスッとし、スカイに背を向けた。
「覚えてろよ、無味で泣かせてやる」
そう言うとブレスは拳を握りしめた。
そして、祭が終わり、片づけた後に着陸場に向かっていると、ブレスは目を丸くし、ポケットに手を入れた。そして、そこからいろいろな焼き菓子が入った袋を取り出すと、スカイに手渡した。
「これ」
「お菓子だ!」
「そうだな、やるよ」
スカイが笑顔で受け取ると、ブレスは微笑んでそう言った。それを見るとゲインは微笑んだ。
「どうせ無味で泣かせないだろ?」
クスッと笑ってからゲインがそう言うと、ブレスはムスッとし、にやけた顔でこう言った。
「さあ?どうだかね」
それを聞くとゲインは笑い、ブレスは歩き、スカイはお菓子を口にした。