40話『クリアマイト』
ある日のこと、スカイとブレスとクリスは家のリビングでゲームをしていた。
「しゃああ!!」
ブレスは拳を握り締めながら言うと、ニヤけた顔でスカイを見た。
「オレの勝ちだな、スカイちゃん」
「ムッ!」
スカイが不満そうに片方の頬を膨らませると、ブレスは手を口に当てて笑った。そのため、スカイは両頬を膨らませた。すると、外から地面に何かが落ちる音が聞こえ、その後に家が少し揺れた。
「わっ!」
クリスが驚くと、スカイは音の方を不思議そうに見た。
「誰だろ?」
「羽つきの音の感じがしたから、ゲインのおっさんじゃねーの?」
「そっか、ゲインならお土産くれる、今日はなんだろう?」
指を口に当ててスカイが笑顔で言うと、ブレスはため息をつき、呆れた顔をした。
「わかってねーなぁ、土産は、厄介な仕事の前金だぞ、あれ」
ブレスがそう言うと、スカイとクリスは不思議そうに首を傾げた。すると、インターフォンが鳴り、ブレスは立ち上がった。
「はいはい、金は貰えるしな、やってやるよ、ゲインのおっさん」
歩きながらブレスは言うと、玄関扉の前に来た。扉についている画面を見ると、ブレスは少し目を丸くした。
「アマノか?」
画面には少しうつむき、険しい顔をしているアマノが映っていた。それをブレスは見ると困った顔で首を傾げ、数秒してから扉を開けた。
「よっ、どうしたんだ、アマノ」
少し困った笑顔でブレスが声をかけると、アマノは顔を上げ、微笑んで返事をした。
「ブレス君、えっと、その、今日は、2人に頼みたいことがありまして」
それを聞くとブレスは少し困った顔をした。
「その、数日後に、葬式がありまして」
「そうか」
アマノが困った顔で言うと、ブレスはそう返した。そして、アマノは数秒黙り、真剣な表情でこう言った。
「それで、護衛をお願いしたいんです」
「護衛?」
ブレスが不思議そうに聞き返すと、アマノはうつむいた。
「えっと、その、護衛は言いすぎたかも知れませんが、葬式が終わるまで、一緒にいてほしいんです」
「そうか」
困った顔でブレスが返事をすると、アマノは目をそらしながらこう言った。
「もちろん、報酬は支払います、だから、ボクらを助けてください」
それを聞くとブレスは微笑み、腕を組んでこう言った。
「もちろん、報酬はいらない、オレたちは友達だからな」
「はい?」
アマノは丸くして驚いた。
「オレたちは、友達だから、金は不要だ、一緒にいるくらい、当たり前だろ?」
「え、でも、ボクらはそこまでの仲じゃないと…」
「オレは、そう思わない」
ブレスが強気な笑顔で言うと、アマノは困った顔をした。
「別に、タダならいいだろ?それに、スカイの食費は、笑えるほど高いぞ」
「そうですか」
それを聞くとアマノはクスッと笑い、微笑んでこう言った。
「でしたら、お言葉に甘えるよ、ブレス君」
「よろしい、できることはしてやるよ」
笑顔でブレスが言うと、アマノは微笑んだ。
それから、数日後、スカイとブレスは山の中にあるアマノの家の屋敷の近くに来た。アマノの家の前には長い階段があり、スカイはそれを見て両手を振りながら文句を言った。
「なんでだ!なんで長いんだ!」
「知るかよ、長いから長いんだろ」
ブレスがそう言うと、スカイはポコポコ叩きだした。
「じゃ!家の中で降りればよかったんだ!なんでしなかったんだ!」
「しゃーねーだろ、あんな中で、降りたらえらいことになるんだからな」
「えらいことってなんだよ!家で降りればいいんだ!」
「はいはい、めんどくさがりだもんな、スカイちゃんは」
呆れた顔でブレスが言うと、スカイは両腰に手を当ててムスッとした。そのため、ブレスは頭をかき、ため息をつくとこう言った。
「はいはい、おぶってやるから、わめくのは、やめろよ」
「うんうん」
それを聞くとスカイは笑顔で頷き、ブレスは苦笑いをした。
そして、階段を登り切ると、ブレスは門の前で屈み、スカイはそこから降りた。門を見るとスカイは不思議そうにし、そのままの表情でブレスを見た。
「どうするの?」
「インターフォンがあるはずだから…」
すると、扉が開き、アマノが見えた。
「いらっしゃい、スカイ君、ブレス君」
「あ、アマノ」
スカイが言うと、アマノは笑顔で頷いた。
「うん、今日はお葬式だけど、明るくいこう」
アマノが笑顔でそう言うと、ブレスは困った顔でアマノを見た。
屋敷の中にある、アマノの部屋に来た。その部屋には畳が敷かれており、背の低いタンスとあまり本がない本棚があり、机の横に押し入れが見えた。
「えっと、好きに座って」
「うん」
アマノが困った顔で言うと、スカイは笑顔で頷き、机に座った。
「そうじゃねーよ、机に座んな」
ブレスが顔をしかめて言うと、スカイはムスッとした。
「じゃ、どこならいいんだよ」
「床、今裸足だろ、床に座れ」
「やだ」
「うるせえお前、いつも床に寝転がってんだろ、何気にしてんだ」
「やだ、やだものはやだ」
ムスッとしながらスカイはそう言うと、そっぽを向いた。それを見ると、ブレスは顔をしかめ、アマノは困った笑顔をした。すると、アマノは目を丸くし、押し入れを開けた。
「これ、座布団、これに座ればいいよ」
アマノは笑顔でそう言うと座布団をスカイの前の床に置いた。そして、スカイは机から立ち上がると、それを見て首を傾げ、ゆっくりと座った。しかし、すぐに立ち上がり、座布団を机に置いてそこに座った。
「ダメか」
それを見てブレスは呆れた顔で言うと、スカイは笑顔で頷いた。
「クッションは気に入った」
「そうか」
困った顔でブレスが言うと、アマノは座布団を2枚床に置き、そこに座った。
「ブレス君も」
「ああ」
アマノが微笑んで言うと、ブレスも座布団に座った。そして、アマノは困った顔をし、2人を見ると息をのみ、こう言った。
「それで、今回2人を呼んだ理由について、長い話になりますが、話させてください」
「わかった」
ブレスが頷くと、アマノは真剣な表情で話を始めた。
「その、まず、ボクらの両親は一族の者に殺害されました」
それを聞くとブレスは顔を少ししかめ、スカイは目を丸くした。
「誰が犯人かは予想になりますが、わかっています、それが今回死んだ伯父になります、伯父は父の兄で、家を継げませんでした」
「なんでそう思うんだ」
ブレスが尋ねると、アマノはうつむいて答えた。
「ボクは父と母が死んだとき、逃げている伯父を見ました、それで、不思議に思ったボクは、伯父が逃げていた場所に言ってみたら、父と母はが倒れていました」
そう言うとアマノは目を閉じ、開くと続きを話した。
「その後、そのことで話し合いになりましたが、結局のところ、伯父は倒れていたか助けを呼びにいったと言い、この話は、未だ解決していません」
目を細めてアマノはそう言うと、拳を握りしめた。
「ですが、ボクはあのときの伯父の顔を覚えています、あの恐怖で歪んだ顔、ボクは誰も信じられません、伯父以外にも協力者がいたか、伯父以外にも誰かがボクらを狙っているかもしれません」
アマノが真剣な表情でそう言うと、スカイは首を傾げて困った顔で質問した。
「なんで?」
「あっ、ええ、ボクが家を継いでから、除霊後の帰り際に魔獣が襲ってきたり、ボクの食事を勝手に食べた猫が死んだり、いろいろとありましたから」
それを聞くとブレスは目を閉じて困った顔をし、スカイは悲しそうにアマノを見た。
「ボクら兄妹は常に命を狙われています、ですので、今回のような大勢が入り乱れる状況では何があるかわからないのです、だから2人に妹の護衛を頼みたいんです」
アマノが真剣な表情でそう言うと、ブレスは黙り、数秒すると困った顔で聞き返した。
「はっ?妹?」
「はい、妹です」
「お前は?」
「結構です、妹だけで十分です、自分のことは自分でなんとかしますから」
アマノが真剣な表情で言うと、ブレスは困った顔をし、数秒黙ってから返事をした。
「そうか」
「妹を頼みました」
アマノが口角を上げてそう言うと、スカイは拳を突き上げ、笑顔でこう言った。
「わかったぞ!オレが守ってやる!」
「そうか、頑張れ、頼りにしてんぞー、たぶんな」
ブレスが目を細めてそう言うと、スカイは自信満々に目を閉じた。
それを見てアマノは苦笑いをすると、立ち上がった。
「それじゃ、シズルを連れてくるよ、2人とも、妹を頼みました」
「まかせろ!」
「任せとけ、なんかあっても、オレがなんとかしてやるからさ」
微笑んでアマノがそう言うと、スカイは両手を上げて振りながら大声を出し、ブレスは困った笑顔で返事をした。
「ありがとうございます」
それを聞いてアマノは笑顔でそう言うと、1度頭を下げ、部屋から出ていった。
それから、スカイはブレスとシズルと3人でトランプカードを使
って遊んでいた。
「これであがり」
シズルがスカイが持っている2枚のカードから1枚引くと、笑顔でそう言い、スカイはムスッとした。
「負けた!」
「そうだな」
スカイが怒ると、ブレスはそう言い、シズルはそれを見てクスッと笑った。
「いいなぁ、仲よさそうで」
「ん?仲良くないの?」
首を傾げて不思議そうにスカイが尋ねると、シズルは少し困った顔
で答えた。
「ううん、そういうわけじゃないけど、お兄ちゃんはいちいちうるさいから」
「ふーん」
スカイが目を丸くして相づちを打つと、シズルは不満そうに話した。
「お兄ちゃんはいつも、シズル早く寝なさいとか、シズル好き嫌いはダメとか、学校は楽しいかとか友達はどんな子とか、うるさいし、他の子のお兄ちゃんはそんなこと聞かないのに、もっと普通の話がしたい」
それを聞くとブレスはうつむき、口を手で塞いで無音で笑った。
「ブレスー?どうしたのー?」
不思議そうにスカイが尋ねると、ブレスは口を押さえたままにやけた顔で返事をした。
「いや、面白くてな、あいつ、そう言うことか」
「どういうこと?」
「お前には難しいことだよ」
スカイが尋ねると、ブレスはそう言うと、無音で笑った。そのため、シズルは困った顔をし、スカイは首を傾げて不思議そうにブレスを見た。
「さっ、ババ抜きの続きといこうぜ、せっかくなんだから、楽しまねーーとな」
ブレスは笑顔でそう言うと、カードを束にまとめ、それを下から一部抜き取ると積み上げ、それを何度も繰り返した。
その頃、アマノは棺の前にある座布団に座りながら、目を閉じた状態で手のひらを指関節前で合わせていた。そして、無音の中で全員黙った状態で目を閉じてうつむいていた。すると、アマノは顔をしかめてふりえ、目を大きく開くと立ち上がった。そして、黒い服を来た参加者が振り向くなか、アマノは一点をにらみつけた。
「おじさん」
半透明で丸いものを睨みながら平坦にアマノが言うと、それは動きだしてアマノに近づき、アマノの前で止まるとこう言った。
「アマノ!お前が悪いんだぞ!」
「いったいなんの話ですか、おじさん」
「お前が生きていることそのものだ!」
それが怒鳴ると、アマノは目を閉じてうつむいた。
「そうですか」
「そうだ!だから!」
そう言うとそれは膨れ上がり、形を変えると魔術合成人形のような見た目になった。天井近くまであるそれをアマノが目を細めて見上げていると、それは怒鳴った。
「消えていなくなれ!アマノ!!」
アマノは手をそれ向けると、白色の円を出して魔術を展開した。
「魔術展開、クリアソウル」
円から白い球が出ると、それに命中し、それは揺れた。それを見てアマノは服の内側に手を入れて緑色の結晶を掴んだ。
「アマノ!」
「思ったとおりか、この程度じゃダメか」
それがアマノの名前を叫ぶと、アマノはそれを見ながらそう言い、部屋から出ていった。そして、ふすまを開けると、アマノは結晶を前に出し、底から緑色の円を出すと魔術を展開した。
「魔術展開、クリアマイト!」
円から緑色の光が出ると形を成して魔術合成人形クリアマイトになった。そして、アマノは手から緑色の円を出した。すると、それが膨張し、屋根より大きくなると、動きだした。
「時間が!」
顔をしかめてアマノが大声を出すと、白く楕円形の光がそれに向かい、それに命中するとそれは怯んで動きを止めた。
「アマノ!さっさ乗れ!」
アマノが声の方を見ると、ブレスとスカイとシズルがおり、アマノ
は頷き、緑色の円を地面に移動させると魔術を展開した。
「魔術展開!エアロゾーン!」
円から螺旋状に強風が出ると、アマノは風に乗り、クリアマイトの頭部まで上がり、頭部に手をかざした。
そして、クリアマイトは動きだすと、機体は両手から白色の円を出し、魔術を展開した。
「魔術展開、クリアソウル!」
円から放たれた白い楕円形の光はそれに向かい、それは飛び上がるとクリアマイトの前に着地し、機体に殴りかかった。その拳を機体は右に避けると、手から白色の円を出し、魔術を展開した。
「魔術展開!クリアソウル!」
それは白い光を避けると、クリアマイトの頭部に手を伸ばし、コックピットのシートに座るアマノを握りしめた。
「アマノ!!」
それがアマノの名前を叫ぶと、アマノは体を震えさせ、息を乱した。そして、クリアマイトは両手から白色の円を出した。
「魔術展開、クリアソウル」
魔術を展開すると、白い光が瞬時に当たり、白い光はアマノから手を下ろした。
「おじさん、ボクの両親を殺したのはあなたですか、それと、おじい様の死も、関係があるんですか」
アマノが少しうつむき、目を細めて平坦な声で尋ねると、それはこう言いだした。
「あの男はこう言った、お前が継いだらもっと面倒になる、だから邪魔なあれを消し、目撃した女を殺した」
それを聞くとアマノは顔をしかめ目をそらした。
「おじい様は?」
「勝手に死んだ、手間が省けた」
「それで、協力者は?」
「不要、足手纏いにしかならない」
そう言うとそれはクリアマイトを見つめた。
「消えろアマノ!!」
そして、クリアマイトに手を伸ばし、アマノを握りしめた。そのため、アマノは目を閉じた。
「浄化は不可能、これが答えですよ、おじさん」
目を閉じてアマノは平坦に言うと、目を開き、真剣な表情で操縦レバーを握りしめた。そして、クリアマイトは手から白色の円を出した。
「魔術展開、クリアマイト!」
円から白い光が出ると、それを包み込んだ。そして、光が消えると、そこには何もなく、アマノはシートに倒れるとため息をつき、目を細めた。
「おじさん、さようなら」
そう言うとアマノはレバーから手を離し、目を閉じた。
それから、スカイたちは玄関前で話をした。
「ありがとうございます、スカイ君、ブレス君」
少しうつむきながら目を細めてアマノが言うと、スカイは不満そうに声をかけた。
「アマノ、大丈夫?」
「あ、まぁ、なんというか、今までのことがすべて、杞憂だったんだと思って、それで、なんというか」
そう言うとアマノは鼻でため息をついた。
「キユウ?」
「意味のない心配だったってこと」
スカイが困った顔で首を傾げて言うと、ブレスはそう答えた。それを聞くとアマノは困った笑顔でこう言った。
「まぁ、そういうことだから、なんか、言葉にできない」
アマノはまたため息をついた。それを見てスカイは困った顔で目を閉じ、ブレスは困った顔で頭をかいた。すると、ブレスは目を丸くした。
「ブレス君?どうしたの?」
アマノが尋ねると、ブレスは困った顔で返事をした。
「あれ、聞きにくいけどな、あれ」
「はい?別に今回のお礼があるから、聞いていいよ」
「そうか」
ブレスは困った顔でそう言うと、数秒黙ってから質問した。
「あれ、前にばあさんと話してて、お前のじいさんが闇の精霊の正体を知ってたんじゃないかって、ばあさんが言っててな、それで、お前なら、なんか知ってんじゃねーかと思ってな」
それを聞くとアマノは困った顔で数秒黙り込み、そのままの表情で返事をした。
「それは、ボクもわかりません、まぁでも、おじい様は無口で不思議な人だったから、言っていたけどボクは理解できてなかったのかもしれない」
「そうか、悪かったな、好奇心で聞いただけだ、気にすんな」
「あ、うん、今日はありがとう」
「それじゃ、なんかあったら、頼れよ」
そう言うとブレスはアマノに背を向けて階段を下りた。
「じゃあな!元気になれよ!オレが助けてやるからな!」
スカイは両手を上げて振りながらそう言うと、ブレスを追いかけた。それを見るとアマノは微笑み、ブレスがスカイの手を掴み、ゆっくりと階段を下りていくのを見た。