過去話『ブレスの合成術』
15才の年のとある日のこと、ブレスは森の中を歩いていた。その周りには帽子を被り、大きなリュックを背負った人々が歩いており、ブレスはそれを見渡していた。
(どこや、どこや、どこかにおらんか)
ブレスはそう考えながら周囲の人々の顔を見ていた。
(困ってる奴はおらんか?)
そう考えるとブレスは困った顔をした。
(困ってないとオレが困んねん、あ、オレが1番困っとるんか)
そう思うとブレスは立ち止まった。
(オレがおったら金取れんのに!なんでおらんのや!いや、おったとこで、持ってないから取れんわな)
ブレスはそう思うと頭を抱えると、ため息をついた。
(探すしかないか、あー、困った金持ちおらんかなー、おらんよなー、現実見ろや、もうお前)
そう思うとブレスはうつむいてため息をつき、首を振ると顔を上げ、周りを見ながら歩き出した。
それから、しばらく歩くと、ブレスは道の横の木の近くに行き、魔術で白いイスを作ると、そこに座ってうつむいていた。
(なんでや、なんで誰も困ってないねん、いや、当たり前か、ハイキング来る連中が、困っとるわけないよなぁ)
ブレスはそう思うと顔を上げ、目を細めて歩いている人々を見た。
それから、しばらくすると、ブレスは歩き、1階建ての四角く三角形の屋根のある細長い建物にたどり着いた。
(しゃーない、ここで困ってる奴、いや、休憩所でなんか依頼でも見つけるか、なんかあるとええんやけどな)
そう思うとブレスはまたため息をつき、建物に近づいた。すると、建物から同じ上着を着た4人組が出ていき、ブレスはそれを見た。
(あー、魔獣退治の業者か、ええよなぁ、魔術合成人形、あれさえありゃ、もっとええ仕事にありつけんのにな)
そう思うとブレスは困った顔で彼らを見た。
それから、1時間後、ブレスは広い建物内にある食堂のテーブル席に座り、嫌そうに困った顔をしていた。
(人が足りてる、仕事がない、どうすんねん、マジでこれ)
そう思うと薄い透明なコップから水を飲んだ。すると、驚いた声が聞こえ、ブレスは声の方を見た。そこには先ほどの4人組がおり、帽子を被った小綺麗な老人が困った顔をしているのが見えた。
「なんや?」
ブレスはそうつぶやくと、不思議そうにじっと彼らを見た。
そして、4人組がそこから離れると、ブレスはイスから立ち上がり、老人に近づいて声をかけた。
「よっ、じいさん、どうしたんだ?」
それを聞くと老人は顔を上げ、困った顔でブレスを見た。
「あなたは?」
「オレはブレス、何でも屋をしている、ただの旅人さ」
「そうですか」
困った顔のまま老人は暗い声で返事をすると、ブレスは強気な笑顔でこう言った。
「なんかあったなら、オレがなんとかしてやるよ、できる範囲でだがな」
それを聞くと老人は黙り、数秒すると暗い声でブレスにこう尋ねた。
「でしたら、魔術合成人形はお持ちで?」
「いや、持ってない」
ブレスがそう返事をすると、老人はうつむいてため息をついた。
「困んなよ、聞かなきゃわからんぜ?」
ブレスが困った顔で言うと、老人は顔を上げて不安そうにブレスを見ると、鼻でため息をついてからこう言った。
「近くに魔獣が出たので、業者を呼んだのですが、業者が言うには自分たちの手には負えそうにないから、後日また来るとのことで」
「ふーん、それでどうなってんだ?」
「一時的に閉じ込めているそうなんですが、それで対策を考えるから待っててほしいと」
「なるほどねー」
「ですから、魔術合成人形のないあなたでは、無理な相談なんですよ」
「そうか」
老人が困った顔でそう言うと、ブレスは困った顔で頷いた。
それから、ブレスは森の中に入り、周囲を見渡しながら歩いていた。歩いていると、木々が倒れ、地面がえぐられている荒れた場所を見つけ、ブレスはそこにまっすぐ向かった。その場所に着くと、透明な箱に入っている猪の魔獣がおり、箱に圧迫されていた。ブレスはそれを見ると目を閉じた。
(耐久値は通常より、ちょっと高いか?箱の方の耐久値は、微妙やな、押し込まれとる分、それでダメージがある、もって数日か)
そう思うと、ブレスは目を開き、魔獣を見つめた。
それから、ブレスは建物に戻り、老人に声をかけた。
「よっ、じいさん、あの連中はいつ戻ってきそうだ?」
「あ、さっき連絡が来て、対策を練るから5日後に来るそうです」
「そうか」
それを聞くとブレスは困った顔で頭をかいた。
(そこまでもたんよな、あれ、どうすんねん)
ブレスはそう思うと、ため息をついた。すると、ブレスは口角を上げた。
(あ、そうか、そうすればええねん)
そう思うと、ブレスは老人を見て笑顔でこう言った。
「しゃ、じゃ、行ってくるわ、じいさん」
「はい?」
老人が目を丸くして驚くと、ブレスはニヤけた顔をした。
「あいつらより、オレが早く倒してやるよ」
「はっ?」
老人が困った顔で驚くと、ブレスは鼻で笑い、背を向けると、手を上げて軽く振りながらそこから離れた。
そして先ほどの場所に着くと、ブレスは白色の円を出し、魔術を展開した。
「魔術展開、ボックス」
円から白い光が出ると、それは形を成して白い箱になった。そして、ブレスはそれに座ると、黒色の円を出した。
(生身でやる以上、一撃で仕留めなあかん、それには上級の魔術がいる、だったら作りゃええねん)
そう思うとブレスは魔獣を見つめた。
(近づくわけにはいかんから、距離取らな、遠隔かつ、あのデカブツを一撃、爆弾しかないやろ!)
ブレスはニヤニヤしながらそう思い、拳を少し上げて握りしめた。
(さっ、チャッチャと作って、サッサ倒そう)
笑顔でブレスはそう思うと、黒色の円に手を伸ばした。
それから、朝になり、ブレスは白い箱の中で目を覚まし、起き上がるとポケットにある時計を取り出してそれを見た。
「朝か、あーー、終わらん、アイデアはええんと思うねんけどなぁ」
目を細めてブレスは言うと、手から黒色の円を出した。
「オレじゃ無理なんかなぁ、うーーん」
困った顔で円を見つめると、ブレスはもう片方の手からも円を出した。
「うーん、どうすりゃええねん、ん?」
ブレスは目を丸くすると、両手の円を交互に見た。すると、目を広げ、笑顔になると立ち上がった。
「あっ、あっ!そうすりゃええねん!なんでこのなんも思いつかんねんお前!そうや!合成すりゃええねん!合成!しゃ!!」
笑顔でブレスは言うと拳を突き上げた。
そして、次の日の朝、白い箱の中でブレスはイスに座りながら黒い円を見つめた。
「しゃぁ、できたできた、えっと、中級のフレアブラスト2つをベースに、初級6つと無属性3つ、よし、覚えた」
目を細めた状態でそう言うと、ブレスは目を閉じた。円の中には黒い火の球があり、それを見てブレスは口角を上げた。
「魔術も安定…、威力もある…、あとは倒すだけや…」
そうつぶやくと、ブレスはうつむき、鼻と口で一定の間隔で呼吸を繰り返した。
それから、7時間後、ブレスは目を開いた。
(いつの間にか寝てたか、徹夜やし、しゃーないか)
そう思うとブレスはポケットから時計を取り出し、時計を見ると、それをポケットに戻した。そして、立ち上がると、ブレスは白い箱の壁を蹴り、壁を壊し、白い箱が光になって消えるなかでそこから出た。
「もうちょい、大丈夫か」
ブレスは魔獣の入った透明な箱を見ると笑顔でそう言い、黒色の円を移動させて自分の胸の中心近くに置いた。
「しゃあ!やるぜえええ!」
両拳を握りしめてブレスは言うと、すぐに目を広げて驚いた。
「ちょ待て!ちょま!!」
そう言うとブレスは目を閉じて黒色の円を見た。
「ああ!!やっぱそうやん!こんなん出したら火の海やんけ!」
ブレスは大声を出すと、頭をかきむしった。すると、目を広げてブレスは動きを止めた。
「そうや!バトルフィールド!あれならいける!」
ブレスは目を広げた笑顔で拳を握りしめると、すぐに顔をしかめた。
「あ!でも問題ある!耐久値!!耐久値や!耐久値!なんやねんマジで!」
そう言うとブレスはまた頭をかきむしった。
そして、次の日の昼、ブレスは片手に白色の円、もう片手に黒色の円を出した状態で猪の魔獣をにらみつけていた。
「しゃ!いくぜ!」
ブレスはそう大声で言うと、白色の円を移動させて魔獣の近くの地面に設置し、黒色の円から魔術を展開した。
「魔術合成!エクスプロード!!」
黒色の円から黒い火の球が出ると、それは魔獣に向かった。そして、ブレスは白色の円の魔術を展開した。
「魔術展開!バトルフィールド!」
白色の円から光が出ると、それは形を成して透明な箱になった。そして、その中で黒い火の球が魔獣の入った箱に当たると、それは爆発してブレスの作った透明の中で土煙をあげた。それをブレスは顔をしかめて見つめ、息を飲んだ。
しばらくすると、ブレスの作った透明な箱が消え、土煙が少しその周囲に飛ぶと、次第に薄まっていった。そして、それが見えなくなると、そこには四角形にめくれあがった地面が見えた。
「しゃあ!!」
それを見るとブレスはそう叫び、拳を突き上げた。
それから、ブレスはあの建物に入り、老人にあった。
「よっ、じいさん、倒してきたぜ」
「はい?」
それを聞くと老人は目を丸くして驚いた。
「倒してきたぜ、それだけを言いにきた、じゃあな」
ブレスは微笑んでそう言うと、老人に背を向けた。
「ん?あ、いえ、えっと、その、報酬は?」
老人が目を丸くしたまま困った顔でそう言うと、ブレスは振り向き、にやけた顔でこう言った。
「いらんな、オレが勝手に、やったことなんだからな」
そして、ブレスは老人に背を向けると、鼻で笑い、出口に向かって歩いて言った。
それから、1時間後、ブレスは森の中の道を歩き、帽子を被り、リュックを背負っている人々を見ていた。
(あー、困ってる奴おらんかなー)
そう思いながら、ブレスは目を細めた状態で道を歩き続けた。