婚活始めて一日目で結婚
※注 レイプの描写があります
「あんた、来年もう三十でしょ。どう? 彼女とかいないの?」
母親が羊の肝臓を煮込んだスープをかき混ぜながら言った。
結婚へのプレッシャーが日ごとに高まるのは薄々感じていた。だが、こうもはっきり言われると、さすがにウザい。
「いるわけないだろ」
俺は吐き捨てた。
恋人がいないことくらい母も知っているはずだ。
「具体的な婚活はしてるの? 好きな娘とかいないの?」
「いや、特に」
と、答えたが実は気になっている女性くらいはいる。
母はため息をつき、「早く孫の顔が見たいわ」と呟いた。
その仕草がいちいち俺をイラつかせる。
さらに母は、近所に住んでいる同級生はもう三人も子供がいるとか、私は二十三歳で結婚し最初は嫌いだった父ともうまくやっているだとか、聞きたくもない話を延々と続けた。
あまりのしつこさに、俺はキレた。
「わかったよ! そこまで言うのなら結婚してやる!」
俺は声を張り上げた。
「まあ。婚活をする気になったのね」
母の表情が一気に明るくなる。
「ああそうだよ。今から婚活を始める。だからお袋も準備してくれ」
「わかったわ」
母は早速、祝福の儀式でふるまう料理の下ごしらえや、部屋を飾り付ける幕の用意に取りかかった。
俺は、男友達四人に「今日婚活をする」と、電話で連絡した。その中の一人はワンボックスカーを所有しているので重宝する。
相手は当然あの子しかいない。
同じ村に住むアルマグルという名の、一見控えめだが麗しさを内包している女性である。その娘とは二、三度会話を交わしたことがある程度だが、俺の顔くらいは覚えているはずだ。
一方俺は、彼女の行動パターンを把握している。夕方、帰宅途中に必ず人通りのない道を歩くのだ。
約束した時間に男友達と集合し、総勢五名でワンボックスに乗り込む。
狙いをつけた道に車を止める。茂みの影に隠れて待っていると、予想通り彼女がやってきた。
俺は彼女の前に飛び出し、その細い手首を掴んだ。
アルマグルはぎょっとして俺の顔を見た。
「好きだ。結婚してくれ」
俺は言った。
彼女は全身を硬直させ、震えながら首を横に振った。
その瞬間、ワンボックスカーから友人達が飛び出す。
抵抗する彼女を車内に押し込めた。
俺の家に着き、泣き叫ぶ花嫁を奥の部屋へと連行する。
部屋では母親を中心とした親戚が集まっており、説得が始まる。
説得は数時間から数日間にわたって行われる。ジュールクと呼ばれる白いスカーフを花嫁に被せることができれば、結婚を了承したと認識される。結婚に応じない女性はレイプされることもある。また、レイプされなくても、一晩監禁されると、その後は処女性が疑われることで他の男性との結婚が難しくなるという事情から、結婚の承諾を余儀なくされてしまう傾向にある。
キルギスではこのような誘拐結婚が行われており、既婚のキルギス人女性の35~40%が強制的に結婚させられていることが分かっている。
こうして俺も無事に結婚することができた。