仙道企画その2(天海波平)
仙道企画その2
参加作品になります。
こんな面白い企画、逃すべからず。
騎乗の男は、静寂な砂漠の暁の中、動くことのない北の星を見上げる。
頭部をターバンで包み込み、顔は見えない。
時折り、吐かれる白い息が立ち登っては消えていく。
覗く双方の眼は、爛々と輝き意志の強さをうかがわせる。
それはまるで、鷹の如き猛々しさを内に秘めた神秘の宝石。
ーーそれを覗き込む小さな目。(あなたは誰?)(何をしているの?)
その声はとてもか細く、男は気づいていない。
やがて………
暁の空に、ひときわ明るい一筋の星が流れるのを合図に、手綱を強く握りしめ声をあげた。
「セイッ!」
まるで風のように、走り出す。
北の星を目指して、走り出す。
ーーそれに合わせるように飛ぶ一羽の小鳥の影。
薄暗い砂漠のなか、馬を駆る。
未だに星が降るなか、馬を駆る。
ひたすらに。
真っ直ぐと。
陽が昇るなか馬を駆り、月が昇っても馬を駆る。
旅の中で男は己に問う。
(何故行くのだ俺は?)
(行けと言われるんだ、とにかく腹の底から北へ行けと)
旅の中で男は己に誓う。
(行けるのか?無謀だぞ)
(行けるさ間違いなく、俺の足は動いている)
男はあるとき道中で、小さな仲間がいることに気がつく。
それは鳥、青い小鳥。
青い小鳥はさえずる。
ーー(どこ行くの?)
「北へ」
ーー(何しに?)
「さあな、お前さん教えてくれよ」
男は答える。
ーー(おもしろそう)
「そうか?」
ーー(一緒に………)
「ついてくるのか? かなりの長旅になるぞ?」
騎乗の男は進む、止まらずに、迷うことなく、ただ前に進む。
ーー青い小鳥も進む、羽ばたき、ときに滑空し、彼に倣って前に進む。
景色は変わる。
岩の砂漠から緑の草原へと。
星の降る砂漠から花が咲き乱れる草原へと。
彼らは前へ進む。
季節も変わる。
春から夏へと。
秋から冬へと。
彼らはさらに進む。
小さな村にも寄った。
木に覆われた、小鳥だらけの不思議な村。
青い小鳥も、一緒にさえずり、どうやら恋人まで見つけたようだ。
彼らは、彼らの旅を謳歌する。
そして今、男は雪と氷の世界にいる。
深い雪の中を馬を引き、歩いていた。
馬の吐く息は白く、手綱を引く男にかかる。
霧のようなそれは、男の姿を隠すが、すぐに流れていった。
姿が現れる。
男は歳をとっていた。
顔には皺が刻まれ、あご髭には白い物も混じっている。
だが、あの鷹のような眼は変わらない。
力強く、一点を見据えるそれは衰えを見せない。
「ようやく……… か」
「ずいぶんかかったな」
やがて開けた場所に着くと、男は歩みを止めた。
彼が求めた世界。
そこは薄暗く、そして寒い。
だが、そこに彼は懐かしさ、デジャヴを感じていた。
あの暁の砂漠の世界を………
ーー(おめでとう)
青い小鳥のさえずりが聞こえたように感じた。
だが姿は見えない。
ここは極寒の地で、小鳥などいるはずもない。
「ああ、礼をいう」
男は誰に対してなのか、そう答える。
先程まで見えなかったが、彼の帽子には
一つの……… 青い羽
帽子にそれは飾られていた。
男の瞳にかげりが見える。
どこか寂しげな男に、また小鳥のさえずりが聞こえる。
ーー(上を向いて)
「おおっ! なんてことだ」
男は眼を見開き、驚愕の表情で北の空を見上げる。
天空に光りが踊り、揺めき、流れて、降り注ぐーー神の奇跡。
男の眼に………
あの鷹のような眼に、彼は旅で見ることのなかった涙を、最初にして最後に浮かべたと言う。
〜・〜・〜・
長い年月を経て、彼が見た奇跡は「オーロラ」と呼ばれる現象であったのだが、彼の旅は多くの吟遊詩人によって歌われ、それにより、さらに多くの人々に冒険心や探究心をもたらしたといわれる。
この曲を聴いたあなたがそうであるように………
前回に増して今回の曲も素晴らしいものでした。
曲の序盤のイメージとして
・静寂
・疾走
私は、この言葉が浮かび、その言葉から景色や人物をイメージして、そこから物語を書き始めました。
仙道さまごちそうさまでした。
(おかわ………)




