14.天使落第 ~(13)
パレルは記憶の暗い闇の中で思い出した。
「私だったんだ・・・・・。私、この日に死んじゃったんだ・・・・・」
パレルの目から再び涙が溢れ出した。
「パパ、ママ、ごめんなさい。私、何もできずに・・・・・なんにも親孝行できずに・・・・・死んじゃったんだ・・・・・」
しばらくの間、真っ暗な闇の時が続いた。
パレルは心の中でパパとママにずっと謝り続けた。
すると、パレルの目の中のその闇の奥に小さな光が見え始めた。
そしてだんだんと広がっていく。
それはまたたく間に大きくなり、眩い光と共に一気に視界が開けた。
「まぶしいっ!」
しばらくすると徐々に光にも慣れ、あたりが見えてきた。
すると目の前にパパとママの顔が映っていた。
「あれ? ここ、さっきの病院? パパとママがいる・・・・・これ、またあの赤ちゃんの記憶?」
いや、違う。これは記憶ではない。
手と足に感じる感触。肌から感じる暖かさ。
明らかにこれは現実だった。
「私、あの赤ちゃんになってる?」
『もう大丈夫ですよ! 奇跡だ!』
横にいた医師が叫んだ。
『よかった! 本当によかった!』
パパとママが泣きながら抱き合って喜んでいるのが見える。
「一体どういうことだろう?」
「やったなパレル!」
ジャンクの声がする。
「ジャンク、どこ? どこにいるの?」
パレルはジャンクの姿を捜すが、どこにも見えなかった。
「お前はもう現世の人間に戻ったからな。俺の姿はもう見えないよ。もうすぐ声も聞こえなくなるだろう」
「これ、どういうこと?」
「お前はこの天界研修でトップの成績だったんだ。天使たちを抑えてだぞ。それで特待生に選ばれたんだよ」
「トクタイセイ? 何それ?」
「うーん。簡単に言うと、一所懸命に頑張ったからご褒美を貰えるということかな」
「ご褒美?」
「そうだ。お前はまたパパとママのところに生まれ変われるんだ。よかったな」
「私、またパパとママの子になれるの?」
「そうだよ、パレル。この赤ちゃんはお前の生まれ変わりだったんだ」
パレルはまだ実感が湧かない。
しかし、じんわりと伝わってくる暖かな肌の感触がこれは現実なんだということを教えてくれた。