12.天使落第 ~(11)
「誰? これ?」
「パレル、大丈夫か?」
ようやくジャンクの声が聞こえた。
「ジャンク、どういうこと? わけわかんないよ。これ、誰の記憶?」
「ああ、たまにあるんだ。生まれたばかりの赤ちゃんは前世の記憶が残っていることが多いんだよ」
「え? じゃあこれ、この赤ちゃんの前世の記憶ってこと?」
「そうだな」
「でも変だよ。パパもママも、さっきと同じ人だよ」
ジャンクはしばらく黙っていた。
「どうしたのジャンク?」
ようやくジャンクの口が開く。
「この赤ちゃんはな・・・・・以前亡くなったという前の娘さんの生まれ変わりだ。今見えてる記憶はその子のものだよ」
「何それ? 生まれ変わりっていうことは、同じパパとママのところに生まれ変わることができたの? え? でもまたすぐに死んじゃうってこと?」
「そうだ・・・・・」
「そうだじゃないよ! そんなの酷すぎるよ!ダメだよそんなの!」
「これがその子の運命なんだ・・・・・」
「運命って何? そんな酷い運命、誰が決めたのよ!」
「神様に決まってるだろ」
「じゃあ私、神様に文句言ってくる! 頼んでみる! この子死なせない!」
「無茶言うな、パレル」
「私、もう試験落っこちてるから何も怖いものないもん!」
「ダメだ! 決められた運命はもう変えられない!」
「だって・・・・・だって可哀そうだよ。せっかく生まれ変われたんだよ・・・・・」
パレルの声が涙で掠れる。そしてその涙はパレルの頬を溢れんばかりに覆った。
あまりにも非情な運命に対し、パレルは何もできない自分が悲しく、何よりも悔しかった。
映像は何も知らずに楽しそうにボールを追いかけて遊んでいる。
『優奈!』
母親がこの子の名前を呼んだ。
「ゆうな?・・・・・」
この名前がパレルの脳裏に突き刺さる。