10.天使落第 ~(9)
人の寿命という運命は誰にも変えることはできなかった。
「この子のパパとママもかわいそう。一週間だけなんて酷すぎるよ」
「そうだな・・・・・実はこの夫婦には前にも娘がいたんだけど、六歳の時に亡くしてるんだ」
「えっ! そうなの。それなにのまた・・・・・」
「さあパレル、仕事だ。この子に楽しい思い出を見せてあげろ」
「だって生まれてたった一週間だよ! 思い出なんて何も無いじゃない!」
「そんなこたねえ。さあ、やるんだ」
「・・・・・ダメだよ。私には無理だよ」
思い出を集めて見せることは、召喚者が若ければ若いほど難しい。
記憶の量が少ないためだ。
このような生まれて間もない赤ちゃんはベテランの死神でも難しい仕事だった。
「やるんだパレル! お前しかこの子を救えねえんだ」
「救う? 救うって、どうせこの子死んじゃうんでしょ!」
パレルの目からぽろぽろと涙がこぼれ出した。
「この子を寂しいまま死なせてしまっていいのか?一週間とはいえ、この夫婦に愛情をいっぱい注いでもらったはずだ。その愛情が思い出になるんだ」
パレルは泣いたまま、まだ動けない。
「パレル! お前しかできねえんだよ! やれ!」
ジャンクの激しい口調にパレルは覚悟を決めた。
「わかったよ・・・・・」
パレルは涙をぬぐいながら赤ちゃんに顔を近づけて目をつむる。
赤ちゃんの記憶がパレルの頭に入ってきた。
しかし、見える記憶の映像は薄暗くよく見えない。