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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第94話 ちっちゃくなったロードス様

「ま、まさかこの御方はロードス様!」


 小さな女の子を目にした長老が叫んだ。心配そうにその顔を覗き込んでいる。


「ちょっと長老。この女の子がロードス様って本当なの?」

「うむ。わしにはわかる。この子から感じられる気配はロードス様のそれといっしょなのだからな。とにかく一旦村に戻り看病するのだ!」


 長老の号令で全員が動き出した。キングたちは女の子の様子を心配しつつ村へと急ぐ。


「ロードス様、息はあるし無事で良かった……」


 村に運び込まれたロードスを丁重に介抱する一同。即席で小さなベッドを作りそこに寝かせて容態を見ていた。


 それからしばらくして――小さい女の子と化したロードスがパチリと目を覚ます。


「ここは……」

「おお! お目覚めになられましたかロードス様!」


 ロードスが目を覚ましたことに気づき長老が涙ながらに駆け寄った。


「そなたは?」

「おお! 私のことをお忘れですか。私はここの村の長をさせてもらっておる者です。魔王との戦いでも一緒にいたのですが……」


 ロードスの呟きを聞き長老がガックシと肩を落とした。それを見たロードスが慌てて口を開く。


「そ、そうでした。今、思い出しました。少々記憶が混濁していたので」

「それも仕方ないだろう。魔王との戦いでロードス様も消耗してしまい姿も随分と変わられてしまった」

「キュ~……」


 慌てるロードスに向けてキングが声掛けした。肩の上ではボールも心配そうにしている。


「確かにね。そんな小さな女の子の姿になるなんて驚いちゃった」

「ま、僕は可愛いと思うけどな」


 ウィンもロードスの姿をマジマジと見ながら感想を述べた。ハスラーの口調は軽薄にも思えるがロードスが気落ちしないように褒めた形であり彼なりに気を使っているのだろう。


「確かに可愛らしい……あ、ご、ごめんなさい!」


 可愛いという点はアドレスも同意らしい。ただ相手が御神木だけあって失礼かと思ったのかすぐに謝っていた。


「構いませんよ。可愛いと言ってもらえて嬉しいです」


 ロードスはそう言ってニコリと微笑んだ。その笑顔にアドレスも照れたようにはにかむ。


「姿は変わってしまったがロードス様が無事で何よりだな」

「それは確かにそうね」


 キングが安堵の表情を浮かべた。ウィンもホッとしているようである。


「……それが無事とは言い切れないのです」

「それは、一体どういうことですかね? ハッ! まさかまだご気分が! これは失礼しましたすぐにでもお薬を!」

「い、いえそうではないのです! おかげさまで体調は大分よくなりました。ですが、私は大部分の力を失ってしまいました」


 ロードスが長老にそう答えた。その言葉にキングが厳しい表情を浮かべる。


「そうか……魔王の影響は相当に大きかったのだな」

「そうですね。ですがそれ以上の問題は私の力が弱まったことにより大魔王の封印が弱まったことです」


 真顔になったロードスが苦しげに語った。キングがうむ、と短く唸り。


「そういえばどこからか聞こえてきた声が封印がどうと言っていた。そのことと関係が?」

「はい。大魔王ルルブク――かつてこの世界を恐怖に陥れた存在です。しかし大魔王もかつての勇者の力で封印されました」


 ロードスが語りだす。それを聞いていたキングが深くうなずいた。


「勇者と言うと異世界から召喚されたという伝説の勇者だな」

「はい。その通りです」

「なるほどな。だけどその勇者の力でも倒すことは出来なかったんだな」

「はい。大魔王はそれほどの力を有しておりました。結局私を含めて四本の神樹の力を勇者様に託すことで大魔王を封印したのです。そして当時の勇者様はリスクを回避する為にと封印を四本の神樹に分散したのです」

「なるほどそうだったのか。しかし、それはつまりロードス様の封印が解かれただけでは完全には復活しないということかな?」


 キングがロードスに問いかける。


「はい。勇者は大魔王を完全に封印したのでその心配はないと思います。ただ……万が一にも他の三本の封印が解かれればいずれは」

「そうか……」


 ロードスの答えを聞きキングも渋い顔をした。長老、ウィン、アドレスの三人も同じような顔をしている。


「そう暗い顔をしないでください」


 そんな空気を吹き飛ばすようにロードスが明るく言った。


「たとえ力が弱まっても私は実はそこまで悲観していないのです。なぜなら貴方たちがいてくれるから……特にキング。私は貴方であれば大魔王の復活を阻止できるとそう思っているのです」

「キュー、キュー!」


 ウィンの肩に乗っていたボールも力強く鳴いていた。その様子を見て長老がむぅ、と唸り声を上げる。


「ロードス様……確かにキングの力は私も認めざるを得ないと思っております。しかし、それでもあの魔王ジャッジには通用していなかった」

「確かに現状はそうでしょう。しかし今は力が足りなくても貴方を支えてくれる者がたくさんいます。だからきっと大丈夫です」

「――そうだな。それに俺もこのままでいいとは思っていない。勇者様が残してくれた本にもあったことだ。例え今は敵わないと思える強敵がいたとしても努力と友情で乗り越えていけばいいと」

「その通りです。キング。そして貴方の努力は私が証明してみせます」

「フッ、心強いな。ありがとうロードス様――それでこれからのことだが」


 キングが決心したようにロードスに問いかける。その問いにロードスが頷いた。


「大体の事情は承知しております。長老、どうかこの物たちの為に新しい素材を提供して上げてください。私の体は燃えましたが恐らくは多少は役に立つ素材が残っているはず」

「い、いいのですか?」

「もちろんですよ。寧ろそれがなければこれからの戦いに備えられませんからね」

 

 ロードスの判断に一同は顔を見合わせて喜んだ。思いがけないところで話が大きくなってしまったがこれでとりあえずの目的は達成できたのである――

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