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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第54話 撞球

「おやおや、今日はまた新しいお友達かな?」

「館長。今日もお邪魔します」

「はは、うちの図書館が役立つならこんなにうれしいことはないよ」


 キングは治療院から図書館に場所を移した。ハスラーとウィンも一緒であり、館長はいつもどおりキング達を歓迎してくれた。


「それでキング。僕にあった面白い武術って何? 何?」


 席に付き、ハスラーが新しいおもちゃに期待する子どもの様な顔で食い付いてきた。


 それを微笑ましく思いながらもキングはボールに頼み一冊の本を出してもらう。


「これは、なんだい? 絵があるけど、字が読めないや」

「うんうん、私も最初戸惑ったわ!」


 ウィンが腰に手を当て、何故か自信満々に言い放つ。そしてキングがその本について説明した。


「それはブレイクハスラーという名称の本だ」

「え? 僕の名前が!」


 ハスラーが驚く。これはもちろん偶然だが、ハスラーはどうやら運命的な物を感じたようだ。


「その中には撞球(ビリヤード)という武術について記されている。文字はわからないかもしれないが、絵だけでも見ていけば、どんなものかわかるはずだ」

「なるほど。よし、だったら読んでみるよ!」


 そしてハスラーが本を手に取り中身を読み進めていった。


「キング、ところでこれってどんな内容なの?」

「うむ、これはだな」


 ウィンに聞かれたので読んでいるハスラーの邪魔にならない程度に声を顰めてウィンに教えてあげる。


 ブレイクハスラーは元々は少林寺で天才的な腕を持つ棍使いの少年が、嫉妬で闇討ちにあい記憶を失うも、路上ビリヤードを目にし自分の手に残された棍はきっとこのためにあったんだ! と勘違いし棍術を駆使してビリヤード界で活躍するという内容だった。


 もっとも途中から荒唐無稽な展開となり、キューが破壊された途端に対戦相手までもふっ飛ばされたり、命懸けの死のビリヤードが始まったりしたりといった展開になっていたわけだが。

 

 それ故か、やはりキングはこれを武術だと判断したわけだ。


「――ふぅ」


 そして、ハスラーがとりあえず最初の一冊、つまり一巻を読み終えたわけだが。


「どうだった?」

「――はは、すごいよこれ! 僕、読んでて何かこう、胸が熱くなったよ!」

「うむ、そうだろうそうだろう!」

「キュッ、キュッ~」

 

 キングが満足そうに頷いた。ウィンの時もそうだったが、自分が愛しハマった物を理解し喜んでくれるのは嬉しいものである。


「この技、覚えたい! キング! どうやったらこの撞球(ビリヤード)を使えるようになるんだ!」


 ハスラーはどうやらキングから読ませて貰った本、そうスポ根漫画の技に興味が湧いたようだ。それはハスラーの望む楽しいにも繋がったのだろう。


「そうだな。ボールなら先ずなんとかなる。ボール」

「キュッ!」


 キングがボールに目を向けると、ポンポンっと弾み、かと思えば分裂し色とりどりのビリヤードボールに変化した。


「おお、このスライムこんなことも出来るんだ」

「あぁ、ボールの特技の一つだ」

「キュッ、キュッ~」


 ボールがえっへんっと言った様子で得意がる。


「さて、このように球に関してはボールで完璧に再現出来る。故に問題はやはりキューになるか」

「キュ~?」

「いや、そのキューではない。撞球に大事なのは玉を突く為の棒状のキューだ」

「僕の槍じゃ駄目なのかい?」

「そうだな。試してみるか――」


 そしてキング達は館長にお礼を言って図書館を出る。


「またいつでもおいでよ」

「はい。また寄らせてもらいます」


 辞去し今度は冒険者ギルドに向かった。ダーテに話し練習場におりていく。


「ここには的があるからな。これで試してみよう。今は誰もいないし、ふむ、的の人形も六体あるな」


 そしてキングは人形を動かし、漫画で見たビリヤード台のポケットにあわせて配置した。


「よし、これでビリヤードのやり方で的に当てて見るんだ」

「うん? だけど本では台があったよね?」

「あぁ、そうか。まだエアビリヤード対決まで読んでないのか」

「エアビリヤード?」


 ハスラーが疑問混じりに反応する。ちなみにエアビリヤードとはブレイクハスラーで行われた試合の一つで、互いに足場の狭い崖の上に乗り、台のないところで行うビリヤード対決のことであった。六つの崖の上に的があり、それに当てていくとう勝負内容であり、そのために必要なのは空中でボールを突く技術であったのだ。


「うむ、こうするのだ」


 そしてキングはビリヤードボールの一つを手に取り、そして手首のスナップを利かせて投げていく。すると玉が空中で静止した。


「は? え? え? これって、あのスライムが止まってるのか?」

「違う。ボールには玉になった時には余計なことはせず玉のままでいて欲しいと伝えている」

「えっと、それならキング。どうしてこのボールは空中で止まってるの?」

「回転だ」

「「回転?」」


 ウィンとハスラーが小首をかしげたので、キングは更に説明を続ける。


「こう手首を上手く使って回転を加えることで、ボールを空中で止めることが出来るのさ」

「えっと、でも回転してるように見えないけど……」

「それは回転の速さで回転してないように見えてるだけだ。逆に言えばこれぐらいの回転を生み出せないと戦いでは役に立たない。さぁ、やってみよう」

「いやいやいきなりハードル高くない!?」


 ハスラーがツッコんだ。まさか玉を突く以前の問題とは思わなかったことだろう。


 とは言え、やると決めた以上ハスラーも諦めたくないようで、とにかく玉を空中で制止させようと頑張った。


「えっと、二人共何してるの?」

「一生懸命撞球というのを覚えようとしているんだよ」


 途中で様子を見に来たダーテが二人の様子に目を白黒させた。ウィンが教えてあげて一応理解はしたようだが。


「もっとだ! 手首をこうシャープに!」

「こ、こう?」

「違う! 空間を切り裂くぐらいの速度でボールに回転を加えるんだ!」

「思ったんだけど、それが出来るならもうそれだけで十分強い気が……」

「キュッ、キュ~……」


 ダーテが冷静に指摘するが、ハスラーはあくまで撞球を覚えたいのであった。故にもう意地である。


 だが、流石に一朝一夕で上手くいくものではない。結局その日だけではどうしようもなかったので、今日に限ってはキングの投げた玉を打つところから始めることにした。


「くっ、いずれ自分でもできるようになってやる」

「その粋だ。とは言え、先ずは打った感触もみてみないとな」

「あぁ、よし! いくぞ!」


 そしてハスラーが構えを取り、浮いているボールを槍で突く! が、ビリヤードボールは見当違いの方向に飛んでいった。


「くっ! もう一度! まだだ! もう一丁!」


 しかし、何度続けてもボールが狙い通り飛ぶことはなかった。それを見てうむ、とキングが頷き。


「やはり槍ではコントロールが上手くいかないな。ハスラーに適した理想のキューが必要だろう」


 そう断言するのだった。

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[良い点] ビリヤードで人が吹っ飛ぶとは…!?
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