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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第48話 再びオフサイドの街へ

「素材もこれでは使い物にならない。実に勿体ないな……」

「キュッ! キュッ! キュゥー!」


 マウンテンバッファローの無残な姿にキングは肩を落とし、ボールはピョンピョンしながら湯気を吹いてみせた。


 ヤンに向かって抗議しているようでもある。


「確かにね。これだけあっさり倒せるなら貴方ならもっと丁重に出来たんじゃないの?」

「襲ってくるモンスター相手に丁重になどやってられるか。全く呆れた連中だ」


 ヤンはそう言い残し馬車に戻っていった。言ってることはわからなくもないが、これが冒険者なら褒められた所業ではない。


 回収できる素材はしっかり回収するのが冒険者だ。そしてもっといえば食べられるモンスターであるなら倒した後しっかり食べてあげるのも冒険者の務めだとキングは考えている。


「価値観の違いというやつか。とは言えこのままというわけにはいかないな」


 ヤンの倒したモンスターの量は多い。少ない量なら他の動物の餌になるのを期待したりしても良いが、これだけ多いと放っておくとモンスターが湧く要因になりかねない。


 そもそも街道沿いで倒したモンスターを放置する行為は推奨されていないのだ。


「おい、早く乗れ。馬車が出れないだろう」

「ちょっとまってくれ。ボール頼めるか?」

「キュッ、キュッ~!」


 キングの意志を察したのかボールは散らばったマウンテンバッファローの死体を取り込んでいった。


 街道もあっという間に綺麗になり、これで他のモンスターを呼び寄せてしまうようなこともないだろう。


「やるわねボール」

「キュッキュ~」

 

 ウィンが頭を撫でるとボールが嬉しそうにぷるぷるした。


「待たせたな」

「全くだ。どうでもいいことに時間を取らせるな」


 瞼を閉じたままヤンが文句を言う。その横柄な態度にウィンがムッとした顔を見せた。


「ちょっと! そんな言い方はないでしょう! 貴方が後先考えずに倒したモンスターの死体を片付けようとしないから、ボールが回収してくれたんじゃない」

「キュッキュッ~」


 ヤンへウィンが言い返す。だがヤンは鼻を鳴らし閉じていた瞼の片側だけを開けて言い返した。


「ふん、あれだけのモンスターを俺が一人で倒したんだ。後片付けぐらいやってもらわんとな」

「一人でって見てろって言ったからじゃない。大体、キングなら貴方よりもっと上手く倒せたわ」


 腕を組み胸を張ってウィンが言う。彼女はキングの実力は認めているし、新しい道を示してくれようとしている彼に感謝もしている。


「そいつが? スライム程度を仲間にして喜んでいる程度の男がか。これはお笑い草だ。娘、中々面白い冗談だったぞ。アッハッハ!」


 ヤンが笑い飛ばすと、むぐぐぅ、とウィンが唸り肩を震えさせた。ボールも不機嫌そうだが、キングはやれやれ、と二人に声をかける。


「ここでこれ以上言い争っても仕方ない。そこの男がモンスターを倒してくれたのも事実だからな」

「どうやらそっちの男は良くわかっているようだな。身の程を知ることは大事だぞ」

「……話しているところ悪いが、そろそろ出てもいいかな」


 会話を聞いていた御者が全員に確認してきた。このまま邪魔しては悪いとキングは、済まないな、と口にし。


「もう出ても大丈夫だ」

「わかった。なら行くとしよう」


 そして馬車の動きが再開し、街に向かう。その後は特にこれと言ったトラブルもなく街に戻ることが出来た。


「戻ってきたわね! やっぱり慣れ親しんだ街はいいわ」

「キュッキュッ~♪」

 

 馬車から降りウィンが肺一杯に空気を吸い込んで久しぶりの街の様子を噛み締めた。ボールもポンポンっと飛び跳ねてはしゃいでいた。


「うむ、少しの間、離れていただけだが妙に懐かしく思えるな」


 キングも懐かしむような感想を述べる。さて、この後は一旦冒険者ギルドに向かう必要があるが。


「お前たち、ハスラーを見つけたら教えろよ。俺も後でギルドに向かうがな」

 

 それだけ言い残してヤンがどこかへ行った。


「全く本当勝手な奴ね。こっちは命令される筋合いじゃないっていうのに」

「キュー」


 ウィンが一人憤っていた。ボールも不機嫌だ。


「あいつにも事情がありそうだが、少々我が強そうではあるな」

「少々じゃなくて思いっきりね」

「はは、とにかく俺たちは俺たちのやることをしよう」


 正直言えばハスラーについても気になるが、これは二人の問題でもある。

 

 そして二人はその足で冒険者ギルドに向かう。


「はい、確かに依頼の品は受け取ったわ。流石ねキング。解体処理も完璧だったわ」


 受付ではダーテが応対してくれた。キングが戻って来たことを喜び、依頼の完了報告もスムーズに進む。


「そう言ってもらえると嬉しいな。特に久しぶりにダーテの声を聞くと安心できる」

「え? そ、そう?」


 頬を染め照れるダーテの様子にウィンが目を細めた。


「キュッ! キュッーー!」


 ウィンに強く抱きしめられ腕が本体にめり込むとボールが鳴き声を上げた。痛みはないと思うがウィンの様子の変化を敏感に感じ取ったのだろう。


「あ、ご、ごめんね」

「キュッ~……」

「どうかしたのか?」

「な、なんでもないわよ!」


 何故か不機嫌な様子のウィンに首を傾げるキングである。


「それでダーテ。実は俺たち準備ができ次第、今度はエルフの暮らすブローニュ大森林に向かおうと思っているんだ」

「え! エルフの里に? 何でまた――」


 報酬を受け取った後、キングが次の目的地をつげるとダーテが目を丸くさせ驚いていた。


 なのでキングがこれまでの事情を話して聞かせる。


「なるほどね。ウィンの魔法の精度が上がるなら願ったり叶ったりだけど、驚いたわ。今まで彼女、他のエルフのことも故郷のことも語ろうとしなかったんだもの」

「……色々とあったのよ。でも、キングのおかげで自分を見つめ直すいいきっかけになったわ」

「そう……キングはやっぱり自然と人助けが出来るのね」

「そんな大した物じゃないわ。ところでエルフの里に行く上で注意する点はあるか?」

「山ほどあるわ。そもそもエルフはあまり人間を好ましく思っていないのよ。それでも昔よりはある程度開けて来てるんだけど、それでも行く前に許可がいるわ。その手続きが済むのを待ってもらうけど、これが中々難しいのよね」


 スミスが言っていたことと一致する。やはりエルフは一筋縄ではいかないようだ。


「正直言って理由はウィンの名前が出せれば早い気もするんだけど」

「駄目よ。これは別に意地になっていっているんじゃないの。多分私の名前を出したほうがややこしくなるわ」

「どういうことなの?」

「……私は一度村を追放されてるのよ」


 ウィンの話を聞き、ダーテが嘆息する。


「そういうことなら仕方ないわね。他ならぬキングの頼みでもあるし、マスターと相談することにするわ」

「何から何まで済まないな」


 こうしてエルフの里に関してはギルドに任せる事となる。その後は後日の結果を待つこととし一旦ギルドを出ようとした二人だが。


「キングじゃないか! 久しぶりだね!」

 

 そこでバッタリハスラーと再会した。


「ハスラーじゃないか。確かに試験の時以来かな」

「え? この人がハスラー?」

「キュッー♪」


 ウィンがハスラーを確認しながら口にする。ボールがそれを認めるように跳ねてみせた。


「うん? こっちの子はエルフだね。へぇ、キングも隅に置けないな」

「はは、ウィンとは最近パーティーを組んだんだ」

「そうよハスラー。仲間なの」


 背後からダーテが釘を刺す用に言った。それ以上でもそれ以下でもないといいたげでも有る。


 こうしてハスラーとの再会を果たしたキングだったが。


「ようやく見つけたぞハスラー!」


 そこに、あの男の声が鳴り響く――

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久方ぶり投稿ありがとうございます。 [一言] 内容半分飛んでました。大好きな作品やったので再び読んでみます。
[良い点] おっと再開ありがとうございます、 だいぶ気になる所で終わってたので続いてくれるなら嬉しいです
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