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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第43話 戦闘とイメージ

 スミスにラケットの試作品を作成してもらうことになったキングとウィン。完成するまではスミスの工房で寝泊まりさせてもらえることとなった。


 そして2人はラケットが完成するまでの合間を利用して引き受けた依頼そこなしていくことにした。請けた依頼もこの周辺の山々で可能なものだけを集めている。


「でも、なんとなくついてきちゃったけど、今の私何の役にも立たないのよね……」

「キュ~?」


 ボールを抱きかかえキングの後ろをついて歩くウィンであったが、形の良い眉を落としどこか口惜しそうにしていた。

 

 確かに今回ラケットを作る目的はウィンの魔法が暴走しないようにという目的が大きい。逆に言えばラケットが完成しない限り魔法を行使しても暴走するのが落ちであり、そうなるとウィンは戦いでは力になれない。


「ふむ、確かに戦闘中、魔法が暴走するようなことがあれば大変なことになる。だが、何も戦うことだけが全てではないぞ」

「え? どういうこと?」

「ウィンはラケットが出来るまでは魔法は使えない。それは確かだろう。しかし、ラケットを扱った書物は読み込んだだろう?」

「そうね。ここにくるまでも暇をみては読んでいたし」


 確かにウィンは馬車の中でも熱心に本を読んでいた。


「ならば、たとえ自分が戦わなくても、俺が戦っている間、自分ならラケットを用いてどうするか? とイメージしておくのもいいと思うぞ」

「イメージ?」

「うむ、イメージトレーニングというものだ。これが意外と侮れないものでな。俺も実戦に至る前にはさんざんイメージトレーニングをしたものだ」

「へぇ~」


 ウィンが感心して頷いた。そういう手もあるのか、と自分も出来るだろうかと考えている様子でもあり。


「ウィンはあの本を読んで自分ならどうするか、とつかめてきているのではないか?」

「そう言われてみると、朧気だけどね」


 顎に指を添えつつウィンが答える。漫画に出てくる主人公と自分を重ねて考えることも多かったことだろう。


「ならはそれがはっきりと掴めるまでイメージトレーニングを続けるといい。戦闘は俺がこなすからそこは任せてくれ。ウィンはイメージすることに集中するんだ」

「でも、何か悪いわ」

「そんなことはないさ。どうしても気になるというならラケットが完成してからその分頑張ってくれてもいい。イメージしたとおりに必ずしも動けるというわけではないが、イメージをしっかりつけておくのとまるで何もしてないのでは雲泥の差だからな」


 キングもイメージと自分の動きが上手く重なるまでは時間が掛かったが、だがはっきりとしたイメージがあったからこそ実現できたとも言える。


「う~ん、そうねわかった! 私それやってみる!」

「キュッ! キュッ~」


 そう拳を握りしめて宣言すると、ボールがウィンの手の中でプルプルと震えた。その調子その調子と応援してくれているようでもあった。


「はぁ、それにしてもこいつ、本当可愛いわねねぇ、うりうり~」

「キュッキュッキュキュキュウ~」


 ウィンに撫で回されボールも気持ちよさそうである。そんな姿を微笑ましく思っていると正面に目的のモンスターがあらわれた。


 二本足で歩くイノシシといった様相でありボアゴンという名前のモンスターでもある。


「早速あらわれたぞ」


 するとボアゴンも気がついたようで鼻息を荒くし身構えた。


「わかった! イメージするわ!」


 するとボアゴンがキング達に向かって突撃してきた。それに応じるキングであり。


「うむ、ではいくぞ! ウォオオォオオオオオオ!」

「ブゴォオオォオオオオ!?」


 そしてキングはラグビーボールと化した友だちを抱えてタックルをかましながら直進したのだった。その圧倒的なフィジカルの差にボアゴンも軽々と吹き飛ばされてしまう。


「…………」

「倒し終わったが、どうだったかな?」


 ボアゴン以外にも目的のモンスターを見つけたので、あらかたふっとばしてから戻ってきたキングだったが、ウィンの肩は震えており。


「もう! こんなのじゃ何のイメージもわかないわ!」

「む、そ、そうか?」

「そうよ! そんな体当たりとか私無理だし――」

 

 ウィンは涙目になっていた。言われてみればタックルでぶっ飛ばすというやり方はウィンにイメージさせるには少し脳筋すぎる戦い方だったかもしれない。キングは反省した。


「次はもうすこし考えるとしよう」


 そしてキングは再び依頼のあった素材を得るためにモンスターを探してみる。するとロックリザードという岩のように硬い皮膚が特徴のモンスターを見つけた。


 何匹かで群れを形成しており、岩を食べている。まさに岩のような大蜥蜴といった姿であり、このロックリザードの皮が依頼の素材でもある。


 ロックリザードはまだキング達に気がついていないが、きがついたらすぐに攻撃を仕掛けてくることだろう。その硬い体を活かし回転して転がってきたり口から多くの岩を吐き出してきたりするのがロックリザードの戦い方であり特徴だ。


「では、次は少しでもイメージが出来そうなものを、うむ、そうだ」


 そして今度はボールにサッカーボールへ変化してもらい、地面に置いたあと足を振り上げた。先制攻撃を決めるつもりなのである。


「いくぞ、怒雷舞蹴弾(ドライブシュート)!」


 キングがシュートを放つ。蹴られたボールが唸りを上げ、ロックリザードの真上に向かって飛んでいく。


「え? 全然関係ないところにいっているような?」

「いや、これでいいんだ」


 すると蹴り上げたボールが高速で振動し、そしてバチバチと電撃が迸り始め――サッカーボールが落雷となりロックリザードの群れに降り注いだ。


「「「「「ギュギュギュギュイイィイイイイイ!」」」」」


 そしてロックリザードの群れは感電し倒れた。しばらくピクピクと痙攣したが後に動かなくなった。


 その光景にウィンは目を丸くさせるが。


「これならどうかな?」

「え? あ、う~ん、というかキングって魔法使いだったの?」

「ん? はは、違うさ。俺は魔力も殆どないしな。これはただの必殺シュートだ」

「そ、そうなんだ……」


 正直ウィンとしてはわかったんだかわかってないんだかとといった表情である。ただ、今の技に関しては色々と参考になることがあったのかもしれず。


「そうだ、雷ならもしかしたら、うん、あれで、そう、なら……」

  

 そしてウィンがぶつぶつと口にしながら思考の海に潜っていった。どうやら色々イメージが掴め始めたようだ。


 そしてその後もキングは狩りを続け、様々な球技を見せていく。ボールも張り切ってくれた。


 そして、あっという間に時は過ぎ、約束の日の朝、試作品が完成したとスミスが告げてくるのだった――

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