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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第42話 鉱山とドワーフの村へ

 途中、山賊に襲われたりはしたが、キングは無事、ウィンを連れてドワーフが暮らす村にやってきた。


「うわ~何この村、ゴホッ、何か煙いんですけど!」

「ははは、どうやらすっかり元通りのようだな」

「キュ~♪」


 ウィンは顔をしかめているが、キングは村のあちこちに存在する工房から煙が立ち昇っている姿を見て笑みを浮かべた。


 以前来たときは、常に鍛冶の音が止まないとされているにも関わらず、全く鉄を打つ音も聞こえなければ殆ど煙も上がっていなかった。鉱山に溢れたモンスターのせいで作業が中断されていたのだ。


 だがそれはキングの手によって解決された。その為今はあちらこちらの工房に設置された高炉の煙突から煙が排出されていた。


 これは鍛冶を行う工房では当たり前の光景であるが、何せドワーフだ。工房がそのまま居住スペースとなっている程なので村では一様に建物から煙が吐き出され続けている。ドワーフの村における一つの特徴だが、エルフにとってはあまり気分のいいものではないようだ。


「全く、途中から全く自然が感じられなくなるし、耳障りな音が鳴り続けているし、キングと一緒でなければ回れ右してとっとと引き返すところね」


 眉を顰めてウィンが言った。鉱山が集まる場所にこの村はあるわけだが、その分、周辺はほぼ岩山である。森と生きるエルフにとってはそれも気になるところなのだろう。そして金属音も苦手なようであり、エルフにとってみれば見事に不快な要素が揃ったというところか。


「ふむ、俺なんかはこの音を聞くと妙に心が躍るが、それが種族の違いというものか、それとも男女の差かな?」

「キュッキュッ!」


 顎をさすり首を傾げるキングだが、どうやらボールも嫌いではないらしくポンポンっと跳ね回っている。


「ふぅ、でも、仕方ないわね。魔法の為だもの。でも、煙だけでもなんとかしたいわ」

「ならすぐにでもスミスの工房に向かうとするか」


 キングはボールを方に乗せウィンと目的の工房へ向かった。途中ウィンが何度か咳き込んでいた。大丈夫か? と聞いてみたがあまり煙に慣れてないだけとの答えが返ってきた。


 とくに体に異常を来すようなことではないらしいが、この様子を見る限り、こんなことでも無い限りエルフがドワーフの村に近づくことなどないのだろう。とにかく工房にさえ入ってしまえば中の煙は換気される為、多少はマシだろう。


 そしてエルフと2人スミスの工房を訪れるキングであり、声をかけるとスミスがやってきた。


「スミス、元気かい?」

「ん? おお、キングじゃねぇか。あの騒動以来だなぁ。それで、あん時作ったゴンダーラは役に立ったかよ?」

「あぁ、ゴンダーラ先生には随分とお世話になったよ。それにこの防具や靴にも助かっている」


 キングはスミスに作成してもらったプロテクターや靴を示しながら感想を述べた。作ったスミスは嬉しそうにしているが。


「ねぇキング、ゴンダーラって何なの?」

「うん? おいおい、何でエルフがこんなところにいんだよ」

「何よ。エルフがいたら悪いの?」

「悪いな。鉄嫌いのエルフにおかしなイチャモンを付けられても困る」


 ウィンはゴンダーラがなんだかわからず、興味が出たようだ。そして彼女が話しかけたことでスミスの目もウィンに向けられ、かと思えば早速険悪なムードになった。


「2人とも落ち着いてくれ。スミス、彼女はウィンといって今は俺とパーティーを組んでいる仲間なんだ」

「仲間? お前エルフなんかを仲間にしたのかよ?」

「なんかって何よ!」

「ふん、ひ弱なくせにプライドだけは高いエルフなんかと一緒にいても、気苦労が耐えないだろうと思って心配してるんだよ」

「なんですって! ちょっとキング、何なのよこのドワーフ!」

「ま、まぁまぁ」

「キュッ! キュ~!」


 いがみ合う2人をキングとボールは何とかなだめようとする。なかなかに苦労したが、事情を説明して落ち着かせた。


「このドワーフが腕利きねぇ。本当かしら?」

「チッ、小さいくせに小生意気なエルフだぜ」

「自分だってチビのくせに何言ってんのよ!」

「うるせぇ、その代わりこっちは鍛え上げた筋肉で補ってんだよ一緒にすんな」

「そんなのただの脳筋ってだけでしょ!」

「何だと!」

「何よ!」

「はいはい、2人ともそこまでだ」

「キュ~……」


 しかしまた罵り合う。放っておくと話が進まないのでキングが介入しいざこざを止めた。ボールは既に呆れ顔である。


「全く、キングの頼みじゃなきゃエルフの依頼なんて絶対受けないぜ」

「こっちだってキングに勧められなかったらこないわよ。全く」


 ぶつくさ文句を言い合う2人だが、とにかくキングの頼みということでスミスは引き受けてくれそうだ。


「でも、ドワーフに杖なんて作れるの?」

「ふん、頼まれれば杖でも城でもなんでも作ってやるよ。ただ、確かに専門外ではあるが俺でいいのか?」

「問題ない。先ずこれを見てくれ」


 そしてキングは件の漫画を取り出し、スミスに該当頁を見せた。そこで使われているラケットが欲しいのだと伝える。ついでに予算も聞いてみた。


 一応町で依頼とついでに解決した案件のおかげでかなりの報酬にはなったから足りると考えてはいる。ちなみに例によってウィンはお金が出来次第返すということで話はついている。


「……なるほどな。お前が俺を頼った意味がよくわかったぜ。この構造、ただの杖じゃねぇな。特にこの網になってる部分は俺たちドワーフでないと完璧なもんはつくれんだろう」


 漫画に載っているラケットを食い入るように見た後、スミスが唸るように口にした。その作りに随分と感心し興味を示したようだ。そしてどこか楽しそうでもある。これまで作成したこともないような物を知り、自らが作ることが出来る。ドワーフにとってこんな喜ばしいことはない。


「出来そうかな?」

「……そうだな。とりあえず試作品を作らせてくれ。予算はそれを見てもらってからだな。明日には完成させておくからよ」

「え? そんなに早く?」

「は、当然だろう。俺は長寿だからって安穏と暮らす呑気なエルフとは違うんだよ」

「ひ、一言多いわねあんた」

「とにかく、やってみるぜ。明日の朝には作っておくが、お前ら今夜はどうすんだ? 村には留まるだろ?」


 スミスが問う。確かに1日程度ならその方が良いだろう。


「そうだな、ところでここに宿なんてあったかな?」

「だったらうちに泊まってけ。エルフに部屋を貸すのは癪だが、ま、お前の頼みなら仕方ない」

「ちょっと勝手に決めないでよ。大体なんでドワーフの部屋なんかに」

「んなこといったらここにはドワーフしかいねぇぞ。どこで寝る気だ? 外か?」

「あ、う……」

「ウィン、ここは好意に甘えさせて貰ってはどうかな?」

「キュッ、キュ~」

「し、仕方ないわね!」


 プイッと背を向けて不承不承といった声を上げた。とにかく納得はしてくれたようだ。


「さて、俺は早速作業に入るが、お前らはどうする?」

「俺たちはギルドで請けていた依頼もあるから、少し出てくるよ。ウィンはどうする?」

「行くに決まってるでしょ。こんな鉄臭くてやかましい場所でドワーフと一緒なんてゾッとしないし御免こうむるわ」

「それはこっちのセリフだ。出るならこのじゃじゃ馬エルフも一緒に頼むぜ。こんなのが一緒だと仕事の邪魔だ」

「はは……」

「キュ~……」


 スミスの発言に、うぅうう! と歯牙をむき出しに唸るウィンである。やはりドワーフとは反りが合わないようであった――

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