第40話 いざドワーフの住む山へ
※第39話にキングが昇格した文を追記しました。そのためこの話からE級となっております。
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話が決まったので、キングはウィンと一緒に、スミスが工房を構える山地へと向かうこととなった。ウィンと一緒であることと山地までは距離がある為、馬車に頼ることとなる。
1日で辿り着く場所でもないので途中で宿場を挟むこととなった。夕食は宿で摂ることとなったがそこでウィンが聞いてきた。
「ところで、聞いていなかったけどドワーフに一体何をお願いするつもりなの?」
「うむ、【ラケット】の作成をお願いしようと思ってな」
「ラケット?」
「キュ~」
ボールは現在、ウィンの手の中にいて、優しく撫でられることで気持ちよさそうにしていた。一方ウィンは頭に疑問符を浮かべていたが、キングが件の本を開きテニスをしているコマを指差しながら告げる。
「これだ。この中で扱われているこれがラケットだ」
「あ、その杖がラケットという名前なのね!」
「杖?」
「杖でしょ? 魔法を扱うのに使うんだから」
「う~む……」
どうやらウィンは作中のラケットを杖と思い込んでいるようだ。確かに魔法を制御できて手にして扱い、振り回すと言えば杖という方がウィンにとってはしっくり来るのかも知れない。
「まぁ、杖、みたいなものかな?」
「キュ~?」
「そうよね。ラケットという杖なのね!」
キングとしても否定すべきか迷うところだった。キングにとってスポ根漫画の球技は戦闘術であり武術と同じ括りなのである。故に魔法へ活かせるなら杖という考えも出来るか、と妙に納得してしまったのであった。
「でもドワーフに杖なんて作れるの? あいつらなんて鉄をハンマーで打って剣とか鎧を作ってれば満足だって連中でしょ? でも杖は畑違いじゃないかしら?」
ウィンが首を傾げた。確かにドワーフが杖を作ったという話は聞かない。杖は基本魔法使いの為にある装備であり、武器としてというよりは魔法の効果をあげたりといった意味合いで持つものだ。
「このラケットは作りが色々変わっているからな。ドワーフの力は間違いなく必要になる」
「ふ~ん、そういうものなのね」
「キュ~……」
「ふむ、しかしボールはウィンにも随分と打ち解けたようだな。ボールもウトウトし始めたぞ」
「あら、本当ね」
ウィンの優しい手付きで撫でられたのが気持ちよかったのか、ボールがポヨンポヨンっと揺れ動き眠そうなのがわかった。
「しかし、まるで母の手で眠る赤子のようだな」
「そうね、て、赤子、え? それってキングとわ――」
すると何故かウィンの顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「うん? どうしたんだ? 顔が赤いぞ?」
「な、なんでもないわよ馬鹿!」
「む、そ、そうか?」
ウィンに怒鳴られ、わけがわからなく戸惑うキングである。思えば突如怒り出すことはこれまでも何度かあったがキングにはそのわけは理解出来なかった。
とにかく、ボールも眠そうなので2人は食事を終え部屋に戻り休んだ。そして次の日、馬車に揺られ目的地へ向かうわけだが。
「参ったね、こっから先は客はあんたら2人だけのようだ」
ある地点で乗客が降りたところで馬車を操る御者が心配そうに言った。この時点で馬車に残ったのはキングとウィンだけであった。故に心配なのかも知れない。
「何か問題があったかな?」
「この先は結構危険なんだ。モンスターともよく出くわす」
「あら、それなら問題ないじゃない。私たちは冒険者よ」
「それは乗る時に教えて貰っているが、あんたらE級なんだろ? しかも2人だとちょっと不安なんだよな」
ここへ来るまでには他にも冒険者はいた。だが、途中ではこれといったトラブルが無くキングも含めて出番がなかった。そのため2人の実力がわからず御者は不安に思っているのだろうが。
「大丈夫よ。確かにE級だけど、私たちは強いから」
「そうなのかい? ふむ、なら走らせるけど危ないと思ったら引き帰らせてもらうよ」
「それで構わない。頼む」
「あいよ」
「キュ~」
そして馬車は再び動き出した。キングの目指している山地まではあと2、3時間でつくかなといったところだが。
「グォオオォオォオオォオ!」
「ギャーー出たぁあああ! バトルレオだぁあああ!」
森の街道を走っていた御者が叫び馬車を止めた。進行方向上に飛び出してきたのは大型の獅子といった姿のモンスターだった。レベルは25でC級程度の冒険者が相手するのが妥当とされる。
「駄目だ、引き返すぞ! あんたらじゃ勝てない」
「待つんだ。このまま引き返したりしてもあれには追いつかれるし後ろから食われるだけだぞ」
「ヒッ、だったらどうすれば!」
「問題ない俺がいこう」
「は? な、何言ってんだ! 相手はあのバトルレオだぞ! C級クラスの冒険者でないととても敵わないぞ!」
「どうどう、大丈夫だから大船に乗った氣でいなさいな」
狼狽えている御者をウィンが宥めた。キングの戦い方を知っているウィンには全く慌てている様子がなく。
「フンッ!」
「ギャンっ!」
「一撃で倒したぁああああああああ!」
そしてウィンの予想通り勝負は一瞬で片がついた。サッカーボールに変化したボールをシュートし、バトルレオは一撃で仕留められた。その後はテキパキと解体し素材を得る。
「全く驚いたよ。あんた本当にE級なのかい?」
「うむ、最近復帰したのだ」
「復帰なのかい。いやしかし大したもんだ」
キングの強さに感心し、すっかり安心した御者はこれまでの不安を一変させ、軽快に馬車を走らせた。
その後も何体かのモンスターと遭遇したがキングが危なげなく倒し――そして目的地の山の麓到着し馬車を降りる2人であり。
「しかし、こんな山近くで降りるのかい?」
「うむ、ドワーフに会いに行くのだ」
「あぁなるほどな。しかしそこまで行くのも結構大変そうだな。まぁあんたら強いから大丈夫だろうけど、ただ山賊には気をつけるんだな」
「え? 山賊が出るの?」
「あぁ、最近住み着いたらしくてな。素材を集めに来たりモンスターを狩りに来た冒険者を狙うらしい。だからせいぜい気をつけてな」
「あぁ、ありがとう感謝する」
そして2人を下ろした馬車はそのまま去っていった。
「でも、あの馬車は大丈夫なのかしら?」
「あの方向へ向かえば村まではそこまでは離れてないんだ。あっちはモンスターもあまり出ないしな」
「そういうことなのね」
納得したウィンと一緒にキングは山を登り始める。ドワーフの職人が暮らす集落までの道のりはかなり険しい。ドワーフは中腹より上の岩山が多くなる地帯で暮らしていて鉱山もその付近に存在しているのだ。
「ウィン、大丈夫か?」
「こ、これぐらい、へ、平気よ……」
最初は元気いっぱいだったウィンだが、途中から息も絶え絶えでとても平気そうには見えなかった。ウィンにはやはり戦士のような体力はないのだろう。
「少し休むとしよう」
「キュッキュッ」
「うぅ、情けないわ。魔法が使えたら風の精霊でなんとかするのに……」
どうやら風の精霊を上手く扱えれば山道でも随分と楽になるようだ。だが、今はまだ暴走してしまう危険性が高い。本人もそれは既に自覚しているので申し訳ないと思いながらも休憩する提案に乗った。
途中でもぎ取った果実などを食し一休みする2人とボールであるが。
「おいおいエルフがいるぜ」
「こりゃラッキーだなエルフは高く売れる」
突如休んでいた2人を妙な連中が取り囲んできたのだった――
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