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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第19話 冒険者復帰への試験

前回のあらすじ

僕にいい考えある!


※シュモクザメ様から拙作になんとレビューを頂きました!すごく嬉しくて思わずドリブルして駆け出したくなりました!本当にありがとうございます!

 ハスラーの提案にキングは驚き、マラドナは目を瞬かせていた。ハスラーの言っている意味を飲み込むのに少し時間がかかったというところだろう。


「ねぇマスターいい手だと思わない? ほら、僕はその人とレベルで見てもそう変わらないし、適正テストを行えるのはC級以上の冒険者と決まっている。僕以外にはありえないでしょう」

「……なるほど。確かに言われてみればそうだな」

「そ、そんな、おかしいですよそんなの!」


 マラドナはハスラーの提案に興味を示し始めていた。適性テスト――冒険者として登録するのは基本誰でも可能だ。しかしギルドとしては冒険者の資質をある程度確かめておく必要がある。そのためFランクからEに上がる際に一度は受けることとなるのが模擬戦による適性テストだ。


 ハスラーはつまりキングにこれと同じことをやらせようというのだ。尤も本来の適性テストは結果で冒険者をすぐに辞めさせられるようなものではない。


 しかし、今回の条件だとキングはハスラー相手に良い結果を出さなければ冒険者としての復帰は諦めざるを得なくなるだろう。


 ダーテが難色を示しているのもそれが関係しているのかも知れない。


「よし、ならキングとハスラー、二人で地下に下りてこい。そこでハスラーと模擬戦をしてもらう。キングはそれでハスラーに勝つことが出来れば復帰を認めなくもない」

「な! 勝つことが条件だなんてありえません!」

「何故だ? 俺は十分合理的だと思うぞ」

「キングさん、こんな話に乗ることないです。だいたいハスラーくんはこのギルドでも期待の新星と呼ばれるほど……キングさんの腕は信じてますが、レベル差もありますし、こんな条件の悪い提案受ける必要がないです」

「だが、その試験を合格できなければ冒険者として復帰できないのだろう?」

「あぁそうだ」

「それは違います! 確かにうちでは厳しいかも知れません……私も出来ればここから復帰して欲しい。でもここまでされるぐらいならうちにこだわる必要ないです。別の町に行ってそこで登録しなおせば」

「おいダーテ! それはお前言っちゃいけないことだぞ? お前はあくまでうちの受付嬢だってことを忘れるな!」

「だったら今すぐこんなギルド辞めます!」

「な!」


 マラドナが絶句した。まさかダーテにここまでの決意があるとは思わなかったのだろう。


「ありがとうダーテ。だが、俺はこの提案を受ける」

「え! でも、どうして。ハスラーくんとはレベル差だってあるんですよ?」

「それでも、俺はこの町から再出発すると決めたんだ。それにここで逃げているようではとても冒険者としてやっていけない」

「キュッ! キュ~!」

「キングさん……」


 ダーテが不安そうに呟く。しかしキングの決意にボールはどこか誇らしげであった。


「決まりだな。それなら地下の訓練場に向かうぞ」


 そしてキング達は階段を使って地下へ向かった。地下の訓練場には魔法や矢の練習に使う的や木偶が置かれている。


 そして模擬戦を行うためのスペースもしっかり確保されていた。広さ的にはキングが読んでいたスポ根漫画の内、バスケットコート程度あると思われた。


 一対一で戦うには十分な広さと言えるだろう。パーティー戦であっても可能と思われる。


「あのおっさん元冒険者だって?」

「あぁ、何かやらかして追放されていたらしいぜ」

「え? それで何で模擬戦するんだ?」

「冒険者として復帰出来るかを賭けてるんだと」

「追放されててもそんなの出来るのね」

「馬鹿、最初から受からせる気がないんだよ。相手はあのハスラーだぜ?」

「確かにな。うちに来た時には既にBランクでレベルもあの年でやたら高いしな」

「あんなおっさんに勝てるとはとても思えないぜ」


 訓練場には何人かの冒険者も下りてきていた。受付での彼らのやり取りを聞いていた冒険者たちだ。どうやら模擬戦と聞いて興味を持ったらしい。


 ただ、ほとんどの冒険者はキングには関心がなく、ハスラーがどんな戦い方をするのかに興味があるようだ。中には賭けまで始めているのがいるが。


「全く失礼しちゃいますね。まるでキングさんが負けるのが決まってるみたいに」

「それは仕方ねぇだろう。キングは1年のブランクがある上、相手は今話題な期待の星だ」


 ダーテはぷりぷりとご機嫌斜めだが、マラドナは冒険者たちの評価を妥当だと思っているようだ。


「キングに賭けるやついねぇのかよ。これじゃあ賭けが成立しねぇぜ」

「だったら私が賭けます! キングさんにこれ全部!」

「お、いいねダーテちゃん。それでこそギルド一の受付嬢!」

「おいおい……大丈夫かよ」


 キングの不人気ぶりに納得がいかなかったのかダーテが賭けに参加し、1ヶ月の給金に値する金額を賭けてしまった。その様子にマラドナはやれやれと頭を擦った。


「わりと盛り上がってきたね。ところで僕がその人と模擬戦するからには、当然試験官扱いで報酬をもらえるんだよね?」


 マラドナに向けてハスラーが声を上げた。どうやら報酬の確認のようだ。確かにこういった試験を行う場合、試験官に選ばれた冒険者には報酬が支払われる。


「……全く自分から言っておきながら抜け目のない奴だな。わかったそれ相応の金額を支払おう」

「う~ん、でも今回は結構特殊だし、もっと別な形の報酬がいいかな」

「別な形だと?」


 マラドナが眉をひそめた。ここまで来て一体何を言い出す気なのかといった様相だ。


「うん、そうだ。お金はいらないからさ、ダーテちゃんと1日デートさせてよ。それで僕も頑張れるし」

「「「「「な、なんだとぉおおお!」」」」」


 見物に来ていた冒険者達が声を揃え叫んだ。ダーテは人気のある受付嬢だ。流石に聞き捨てならないといったところなのだろう。


「どうかな?」

「どう、と言われてもなぁ」

「何を言ってるんですか! そんなの駄目ですよ!」


 頭を擦り困った顔を見せるマラドナだが、文句を言ったのは勝手に報酬にされそうになったダーテである。


「ハスラーくんも、そんな冗談やめてください!」

「冗談じゃないよ。でも、そうだな。これじゃああまりに一方的だよね。よし、ならあのおっさん冒険者に僕が勝てたらデート。これでどう?」

「何か妙な話になってるな……」

「キュ~」

 

 ハスラーのやり取りを聞きながらキングがポリポリと顎を掻いた。ボールは割と呑気に床でコロコロと転がっている。


「こいつが納得してないからなぁ」

「えぇ~でも約束してくれないと、気合いはいらないし、本来の力が発揮できないかもなぁ」

「何?」

「それに僕が負けないとダーテちゃん、賭けで負けちゃうもんね。それを考えると、心苦しいなぁ」

「……わかった。お前が勝ったらダーテとのデートを認めよう」

「そうこなくちゃ!」

「ちょ、マスター!」


 ハスラーの態度を見て、本当に手加減されたらたまらないとマラドナは許諾してしまった。勿論ダーテからすれば溜まったものではない。


「そんなこと勝手に決めないでください!」

「別にいいだろう。デートの一つや二つ減るもんじゃあるまいし」

「そういう問題じゃないんです!」

「うるさいなお前は。大体キングが勝てば問題ない話だろうが。お前はキングを信じてるんだろう?」

「え? そ、それはまぁ……」

「なら問題ないな。よし、準備しろ」

「う、うううぅうう!」


 キングを引き合いに出され、ダーテはそれ以上何も言えなくなり唸り声を上げるだけであった。ハスラーはご機嫌な足取りでキングと対峙する。


「へへ、これでもう負けられなくなったよ。あんたも運が無いね」

「ふむ、どうやら私の責任も重大なようだ。賭けにしても報酬にしても、負けるわけにはいかなくなったな」

「へぇ~言うじゃん」


 二人は八メートル程度の距離をおいて対峙した。それを祈るように見守るダーテ。そして冒険者の中にはキングを応援するものも現れていた。中にはハスラーからキングに乗り換えて賭けるのも現れた程である。


「悪いけど、手加減無しでいかせてもらうよ」


 ハスラーが背負っていた槍を手に取り、構えをとった。全長はニメートル程度、刃の根本が羽のように左右に広がっているタイプの槍である。


 それをゆらゆらと動かしながらジリジリと距離を詰めてきた。一方でキングは先ずは様子見であり、ボールも肩の上に乗っている。


「そのスライムもいるってことは協力して戦うのかな?」

「そうだな。ボールは私の大事なパートナーでもある」

「ふ~ん、でもスライムなんかに何が出来るのかな!」


 そしてハスラーが大きく踏み込み、先手を取り攻撃してきた――

第19話 冒険者復帰への試験 終

次回第20話予告

若き新星の少年ハスラーと戦うこととなったキング、ハスラーの怒涛の槍さばきに驚く冒険者達、しかしその時ついにキングのあの球技が炸裂!床を打つボールの音が鳴り響き球技星が西の空に浮かぶ時、熱き友の心の叫びがキングのハートに火をつけた!先生俺、球技がしたいです!

待て次回第20話!



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