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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第18話 認めないギルドマスター

前回のあらすじ

若い冒険者にからまれた。

「全く、久しぶりに再会したと思ったらもう揉め事かキング?」

「いえ、俺は別に。彼とは待っている間少し話しをしていただけです」

「キュッキュッ!」


 キングにとっても久々に話すこととなるマラドナだったが、あまり歓迎されていないようだった。ハスラーとのことにしても、何か問題があるようならすぐにでも追い出されそうな剣呑な空気を感じる。


 そしてマラドナはハスラーに、本当か? と確認するような視線を送るが。


「そこのおじさんの言うとおりだよ。僕もスライムを連れてる冒険者に興味が湧いたからちょっと色々質問してたんだ」


 そう言ってハスラーが肩をすくめた。質問と言ってもどれもがキングを小馬鹿にする用なものであったが、キング自身そこまで気にしていないのでそれ以上何を言うこともない。


「……ま、お前がそういうならな。それで本題だが……キング、お前本気なのか? 冒険者として復帰するって?」

「あぁ。前はマスターに言われて辞める決意をしたが、恥ずかしながらやはり自分にはどうしても冒険者としての生き方以外考えられなくてね――それでさっきまでダーテに相談に乗ってもらっていたんだ」

「はい。それで話を聞いて、キングさんなら復帰しても十分冒険者として活躍できると判断しました」

「たく、お前は……」


 ダーテが自信満々に言い放つ。横目でその姿を確認しているマラドナは呆れ顔だ。一方ハスラーは眉根を寄せ、どことなく不機嫌そうに思える。


「言っておくがこいつは妙にお前に入れ込んでるところがあるから、判断材料にはならねぇからな」

「な! い、入れ込んでるってなんですか! 私は客観的に事実を述べているだけです!」

 

 マラドナが指をさして突っ込むように言った。ダーテは顔を赤くさせて弁解めいたことを口にしている。


「とにかくだ、確かに普通に辞めたなら、復帰は認められる。だが忘れるなよ。キング、お前は今回追放されたんだ。普通に辞めたのとはそもそも条件が違うんだよ」

「……それは、重々承知です」

「キュ~……」


 神妙な面持ちでキングが答えた。その重たい空気を感じ取ったのかボールの鳴き声にも力がない。


「てか、何でスライムなんだ? 何かこいつが持ってきた書面にも書いてたが、テイムしたわけじゃないんだろう?」

「ボールは俺を慕って付いてきてくれた。今となっては俺の大事な友だちでありかけがえのパートナーだ」

「パートナーねぇ。だけどなスライムを連れてきたぐらいで復帰できると思ったら甘いぞ」

「ふ~ん、よくわからないけどあんたギルドを追放されてたんだ。何? もしかして何か罪でもおかしちゃった?」


 キングとマラドナの会話にハスラーが首を突っ込んでくる。なんとも興味深そうな顔をしていた。


「キングさんはそんなことしません! あれはマスターが勝手な判断で理不尽に追放を言い渡しただけです」

「そうなの?」

「くっ、こいつはキングのことになるとちょっと頭がアレなんだよ」

「酷い! 私は間違ったことなんていってません!」


 マラドナの言い草に、ダーテが怒りを顕にした。だが、特に気にする様子も見せず。


「キングはな、成長特性が超早熟なんだ。だから追放を言い渡した時には既にレベルが大分下がっていた」

「つまり弱くなっていたから追放したってこと?」

「そうじゃない。こいつはレベルが下がった影響でパーティーから三回追放されていたんだ。しかも三回目は組んでいたパーティーを危険な目に合わせた。だから追放処分とした」

「だから最後のはキングさんは悪くないと何度も言ってるじゃないですか」

「それはお前の言い分ってだけだ。それにそのことはこいつが認めたことだ」

「でも、今は復帰を願っています。きっとあの時のことだって納得していないはず」

「いやダーテ、それに関しては俺も悪いと思っている。だから、いいんだ」


 ダーテはキングを復帰させようと必死になってくれている。それはありがたいがあの時のことは確かにキングが納得したことだ。今更とやかくいうつもりはない。


「……何かダーテさん、随分とこいつをかばうんだね」

「ハスラーくん、キングさんは追放されたとは言え貴方の先輩なのだから、そういう呼び方は良くないと思いますよ」


 人差し指を立て子どもに注意するように言い聞かせるダーテ。それに苦笑するハスラーだが。


「でも、レベルが下がったと言っても今レベル32なんでしょ? それならまぁやってはいけるんじゃない?」

「……32? 何のことだ?」

「だから、この人のレベルだよ。さっき聞いたら確かにそう言っていた。僕より年は大分いってるけど同じ32なんだよね」

「待て待て待て! 馬鹿言っちゃいけねぇよ! ありえん、確かにダーテの報告でレベルの減少は収まり、最近はレベルが上ってきてるようだとあったが、それにしたって32なんて……」


 そしてマラドナはキングに問うような目を向けてくる。それを察したキングは一度頷き。


「それは本当だ。まだまだ全盛期には及ばないが、それでもレベル32までは上がることが出来た」

「おい! 誰か水晶もってこい!」


 マラドナが怒鳴った。ギルドには相手のレベルを測る水晶がある。経験紙と違って使い捨てでもない。


 そして職員の一人が、持ってきた水晶をカウンターに置いた。


「一応聞いておくが嘘じゃねぇんだろな? もし嘘だったら今のうちに言っておいたほうがいいぞ?」

「いや、間違いはない。自分でも経験紙で確認しているからな」

「キュ~キュ~」


 ボールもプルプルと震えて本当だとアピールした。


「とても信じられないぜ。とにかく手をおいてみろ」


 訝しげな目をしたマラドナに促されキングは水晶に手を置いた。

 ハスラーやダーテ、そしてマラドナの視線が水晶に集まる。すると――水晶に『35』という数字が浮かび上がった。


「な、35だと……」

「ふむ、驚いたな。確かに最後にレベルを調べてから少しは経っているが」

「凄いですよ! これで上がっているのは証明されましたし、このレベルならB級からだってスタートできます!」


 胸の前で両手を握りしめダーテが喜んだ。一方でマラドナは両腕を胸の前で組んで一人唸っている。


「……ふ~ん35ね。ねぇ、僕も水晶で調べてみていい?」

「ハスラーくんも?」

「うん、僕もしばらく測ってなかったからさ」


 そしてハスラーが水晶に手を重ねるが。


「あ、凄いレベル38です」


 水晶に浮かび上がった数字を見てダーテが感嘆の声を漏らした。その言葉に、ふふんっとハスラーは満足気に瞼を閉じた後、得意げにキングを見やり。


「何かごめんね。折角僕より高いレベルに達したと思ったら、すぐに僕のほうが追い抜いちゃって。おじさんの方が歳上なのにね」


 嫌味混じりにそう言った。自分の方が上だと証明したいが為にレベルを確認したのだろうが、かなり負けん気の強そうな少年である。


「いや本当に大したもんだね。まだ若いのにレベル38とは」

「……ハスラーの成長特性は加重平均型だからな。お前の超早熟より更にレアとされるもんだ」


 加重平均型……平均型とは生涯を通してレベルの上がり方が平均的な動きを見せるタイプであり、世界で最も多いタイプとされている。だが加重平均型はレベルが上がる毎にそのレベルの分だけ成長率が上乗せされていく、つまり結果的にレベルが上がれば上がるほどより早く成長するようになる、それがハスラーの成長特性である。


 その上、加重平均型はレベル上昇後の身体能力の上がり方が大きく、通常の五割増しぐらいになるとされている強力な特性なのである。


「まぁ、ハスラーのことはとりあえず置いておくとしてもキング、お前のこのレベル……正直未だに信じられん」

「そんな、水晶がこう示しているのだから間違いないですよ」

「……たしかにな。故障かとも思ったがハスラーの方は問題なさそうだしな……」

「そういうことです。でも、これで今度こそ納得して貰えましたね? 復帰も問題ないはずです」

「……いや、駄目だ」


 キングのレベルを取り上げて、冒険者への復帰を求めるダーテだが、それでもマラドナは首を縦には振らなかった。


「これでも駄目なのか?」

「キュッ! キュッ!」

「信じられません! もしかしてマスターは意固地になってるだけでは?」


 キングが問うように口にし、ボールは納得いってないのか縦にブルブル震えている。勿論ダーテも不満を顕にしていた。


「……俺はどうしても納得出来ないのさ。それに確かにレベルがまた上がったようだがそれがなおさら不気味に思える。キングお前、実は体に異常があったりするんじゃないのか?」

「いえ、そんなことはないです。むしろ今の自分は闘志(ガッツ)が溢れていて絶好調です」

「そうは言ってもな……」

「だったら僕にいい考えがあるよ」

 

 中々キングの復帰を認めようとしないマラドナであったが、するとハスラーが口を挟み、マラドナの興味も彼に移った。


「いい考えだって? 一体なんだ?」

「ようはマスターは今のこの人の腕に不安があるわけでしょ? それなら再び冒険者としてやれるかテストしてみたらいい。だから、僕にこの人と模擬戦させてよ」

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