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スポ根マンガを参考に球技を極めたら最強の武術だと勘違いされた!~魔球と必殺シュートでドラゴンや魔王もふっ飛ばす!~  作者: 空地 大乃
第2章 球技を扱う冒険者編

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第16話 隣の視線

前回のあらすじ

冒険者復帰のためにギルドへ!

「じーーーーーー」


 どうにもキングは隣からの視線が気になる。

 一瞥するにまだ若い冒険者のようだ。銀髪のツンツンとした髪が特徴な少年でもある。


 そんな彼が吊り上がり気味の瞳を更に鋭くさせ横目でキングを見てきているが、とりあえずはダーテの話に集中することにした。


「――一度は冒険者を辞めたもののまた復帰するという話は全くないわけではないのです。なので復帰する場合はこの書面に記入して頂き――」


 ダーテは親身になってキングの話を聞き、そして冒険者を復帰する方法を教えてくれて書類も用意してくれた。


 なんともありがたい話である。ちなみに復帰に至っては過去の功績もある程度考慮されるようである。


「ですので冒険者としてやりなおすのはそれほど難しい話では」

「キュ~キュ~」


 ダーテの視線がふとカウンターの上に注がれた。そこにはキングの肩から飛び移ったボールが乗っていて、彼女が広げた書類を興味深そうに見ていた。


「ボール、邪魔しちゃ駄目だぞ」

「キュッ?」

「はは、大丈夫ですよ。それにしても、このスライム、ボールちゃんというのですか? 一体どうされたのですか? テイムの魔法を覚えたとか?」


 どうやらダーテはボールの事が気になってはいたようだ。


「あぁ、山籠りしている途中、モンスターに襲われているのを見つけてね。放っておけなくて助けたのだが、それをきっかけに懐かれたのさ。だからテイムではないのだけど今は仲良くやらせてもらっている」

「へぇ~キングさん山籠りしていたんですね。だからかな?」


 ダーテが上から下までキングの姿をマジマジと眺め。


「何かより逞しくなった気がします」

「はは、そう言われたら修行した甲斐があったと思えるね」


 温厚な笑みを浮かべる。カウンターの上ではボールが丸くなってコロコロと転がっていた。


「あ、あの! 触ってみてもいいですか?」

「あぁ、別に構わない」

「キュッ!」


 ボールもいいよ! と言っているようであり。それじゃあ、とダーテがキングの胸板を触ってきた。


「わぁ~やっぱり凄く鍛え上げられてますね」

「……あぁ、そのなんだ。触ってみるというのはそっちだったのだな」

「え?」


 キングが照れたように後頭部を擦った。てっきりボールのことだと思っていたので完全に不意を付かれた形だ。


「いやてっきりボールのことかなと」

「キュ~……」

「あ、ごめんなさい!」


 ダーテが胸板からパッと手をどけた。カウンターの上ではボールがションボリしていた。


「うわぁ~ぷにぷにしてるしひんやりしていて凄く気持ちいいです」

「!? キュ~♪」


 しかし直後ダーテはボールの頭に触れ優しく撫でてみせた。ションボリしていたボールもそれが嬉しかったのか上機嫌である。


「名前もつけて、本当に仲良しなんですね」

「うむ、ボールは私にとって今や大事な友だちでもありパートナーだ」

「プッ、お、おいあのおっさんスライムが友だちだとよ」

「よっぽど友だちに飢えてたのかね」

「だからってスライムはねぇよな。ジメッとしたところにいるようなモンスターだし普通はテイムしねぇよ」

「きっとあいつもかなりの根暗なんだろ? そんな気が――」

「コホンッ!」

「「「「あ……」」」」


 ダーテがわざと聞こえるように咳きし、そしてキングを小馬鹿にしたような会話をしている冒険者たちを睨んだ。


 まずいと思ったのか、冒険者は小さくなってそれ以上キングについて触れることはなかった。


「キングさんごめんなさい……春になって結構冒険者も入れ替わっていて、キングさんを知る人も今はいないみたいですし」

「気にしてないさ。俺もボールもね」

「キュ~」


 ボールはキングの肩の上にのり肯定するようにポンポンっと飛び跳ねた。


「ふふ、でもやっぱり噂の冒険者はキングさんだったのね」

「うん?」

「あ、いえ、こっちの話です」


 ダーテは手を振りつつごまかした。あの三人から聞いていたスライム連れの冒険者がキングだったと知り、嬉しくはあったようだが浮かれていると気づかれたくなかったのだろう。


「でも、ちょっと変わってますよね。いえ、スライムと一緒なのがというのではなくてボールちゃんの見た目が、私が知るスライムとかなり違うかなって」

「ふむ、確かにな」


 キングが顎を引く。それは最初目にしたときから思っていたことだ。一般的なスライムは洞窟などに現れるが、もっと液体に近い形状であり、こんな丸っこくはない。


「ボールは少々変わった特技も持っているからな。もしかしたら希少種なのかもしれない」

「そうなんですね……でもだとしたら気をつけてくださいね。変わったモンスターを集めるモンスターコレクターみたいな人もいますが、正当な方法ではなく少し強引な方法で手に入れようとする人もいるようなので」

「あぁ、ボールは常に俺と一緒だ。そんな連中にみすみす手を出させはしないさ」

「キュ~♪(スリスリ)」


 キングの言葉が嬉しかったのか、ボールがキングの頬に擦り寄ってきた。撫でてやると嬉しそうにプルプルしている。


「うん、これで大丈夫ですね。記入漏れもなしです。それにしても驚きました。レベルの件……」

「あぁそれは俺も驚いているんだがな」

「ですが、これなら更に問題ないですよ!」


 復帰についての聞き取りでダーテはどうしてもレベルのことに触れないわけにはいかなかった。聞きにくそうではあったのだが、しかしキングの回答に彼女は驚き、そして大層喜んでくれて、復帰についても心強い返事が貰えた。


「それは良かった。ただ……この復帰、ギルドマスターはどう思うかな……」


 とは言え、キングにとって一抹の不安はそこにあった。ダーテは珍しい話でもないので大丈夫だと言ったが、彼女はもともとキングに対して好意的だった。


 だがマスターのマラドナは違う。そもそもキングは彼によって追放されたのだ。


「大丈夫です! 今は私室にいるので今から言ってこの書類を突きつけてあげますよ! 絶対私が通してみせます!」

「はは、なんとも頼もしいな。君に相談出来てよかったよ」


 キングがそう言うと、少し照れくさそうにダーテは天井を見上げ、そしてそのまま書類を持って二階に向かった。


「さて、どうなるかな……」


 とは言え、やはりキングには不安もあった。そう簡単に通るとも思えなかったからだが――


「キュッ! キュ~!」

「うん? あぁそうだな。俺たちのやってきたことに間違いはない。信じて待つだけだな」


 ボールに大丈夫! と励まされ、キングは結果を待つのだった。






◇◆◇


「キングが戻ってきただと?」

「はい。冒険者として復帰したいそうです。問題ありませんよね? 書類もしっかり記入してもらいました」


 一方ギルドマスターの私室では、ダーテの報告を受けて難しい顔を見せるマラドナの姿があった。


 椅子に腰を掛け、机の上で頬杖を付きながらキングの冒険者復帰に必要な書類を確認しているが。


「後はマスターの承認が下りれば晴れてキングさんは冒険者として復帰できます。さぁ、早くサインを」

「馬鹿いえ、そんな簡単に出来るわけ無いだろうが。お前、まさかキングに大丈夫だとかいい加減なこと言ったんじゃないだろうな?」

「確約はしてませんが、私が絶対通してみせるとは約束しました」

「馬鹿が、そんなの期待もたせるだけだろうが。言っておくが俺はあいつの復帰を認める気はねぇぞ」

「どうしてですか!」

 

 身を乗り出し、机を両手で強く叩きつけた後、ダーテが詰め寄った。その剣幕にやれやれとため息を吐くマラドナであり。


「あいつは普通に冒険者を辞めたわけじゃねぇ。俺が追放したんだ。それなのに復帰したいですなんて言われてほいほい許可が出せるか」

「あれは不当な追放です! キングさんには何の落ち度もなかった!」

「ビルのパーティーを危険に晒しただろうが」

「あれはキングさんの責任ではありません! そんなの一目瞭然じゃないですか!」


 ダーテは全く退こうとしない。それも仕方ないことはマラドナにもわかっていた。ダーテはキングがギルドから追放された後も何度となくマラドナに抗議してきており、追放処分の取り消しを求めていた。


 当の本人が街を出ていったこと、それにキング自身が納得しているということで却下したが、未だ蟠りは残ったままであった。


「ふぅ、全く強情な奴だ。だがな、ここで戻したって奴には惨めな結果が待っているだけだ。お前も知ってるだろう? 超早熟型のあいつのレベルはもう上がることがなく下がる一方。あれから1年経ってきっとますます……」

「その心配なら不要です。というか書類ちゃんと見ましたか? レベルが下がる減少は止まってるとそう記入されてる筈ですが」

「確かに書いてるが、どうせお前が勝手にそう判断しただけだろ?」

「馬鹿にしないでください! 私はそんないい加減な報告はしませんし本人に確認したのですから!」

「マジかよ……」


 マラドナは訝しげに書類を眺めた。ダーテはこう言っているが、どうしても信用できない。レベルが下がるという現象はある程度の年齢に達しても起きる。


 ただ、こういったレベルの減少が始まった後でも努力次第である程度下がるのを食い止めることが出来るのも確かである。


 しかし下がったレベルがまた上がるなんて話は聞いたことがなかった


「ほら、問題ないですよね? わかったらサインを」

「駄目だ」

「どうしてですか! まさか、嫌がらせですか?」


 ジト目で訴えてくるダーテだが、マラドナは鼻を鳴らし。


「馬鹿言うな。俺はそんな小さい男じゃねぇよ」

「十分小さいと思いますが」

「う、うるせぇ! とにかく、こんな書類だけじゃ判断できないから俺が直に言って見定めてやるよ!」


 こうしてギルドマスターのマラドナ自らキングの下へ向かうのだった。

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