第99話 鉱山を解放する戦い
「とりあえずはこれだ!」
キングがボールをシュートするとミスリル鉱石を貪り続けるモンスターの後頭部に命中した。
モンスターが後頭部をさすりゆっくりとキングたちを振り返る。
「キングのシュートを受けてもあの程度の反応かよ」
ハスラーが目を丸くして驚きの声を上げた。キングのシュートは下手なモンスターなど太刀打ちできない程強力だ。だがそのシュートを受けても目の前のモンスターは何事もなかったかのように立ち上がり一行を睥睨した。
「なるほど。我が物顔で鉱山に居座るだけあって中々手ごわそうだ」
バウンドして戻ってきたボールを足でトラップしキングが印象を述べた。すると巨大なモンスターがのっそりと立ち上がり直後前屈み状態になると背中がボコボコと脈動し始めた。
「おいおい何だか気持ち悪いな」
モンスターの様子にハスラーが顔を強張らせた。するとモンスターの背中に無数の瘤が出来ていき、かと思えば瘤がポンポン飛び出し地面に落ちた後で瘤が小型のモンスターに変化した。
見た目は鉱石を食べていたモンスターにそっくりだがサイズは小さい。それが全部で十体、本体と合わせると十一体のモンスターを相手しなければいけない状況だ。
「こいつ増えやがった」
「でも、増えた方は小柄ですね」
「これぐらいならなんとかなるかしらね」
「いや、油断は禁物だ。向こうがチームで来るならこちらもチームで迎え撃とうじゃないか」
鼻息荒くキングが言い放った。どことなくチーム戦ということでテンションが上っているようでもあった。
「行くぞ皆!」
「お、おお! やってやろうぜ!」
「アドレスは援護を宜しくね」
「はい! サポートは任せてください!」
先ずはキングが足を使っての果敢なドリブルでモンスターたちをかき乱した。キングのボール捌きについてこれていないモンスターへ今度は必殺シュートが炸裂する。
「猛虎蹴弾!」
蹴ったボールが虎に変化し三体のモンスターを噛み砕いた。その威力にウィンも感嘆の声を漏らす。
「流石キングスゴい威力ね」
「へっ、やるじゃないか!」
ハスラーも感心しつつブレイクショットで同時に二体を貫いた、がそれだけでモンスターが止まることはなくハスラー目掛けてドロっとした何かを飛ばしてきた。
「うわ! なんだこれ、て――」
モンスターの吐き出した液体はハスラーの足にへばりつきかと思えば固まった。青白い光を放つ銀色のソレにハスラーが目を丸くさせる。
「まさかこれはミスリルか! クソ! 足がとられて――」
ハスラーがもがくも足は一向に動かない。その間にも他のモンスターが動き出しハスラーに襲いかかってきた。
「シールドショット!」
アドレスが打ったゴルフボールがハスラーの目の前で盾に変化しモンスターの攻撃を防いだ。アドレスの見事なサポートである。
「助かったぜアドレス! だけど足が」
「落ち着けハスラー。加工されてないミスリルならそこまで強度は高くない。お前なら砕ける筈だ!」
キングが叫ぶと、ハッとした顔でハスラーが槍を構え足にへばりついているミスリルを砕いた。
「よし抜けた!」
ハスラーが見事脱出したことでキングも笑みをこぼした。
「サラマンダーショット!」
ウィンが火の精霊を乗せ、テニスボールを強打した。勢いの着いたボールが燃え上がりモンスターたちに命中した。燃焼と衝撃のコンボでモンスターが更に二体倒された。
動きが自由になったハスラーも活躍を見せ小型のモンスターの数がどんどん減っていく。
一方でキングは本体の巨大モンスターに近づいていた。すると巨大なモンスターがペッペッペ! とそこかしこに唾を連続で吐き出した。キングは華麗なドリブルで迫る唾を躱して見せるが着弾した箇所がミスリルに変化した。
「何を企んでいる?」
モンスターの行動はキングを狙ったと言うよりは唾を撒き散らすのが狙いだったように思えた。すると着弾したミスリルが槍状に変化し四方八方からキング目掛けて飛来してきた。
「キング危ない!」
ウィンが緊迫した声を上げた。だがキングは落ち着いた様子で跳躍しその全てを避けてみせた。
「今度はこっちの番だ! 王波宙転蹴弾!」
空中でキングが宙返りし、その勢いを乗せ放たれたサッカーボールが大元のモンスター目掛け突き進んだ。慌てたモンスターは迫るサッカーボール目掛けて唾を飛ばした。
唾はボールにまとわりつきミスリルへと変化するも、その程度では勢いは止まらない。
先にキングが言っていたように加工されていないミスリルでは強度が足りないのだ。結果勢いの乗ったシュートをその身に喰らい巨大モンスターは吹き飛び壁に叩きつけられた――