第98話 最深部にて
「うそ――まだアンデッドがッ」
「旋風起脚!」
起き上がり襲いかかってきたアンデッドの群れにキングが飛び込みバスケットボールをバウントさせながら勢いよく回転――その勢いにより突風が発生しアンデッドたちがふっ飛ばされダンジョンの壁に激突した。
「大丈夫か?」
「はい。でも、ごめんなさい私の魔法が甘かったみたいで」
アドレスが肩を落とした。その姿を見てウィンが励ますように声を掛ける。
「仕方ないわよ。アドレスのせいじゃないわ」
「あぁ。それに見てみろよ」
ハスラーが指をさすと倒れたアンデッドが再び起き上がってきた。受けたダメージもまるでなかったかのようである。
「どうやらこのあたりのアンデッドは何をしてもすぐ復活してくるようだな」
「前に戦った闇神官みたいなのでもいるのかしら?」
キングの発言を聞きウィンが思い出したように言った。それは以前オーガスタを名乗っていた男の事なのだが。
「確かに闇神官は人をアンデッドにして操りますが、浄化されたアンデッドが復活することはありませんでした」
「言われてみればそうだなっと!」
近づくアンデッドをハスラーがブレイクショットで退けた。とは言え何度でも復活する敵を相手していても仕方ないだろう。
「ここは駆け抜けた方が良さそうだな」
「そうね。キリがないもの」
「幸い動きは早くないからな」
「が、頑張って走ります!」
そしてアンデッドを無視する事を決めた一行。するとキングが再びバスケットボールをバウンドさせた。
「揺れるぞ気をつけろ――双重土離震!」
キングが勢いよくドリブルを始めると地面が波打ちアンデッドがバランスを崩した。一方で注意を受けていた仲間たちは必死に踏ん張って見せた。
「よし今のうちだ!」
アンデッドの群れが倒れたのを確認しキングたちはその場を走り抜けた。アンデッドが追いかけてくる様子もない。
「どうやら無事振り切ったようだな」
「あぁ。このまま奥に向かおう」
安堵するハスラーにキングも頷き、更に足を進めた。すると薄暗かった洞窟内が次第に青白い光に包まれていく。
「これは――魔法銀の光ね」
ウィンが目を輝かせながら言った。どうやら一行はミスリルの鉱床までたどり着くことが出来たようであるが……。
――クチャクチャ、ゲフッ。
そんな不愉快な音が奥から聞こえてきた。キングたちが進むとそこにでっぷりとした醜悪なモンスターが鎮座していた。しかも周囲の鉱石を貪り食っておりゲップまで披露する始末である。
「こいつ……魔法銀を喰ってやがるのかよ」
「何か周囲の精霊も凄い嫌悪感示しているんだけど……」
「何だか瘴気もこの存在から発せられている気がします!」
三人が思い思いの言葉を言った。確かに鉱石を貪り食うことで魔法銀を体内に取り込んでいるのは間違いないようだ。その所為で濃い瘴気を纏っている。
「こいつを倒さないとミスリルの採取は出来ないようだしな。このまま放置してはおけんだろう」
「あぁ、やってやろうぜ!」
「キュ~!」
キングとハスラーが戦闘態勢を取るとボールも跳ねて鳴き声を上げそれぞれに合った形状に変化した。
アドレスとウィンも頷き合い、鉱山を取り戻す為、戦いの火蓋が切られた――