第96話 モンスターを討伐する為に鉱山へ向かう
キング一行は素材となるミスリルを手に入れるために鉱山のモンスターを討伐することになった。
早速入った鉱山内部は薄暗く視界が悪い。とりあえずトロッコ用の線路が伸びている細い道を辿っていく一行だが――
「静かな鉱山ってどこか不気味ですね……」
アドレスはどことなくビクビクしている様子だった。そんな彼女をハスラーが不思議そうに見ていた。
「不気味ってアンデッドとか相手したことあるじゃんか?」
「そ、そういうのとは違うんですよもう!」
ハスラーの疑問にアドレスがぷくっと頬を膨らませる。そんな彼女を見てウィンが微笑ましそうにしていた。
「何かアドレスのあぁいうところが女の子っぽくていいよね」
「うん? ウィンも女の子だろう?」
「え? そ、そう? 昔からお転婆とかもっと女らしくしろみたいに言われていたからちょっと嬉しいかも――」
ウィンの頬が紅潮した。キングの言葉が嬉しかったようだ。
「き、キングはやっぱり女の子らしい子が好きなのかな? いや、そんな深い意味はなくてなんというか!」
「待て!」
自分からキングに問いかけるも慌てだすウィン。だがそんな彼女を他所にキングが警戒心を高めた。
「どうしたキング何かあったのか?」
「あぁ。どうやら早速来たようだ」
「キュッ!」
キングの言葉にボールもまた気を引き締めた。すると坑道の奥からドシンドシンと大きな音が聞こえてくる。
「な、何か来るわよ」
ウィンが身構えた。現れたのは土で出来た人形のゴーレムだ。そしてその数実に三十体以上。
「どうやら俺たちを敵とみなしたようだな。みんな油断するな!」
「キュ~!」
キングもゴーレムの集団に向かって身構えた。そして向かってくるゴーレムたちを確認しながら声を上げる。
「数が多いな。よし先ず俺がゴーレムを抜けて背後に回る。皆はここからゴーレムを狙って貰えるか?」
「え? 抜けるって流石にこの狭い道じゃ厳しくない?」
キングの作戦にウィンが疑問の声を上げる。だがキングは親指を立ててニカッと笑って見せた。
「大丈夫だ。今こそ球技で鍛えた腕を見せる時! 行くぞボール!」
「キュ~!」
そしてサッカーボールに変化したボールを蹴りながらキングはドリブルでやってくるゴーレムの間を縫うように走り抜けた。
「うわ、すっごい! 流石キング!」
「あぁ。だが感心している場合じゃない。こっちも仕掛けよう!」
ウィンが感心している横でハスラーが槍を構えた。その間にはキングは見事にゴーレムの間を通り抜け背後に回っていた。そして振り向きざまにボールを蹴り上げる。
「今だ! ブレイクショット!」
「いけぇえぇえええ!」
「ぬんッ!」
ハスラーが槍でボールを突き、ウィンも風の精霊を乗せたショットを決める。反対側ではキングが宙返りしながらのオーバーヘッドキックでゴーレム目掛けてシュートを決めていた。
挟み込むように放たれた三者三様の技。その勢いは凄まじくゴーレムの群れたちをまとめて吹き飛ばしたのだった。
「キュ~」
ゴーレムが倒されボールが誇らしげに鳴きながらキングの肩にぴょんと乗った。ウィンもハスラーも実に楽しげな表情でそれを見ている。
「最初はヤバいと思ったけどいけたわね」
「あぁ僕たちも随分と戦えるようになったものだよ」
「はは、私は何も出来なかったですね」
「アドレスは援護でお世話になるからな。それまでは魔力は温存しておいた方がいいだろう」
申し訳無さそうに頬を掻くアドレスにキングが気にしないよう伝えた。役目が違うのだから直接攻撃に参加していなくても問題ないのである。
「でもこれなら思ったよりも早く片がつくかもしれないな」
「いや、油断は禁物だぞハスラー。俺の読んでいる物語でもそういう油断がピンチを生んでいたからな」
真顔でキングが釘を差したことで全員が表情を引き締めた。そして一行は更に奥を目指して足を進めるのだった――