きっと、大丈夫、かな
「増えた?僕のふりをした死神がまた人殺しをしたのですか。」
「さぁ。昨日の朝に貯水池で溺れていたそうだから。かわさんが言っていたやんちゃ死じゃないのかな。原付バイクも一緒に引き上げたらしいから。三人乗りでふざけていて、ドボン。」
はすっぱな物言いで、右手に潜りのジェスチャーをしながら彼は僕に説明してくれたが、それは僕に負担を与えないようにするためだろう。
僕は先日の入院中に、枕元に立つ黒い少年の影のような死神、死んだ玄人自身だと言い張る死神に、「僕が同級生を殺している。」と毎晩繰り返し脅されていたのだ。
その死神は具体的に殺した人物の名前をも僕に囁き、山口にその名前の人達の生死を調べてもらってもいた。
彼は僕の見えたものを僕に触れることで見ることが出来るという能力があり、僕の語った言葉を全て受け止めて信じてくれるのである。
「どうしよう。まだまだ死体が増えるって事なの?」
僕が殺していなくとも、状況から皆が僕のせいだと指差すだろう。
魔女狩りが始まる。
昨年の十一月に僕を虐めていた主犯と思われる人物が撲殺され、その遺体を見つけた僕は犯人だと名指しされてしまったのだ。
笹原は僕をリンチにかけようと、仲間を引き連れてこの良純和尚の家を来襲した。
僕は周囲に迷惑をかけてばかりだ。
「大丈夫だって。僕がついているから。」
僕の気持ちを読んだかのように山口は微笑み、今度は抱きしめるのではなく、僕の頭を引きよせて額をコツンと合わせて優しく僕に囁いてくれた。
本気で僕を慰める時にはこんなに軽い接触なのは、彼が知っているからだ。
僕が人との接触が苦手だって。
それは、僕には同級生達に抱きつかれ、体を拘束されて、プールの底に沈められたという過去があるから。
「お前ら、ちょっと布団を片付けろ。」
玄関に戻って来たらしい良純和尚の声が響いた。
彼もやっぱり「十一人死んでいる。」という笹原の言葉に反応したのだろうか。
「大丈夫ですからどうぞ。」
声を掛けると、良純和尚と笹原健太が僕達の居間に入って来た。
良純和尚に笹原が連行されているが正しいか。
青い顔をした笹原は首を捕まれて居間に引き入れられると、良純和尚によって乱暴にちゃぶ台の前に放られた。
うわお!お坊様の所業じゃない。
「ほら、さっさと座ってその十一人の死と自分が殺されるかもしれないという関連性についてとっとと語れ。目の前にいる奴は本庁じゃねぇが警察官だ。俺は眠いんだ。急げよ。」
背骨に来るいい声で良純和尚は怯える笹原に命令した。
メチャクチャ怖い声なので笹原は言いなりだ。
山口さえも彼の声に怯え……やっぱり目を輝かせている。
「格好良い声だよね。」
「背骨に来る声ですよね。」
山口はやっぱり僕の大事なお友達だ。