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#x KRVについて

<キネティック・ロボテックス・ヴィークル>

 KRVとは随伴歩行ロボットを起源とする歩行車両の総称である。

 最も古いKRVは、歩兵と同等以上の不整地踏破性を有する歩行システムに機銃を備えることで分隊の機動力と攻撃力を向上させる、いわばハイテク軍馬とも言うべき代物であった。これは山岳地帯や屋内などでも運用することを可能とし、偵察機や掩体としても用いられた。

 2040年代のKRVは、装輪車両が侵入できない不整地においても歩兵に随伴することが可能な装甲車として運用されており、移動陣地や銃座として操縦者の搭乗を前提とした造りとなっていた。狭隘な山岳地帯や高層建築物の屋上など、あらゆる死角から装甲車に匹敵する火力を投射ことが当時のKRVの役割であったのだが、同時にその立体的な機動力を発揮することで近接航空支援や対戦車戦闘を担うこともあった。

 この時代のKRV設計トレンドは、全高は四メートルほどで、頭頂部にカメラ同軸のハードキルディフェンス用機銃を装備し、左右アーム部に主兵装を搭載するというレイアウトとなっている。

挿絵(By みてみん)


<操縦系>

 KRVの主な操縦系は、二つの操縦桿と二つのペダルから構成されている。

 右の操縦桿は姿勢制御、左の操縦桿は移動方向指示、右ペダルは推進、左ペダルは逆噴射となる。それに加え操縦桿には、照準スティックや無線スイッチ、兵装選択ダイヤルや射撃トリガーなど、HOTASを考慮して様々な入力装置が備えられている。

 当然だが、航空機のようなPBWを導入することはできない。

挿絵(By みてみん)


<整備性>

 後述するスタンフレックス構造やスマート素材の導入により、KRVの整備性は車両と比較しても劣ってはいない。

 専門的な教育を受けた人員と適切な資材や設備があれば、一名でも基本的な維持や修理を行うことが可能となっている。

 KRVのアームを作業肢として用いることで、複数機で相互に組み立てや解体を行うこともできる。


<スタンダード・フレックス・コンセプト>

 2030年代以降のKRVはスタンフレックス概念に基づき、モジュラー式構造が採用されている。これは各ユニットをモジュール化して換装や更新を容易にすることで、SLEPの省コスト化を図る構造である。

 モジュールの規格は各国によって異なっており互換性は無いとされているが、PMCや非正規武装組織などでは規格外のモジュールを違法改造して無理矢理セットアップするノウハウが出回っており、メーカーもそれを黙認している。


<カメラおよび同軸機銃>

 KRVは外部視認用のカメラを頭頂部へ有している。この視認用カメラは迎撃機銃と一体化していることが多く、操作性や構造の簡略化に配慮されている。

 最新型KRVのカメラ同軸銃座は、飛翔体機銃と指向性エネルギー機銃の選択式になっており、例えばKRV-11や41式の場合は、M3K重機関銃とライセオンMTHELのどちらかをマウントすることができる。

挿絵(By みてみん)


<可動懸架装置>

 KRVに装備されている可動式ガンマウント。つまり手。

 様々な火器を、工具や設備を用いず即座に換装するための装置。

 最初のKRVであるマーク1はグローブ状の三指型であり、その後生産配備された機種は整備性を考慮してペンチ状の二指型が主流となった。近年では故障などに対するフェイルセーフを考慮して人体に近い五指型が普及し始めている。

挿絵(By みてみん)


<ターボリニアエンジン>

 磁気流体推進器の一種。航空機やKRVなどに用いられているジェットエンジン。

 電磁誘導インテークにて空気吸入を行い、得られた水素や酸素を燃焼することで噴進する。機械的なタービンを有さず、電力のみで稼働しているため、噴射と停止の切り替えを瞬間的に行うことができる。また、物理ファンを使用しないため小型化しやすい。

 単純で堅牢な構造をしており、きちんとシーリングを行えばハイドロジェットエンジンとしても使用することが可能。

 KRVのターボリニアエンジンは、吸気できず失速状態に陥った際にはロケット推進へと切り替えるAPU機能も装備されている。ロケット推進時の燃料は、エンジンフレーム内部の水素吸蔵合金へ備蓄しているものを使用する。

 冷却には高出力サーモモジュールを使用しており、これもやはり大電力を消費する構造となっている。

挿絵(By みてみん)


<リバーサー>

 KRVの姿勢制御用ロケットエンジン。

 第一世代機の場合は胴体前面に搭載されている場合が多い。

 ターボリニアエンジンの吸気により獲得した水素を燃料としている。


<スマート素材>

 建築物や大型機材などにも導入されている自己修復能力を持つ素材。電力を加えることで同一の分子構造の物体と結合し形状を維持する。

 装甲などの単純で均質な構造体はもちろん、コンピュータの配線なども自律的に修復することができる。

 KRVは車両に比して部品の疲労速度が早いため、運用コストを可能な限り押さえるべく、スマート素材が多用されている。

 喪失した素材は同一の構造を有するダブラープレートを充てることで補填される。


<電位相転移素材>

 通電することで分子同士が堅固に結びつくスマート素材の一種。

 大電力を必要とするため、発電設備を有する大規模な施設や大型艦艇の構造材として使用されることが想定されている。

 作中時点では研究段階にあるが、後の世では第二世代KRVに用いられることとなる。


<アクティブ迷彩>

 視覚的に透明化する技術。もちろん熱線暗視装置やレーダーは無効化できない。

 KRVの装甲に塗布されているスクリーン塗膜もアクティブ迷彩装置の一種である。

 水分や衝撃に弱いため、基本的には駐機状態でのみ使用する。


<バッテリー>

 KRVのフレームは可逆式燃料電池を内蔵しており、これが主な動力源となっている。

 KRVは、駆動部やジェットエンジン、そしてコンピュータなどといった、大電力を要する機材の集合体であり、アビエイターは常にバッテリーの容量に注意を向ける必要がある。

 充電設備が使用できない状況に備え、KRVには回生装置や太陽光発電機、電熱変換発電機、自重発電装置、大容量キャパシタなどのフェイルセーフシステムが搭載されてはいるが、電力の過剰消費を招く機動を不用意に行うことは厳に慎むべきである。


<KTDLS>

 KRV戦術データリンクシステム。

 各種統合作戦支援ソフトを内包する戦闘支援システムで、衛星や管制機などを介し、戦況の分析や標的の索敵などを包括的に行うもの。

 矢野が開発していたのはベンダー傭兵向けに調整されたもの。


<AIDE(人工知能型開発環境)>

 ノーコードの対話型開発環境。大手検索エンジンが提供するサービス。

 自然言語に近い命令と簡易なスニペットの組み合わせで、人工知能にシステム開発を行わせることができる。

 ただし生成したインスタンスには非公開のトラッキングコードが混入されており、機密情報の漏洩というリスクも有している。そのため、軍事用途のプログラムは基本的に昔ながらのハンドメイドで作成されている。


<35ミリ機関砲>

 KRVの代名詞的装備。チェーンガン。

 部品や砲弾が多く市場に流通していること、装弾数が多いこと、構造がガトリングなどと比較して堅牢であることなどから、所属を問わず大半のKRVはこれを装備している。

 比較的威力や精度に劣り、主力戦車などの装甲目標には効果が薄い。


<THEL>

 戦術高エネルギーレーザー砲。

 KRVやMBTに搭載されている低出力のものは、対人攻撃や対地・対空迎撃に使用される。


<ブレード>

 高周波発生装置を内蔵したKRV用のブレード。

 本来は障害物の除去や解体に用いる機材だが、攻撃に用いることもできる。

 KRVなどの装甲目標に対して使用した場合は、大抵の場合は一太刀で敵機もろとも刀身が砕け散ってしまう。

 主兵装として取り扱うには大変に高度な技量を要求される。


<防盾>

 KRVの装甲素材は、MBTと同レベルの高硬度・低脆性・低熱伝導性・高延性の超硬難削材を使用しており、ある程度の防弾性能を有する。しかし、KRVは可動域の確保や軽量化のために機械部が剥き出しとなっている箇所も多く、当たりどころによっては歩兵の機関銃でも重大な損傷を負ってしまう恐れが有った。

 そういった状況を鑑みて開発されたのが、アームで懸架する防盾である。

 アームを可動させることで、小型の防盾でも広範囲を防御することが可能となる。


<アビエイター>

 史上初めて実戦にKRVを投入した海外自衛隊は、米海軍の影響を強く受けており、KRV操縦士をパイロットではなくアビエイターと呼称していた。

 現在では、KRVの普及と共にアビエイターという呼び方も世界各国で定着している。

 KRVの操縦は心身への負担が大きいため、現役アビエイターとしての寿命は三十歳前後までであると言われている。


<アビエイタージャケット>

 KRVは区分の上では車両の扱いではあるが、その操縦感覚は航空機に近い。

 戦闘機動時のアビエイターは10G近い加重に晒されることもあるため、まともにKRVを運用するのであればアビエイタージャケットの着用は必須となる。

 パワーアシストや防弾機能を備えているものもある。



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