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雪の中に、凍え無理してまでも来てくれたのに、その後の二日間は来てくれなかった。
君が来てくれないということが、どれだけ寂しいことか僕は知らなかった。
今まで、君に会えない時間がこうも長く続くことはなかった。僕が意識がなかったときだって、君は通ってくれていた。
本を読んだりテレビを見たりしたものだが、虚しさだけが募った。
そうしていることが、好きなのは本当だ。
毎晩、君が帰った後は好きに本を読むことも多い。溜まっていた未読の本の山が片付いたので、充実した時間を過ごせたと言えるのではないだろうか。
それだって僕は虚しいばかりだった。
「久しぶりです。なんだか、二億年くらい離れていた気分です!」
「本当ですね! 絶対にそれくらい離れ離れでいたに違いありません」
君が部屋に入ってきてくれたその瞬間、嬉しくて大きな声を出してしまった。
同じように君が言ってくれるのが嬉しかった。
寂しかった想いを伝えようとして、言葉が閊えた。
言えるはずがなかった。
これから僕と君は引き離される。それは世界一残酷な運命によって、引き裂かれてしまうことが決定されているのだ。
どうせ死ぬ僕とは違う、君は生きなければならない。
生は僕が欲しても手に入れられないものだったことを、君は知っている。
だから僕のせいで君は生きなければならない。
一人で抱え込んでは、鋭い君はそれに気付いて、頼ろうとしない僕のことを責めるだろう。
もちろん僕は君を信頼しているのだし、不安にさせたいわけじゃない。
かえって自分勝手とも言える気遣いで、苦しみを共有することを拒みたいわけじゃない。
そういうわけでは、そういうわけではないんだ。
「暗い顔をしないでください。今後はずぅーっと一緒にいることになるのですから」
明るい君の笑顔に、思わず僕も笑ってしまっていた。