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夢や志は広がっていくのに、心は強くなっていく一方なのに、体はどんどん弱くなっていくようだった。
「あたしでよかったら、いくらでも迷惑を掛けてほしいのですが、迷惑を全てあたしで引き受けることなどできませんものね。それに、だれもあたしとあなたで決めたことを責めはしないでしょうし、そうする権利もないと思いますけれど、あなたがいなくなって悲しむ人はあたしの他にもいます。あなたの時間をあたしが独占してしまっておりますけれど、だからこそあたしは、あなたの死までを決めることは許されないのです」
僕がいなくなって悲しんでくれる人……。
悲しんでくれてしまう。
嬉しいことに、僕は一人だが独りじゃない。
だから自由に生きたくても生きられない。
自由に生きてしまっているから、死までを自由にすることは許されない。そのとおりなのだ。
僕がそうしたいと話したのならば、だれも文句を言いはしないだろう。優しい人たちだから、認めてくれるんだ。
だから辛いんだ!
寂しい思いをすることがわかっていて、君は傍にいてくれている。
僕と寄り添う覚悟をしてくれたんだ。
「すみません、意識ははっきりしているのです。悔しいほど頭は冴えているのです。幸い、それを口にする力は残っています。幽体離脱でもしているようです」
本当に離脱して、どこへでも行けるのなら、動けなくても何にも触れなくても、景色を見て君と共有できたなら、それで十分だ。
鎖で魂さえ縛られてしまっているようだ。
「まだ見えているのでしょう?」
「そうですね。耳は聞こえますし、目も見えています」
「目を開けるのは辛くないですか? 楽な体勢で運びたいとは思っていますけれど、座らされるのは辛くないですか?」
「支える君に比べたら、辛くもなんともありません」
最後に君は言った。
「明々後日、お楽しみに!」
笑顔で君は去っていった。