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何が気に入らないのかはわかった。
君の本気を信じない僕が気に入らないんだろう?
「ねえ、何かやりたいことはありませんの? 自分のために生きているというのなら、それならば、わがままを言ってみてくださいよ。ここに通っているのは、あたしがやりたくてやっていることですから」
僕がしてほしくてさせていることであり、君がやりたくてやっていること。
双方が自らのわがままだと言い張るこれは、本来ならば自然と果たされるべきことであって、どちらのわがままというわけでもないことも、そういった平常を知らない僕ではない。
一緒にいたいと願っている、だれもそれを拒む人がいないのに、一緒にいられない。一緒に暮らすことができない。
だから毎日、起きている間だけでも通っては会うことが、わがままであるはずがない。
そんなことをわがままだと言われて堪るものか!
「僕の都合に合わせて、君は会社勤めを辞めてしまったのではありませんか。住む場所だってこの近くに限定されてしまいましたし、毎日朝から晩まで、金がもらえるでもないのに労働をしてくださっています。帰ってから、稼ぎを得るために家で懸命に働いていますね? 家事だって全て君がなさっていますのに」
だれから見てもそれはわがままだと責められるようなわがままで、君を困らせてしまおうかと考えた。
それなのに、僕が言えるのはこんなことだった。
何か僕が悪いことをしたわけではない、病という災害に巻き込まれているだけ。
けれど君と僕のどちらかと考えたらば、どう考えても落ち度があるのは僕の方なのだから、僕のために努力してくれている君にわがままを押し付けるのは、気が引けるというものに決まっている。
だれが悪いわけでもないことを知っているのに、辛いから、憎むべき相手がいない僕は僕の体を憎む。
どうしてこのようなことになっているのかと。