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 答えに惑った僕は、探した挙句に小さく望んだ。

「死んでなくなってしまう夢を、時々僕は見せられます。それでも夢の中でさえ、一度だって死後の世界を見たことがないのです。只管にそれで死が怖くなっていきます。君の温もりでどうにか僕を救えはしませんか?」

 君は手を取ってくれる。そう思った。

 君は手の甲に口付けをして、淡い微笑を向けてくれる。そう思った。

 その、とおりだった……。


 夢で見たように進んでいく。

 君は僕の手を取って、その手の甲に口付けをして、僕に淡い微笑を向けてくれた。

 それは僕には幸せで、適わなくて、夢で見た光景と重なりすぎた。

 ぴったり重なってしまっていたのだ。

 ずっと見せられていた、ずっと恐れていた、望んでもいない未来の夢が、現実に重なってしまっているのだ。

 この後、これがまた夢であってくれたなら、僕はすぐに目が覚める。


 何度も見た夢、見慣れた夢。

 見た時点で、夢だとわかるほどに何度も何度も見せられた夢。

 それなりに毎度それが怖いのは、目が覚めないかもしれない、今日はもしかしたら夢の続きがあるのかもしれないと、そう思うから。

 怖い。怖い。怖い。怖い。死ぬのは、怖いよ。

「そこから、どうするのですか?」

 目が覚めないものだから、どうなるのか気になったままに聞いていた。


 気が付くと、僕は君を抱き締めていた。

 君は僕の胸に擦り寄って、背中に僕の手を乗せてくれたのだ。

「好きな人に抱き締められるって、こんなに幸せなのですね」

 僕を見上げて君は微笑んだ。

 その頬は濡れていた。



 ああ。もう僕には何もできないのか。

 君と同じ景色を見ていることさえ――









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