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動かないこの手は、そんなことはしてくれるなというのに、終わりが近いのだということを思い知らせようとしてくる。
腹立たしいことに、残酷な現実を見せ付けてくるのだ。
求めてもいない現実というものを僕に理解させようとするのだ。
眼を逸らすことすら許してくれないものだから、僕は嫌でも実感してしまう。
ずっと恐れていた、何度も魘されたあの悪夢が、遂に現実のものになろうとしているのだと。
君と過ごすことのできない未来など僕はいらない。
僕と過ごすことのできない未来を、君も望んでいないのではないだろうかと信じている。
それなのに僕と君とは引き離される。
僕は死後の世界で未来を過ごし、きっと君は暫くこの世界にいて、いつか僕と生きた時間よりも一人で過ごした、もしくは僕ではない新たなだれかと過ごした時間の方が長くなってしまうのだ。
その心苦しさというものは、体感したわけではない僕にはわからない。
君のところから連れ出して、僕をどうしようというのか。
「どうしたってそこまで死が怖いものですか?」
不安が膨らんでいくことが君にも感じ取られてしまったのだろう。
いろいろなところへ君は連れて行ってくれる。
それが楽しくて、嬉しくて幸せで、いくつも僕の夢が叶えられていき、ああ死んでもいいなというくらいの思いとだからこそ死にたくないという思いとが鬩ぎ合う。
恐怖と葛藤が君には感じ取られてしまったのだろう。
「怖いに決まっているでしょう、いくら君のお言葉でも、それはあまりに冷酷で無責任というものです」
「そうですか? 冷酷ですか? 適当な言葉を掛ける方が、よっぽど冷酷で無責任だというように感じられるのですけれども」
「…………言われてみれば、そういうものでもあるかもしれません。考えが足りていなかったのは僕の方だったようですね」
「足りていないとまで言いませんけれど。わかってもらえたようで何よりです」
それから当分の間、君は口を閉ざしていた。
何を言うつもりなのかと、急かすようなことを僕は言えなかった。
静かに君から話し出すことを待った。
「やはり死を意識させないようにさせることは難しいですかね。それとも美しい景色ばかり集めては、かえって儚さが死を演出しますか? まさか見たことのないものばかりなのに、走馬燈とでも感じていらっしゃいますか?」
待った末に注がれたのは、相変わらず容赦のない君の言葉だった。