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そういった内容のものを初めとし、僕はいくらか君へのメッセージを残した。
これから死に逝くことがわかっていて、独り君を置いて逝ってしまうことがわかっていて、それでも君は僕に寄り添ってくれると言ってくれている。
それならせめて、何か形として僕というものを残していきたかった。
僕がいなくなった後にまで、孤独の身に君を縛りたいだとはもちろん思っていないのだけれど、もし君が新しい愛を探さないでいてくれるとのだとしたら、あまりにも不憫だったのだ。
報いられるような心遣いを僕が残すことは義務にまで感じられた。
鋭い君のことだから、何か僕が動いているのだということは感じているだろう。既に僕が何をするつもりであるのかまで突き止められてしまっているかもしれない。
だとしても、サプライズという形を取らせてもらうことで、最後のメッセージを手に入れるまで楽しんでもらえたなら、アトラクションとなれたなら、そう願って明るく語り掛けることくらいしか僕にはできなかった。
一緒に旅をしているのだから、独りになって撮影を行っている時間などほとんどない。
それでも君が眠っている間や、何か理由があって僕から離れるようなことがあったときに、チャンスとばかりに僕はどこかそれらしい背景のところまで連れて行ってもらった。
そうしてカメラを回してもらって、いつ見ることかわからない君へと声を掛けるのだ。
『今までありがとうございました。楽しんでくださったならば嬉しいです。
最期まで、僕は君を愛していましたよ。心から、愛していましたよ』
まだ最期ではないのに、最期と口にすることは思った以上に胸に負担だった。
間違えなく今の僕は君を愛しているというのに、君がこれを見るときに僕は過去の存在となっているから、あえて過去形の愛を告げなければならないことは、それ以上に胸を傷め付けた。
けれど想定していたものを全て撮り終えて、最後のものはできるだけ短い言葉で、それだけを伝えるのだと決めていたものだから、どれほど苦しくても僕はそこでカメラを止めてもらった。
僕のこの胸の痛みまでが、カメラに映ってしまってはいないはずだ。
「レンズ越しに見た僕は、きちんと笑えていますか?」
苦笑して顔を見合わせるばかりで、だれも僕の問いに答えてはくれなかった。




