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大きな声を出した僕のことを、声を上げて君は笑った。
それほど笑わなくていいものを、楽しそうに、ゲラゲラと笑うのだ。
品のない方ではない君だから、このような笑い方をするところは見たことがない。
僕にはそれが嬉しく感ぜられた。
「何をそこまで笑うのです」
口を尖らせれば、君はますます笑った。
「あなたが嫉妬などをなさるから笑うのです。おかしくって、堪らないのですよ。まず何事にも淡白そうなあなたが嫉妬をなさること自体が面白いのに、そうもまで必死になるものですから、まして手を取るだけですよ? そんなものを浮気だなんやと捉えるのは、さすがに初心な学生だけというものでありましょうに」
恥ずかしくてならなかった。
言ってしまってから、思わず言ってしまってから、笑われるだろうと想定はした。
だって君が同じようにしたらば、きっと僕は笑うだろうから。
その笑う理由としては、馬鹿にしていることではないのはもちろんとして、面白おかしいことのみになく、喜びというものも間違えなく含まれる。
僕と君は同じように思う自信があったから、思わず吐いた僕の嫉妬を、君が喜んでくれているであろうことは確信していた。
「当然、あなたがあたしのことを大切に思ってくださっているのはわかっておりますけれど、思いの強さがあんまりに過保護ではありませんか。それがまた嬉しいのですけれどね」
「やはりそうですか」
「やはりとはなんですか。あたしがそう言うことが、あなたにはわかっていたとでも言うのですか。ええ、きっとそうなのでしょうね。あたしだって逆の立場なら自信を持って確信できたでしょうから」
そこまで君の言葉を聞いてから、僕たちは同時に笑った。
何がおかしいでもなくて、ただ幸せで、この空間にいられることが最高に嬉しくて、理由などなく自然と笑っていた。
せっかく時間を掛けて素晴らしい景色へと君が誘ってくれるのだという話だったのだが、君との会話に夢中になるがあまり、景色など気にしてはいなかった。
目を瞑ろうかだとか、そのようなことを考える必要はなかった。
会話をしていたら、いつの間にか二人の世界に入って行ってしまうのは、いつものことなのだから。
「うわぁ、想像していた以上の絶景ですね」
不意に景色に目を向けたのだろう。
そう君が呟くものだから、ふっとそちらを僕も向いた。
まだ季節は早いだろうに、こいつらは季節を間違えているのか、ここらは温暖な地なのか、それとも僕が見下ろすものとは品種が違っているのか。そこには堂々と桜が咲いていた。
視界の半分を桜が占めていた。
その奥に見えるのは、広大な青だ。
この淡い紅色と輝く青色とは、感動するような美だった。
「もう既に美しいですけれど、もうすぐですよ」
君がそういう理由はすぐにわかった。




