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「どこの海まで行くつもりなのですか? それほど海の近くにいる方ではありませんけれど、だからといって、最も近い浜辺でしたら、それほど遠いものでもないでしょう? その憧れというのを叶えるために、特別な海を選んだのですか?」

 ふと気になった。

 車の中で、昼食を食べながらのことだ。

「あなたのところへ行くのも我慢して、準備に取り掛かっていた期間がありましたでしょ? 探したんです。調べたんです。どこならって一生懸命、その結果、ちょっと遠くまでですね」

 ちょっと遠くまでと君は表現した。


 どうして場所は言おうとしないのだろうか。

 考えたらば、その地名に何かがあるのだと思わざるを得ない。

「どこへ行くのか聞かせてもらえませんか」

「え、えっと、そういうのはあんまり覚えていないんですけど。地名とかは得意じゃなくてですね、それはあなただって知っているくせに、なぜあたしにお尋ねになるのです。調べて計画を立てて伝えて、あとのことはお任せしてしまったのです」

「お任せとは。君のことですから、旅のしおりでも作ってくれているくらいなのではないかと思っていたのに、少し残念です」

「がっかりさせてしまいましたか? ですが、最後まであたしが作るよりも、安心できますし素敵なものに仕上がりますよ。味の悪くとも愛する人の手作り料理というものは、ひどく美味な職人料理に勝ることすらあるのだと、そういったような理論でしたらそれは気のせいというものですよ」

 君の言っていることはおかしなことではなかった。


 それにしても、この人たちは何者なのだろう。

 旅の計画までを任せられるような人だとは、医療関係の人なのかと最初には思っていたけれど、運転やら料理やらすらしてくれているようだ。

 僕を運んでくれた力と手際のよさも考慮すると、……無理だ、執事というようなことしか思い浮かばない。

 執事は何をも完璧に熟すというのは幻想だろうし、それほどの人が存在しているのだとしても、絶対的な忠誠を誓う主がいるはずだ。代々続いている家の主従関係に決まっている。

 こんな派遣パーフェクト執事があるものか。


 派遣、パーフェクト……。

 何でも屋さん?

 発想が徐々におかしな方向へと行ってしまっているようだ。

 だけどそれくらいしか考えられないじゃないか。

 絶対に質問しても答えを得られはしないのだろうなぁ。



「幻想に縋るのは悪いことですか? 気のせいだとしても、僕は君の真心がほしいです」



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