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 ストレートなワードで詩的な表現をする君だから、上手く掴めなかった。

 辿り着いた僕の中の結論は、頭で理解をしようとすることそのものが、間違っているということだった。

 実際、僕はそうなのではないかと思うのだ。

「風であたしたちは舞います。想像してみてください。そこであたしの憧れのシチュエーションというのは完成されるのです。映画やドラマでよく見られる、感動的な場面です」

 熱弁してくれているのだが、未だにピンとくるものはなかった。


 今、君が創り出した世界観の中に、僕は飛び込んでいきたい。

 いつだって君と同じものを見ていたい。

 首より下が動かせなくなろうとも、目はモノを見、耳はコトを聞き、物事を考えることができている、その理由がそこにはあるのだと僕は信じていた。

 せめてもの僕の抵抗に、力があるのだと信じるようにしていた。

 だから理解をしようと耳を更に深く傾けた。

 信じているのだから、焦ることはなかった。


 感動的な場面の中から君は声を掛けてくれる。僕を呼んでくれる。

「一日中話をしているのはいつものことですから、一緒にいれば退屈するようなことはないでしょうけれど、相当移動の段階で疲れることでしょう。というくらいの移動時間になりますから、そこにも覚悟しておいてくださいね。それほど移動の時間を掛けざるを得なかったことに関しては、理解をしてもらえると嬉しいです。そのおかげで、ちょうどいい時間になりますから、ポジティブにお考えになってくださいね」

 ネガティブな思考に至る原因がまだ突き止められていないのに、その道を先回りして封じられた気分だった。

 僕をどう思っているのだか知らないが、そんなことをしなくてもいい。


 いつにも増して君の話は止まらなかった。

「車椅子を押して浜辺を歩くのです。海に夕日が反射して、茜色の世界の中、とっても感動的だとは思いませんか? あたしには車椅子の愛おしい人がいますから、このシチュエーションならいくらでも感動的な演出にできると自信がありましたし、あなたがあってこそ涙を誘う、だから映画化したいくらいに思っているほど、憧れているのです。えへ、なんか途中から、自分でも何を言っているんだかわからなくなってきてしまいました」

 語って語って語ってから、可愛らしく微笑む。

 しっかりした大人な君だから、こういうところを見られると、まして今のように不意打ちだと尚更、目を奪われ心を奪われるものなのだ。

 君はそういうところで、ずるい。

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