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悪いと思う気持ちがあった。不安も残っていた。
しかしそれが君への気遣いだと勘違いするつもりはなくて、だからこそ僕はそういった思いを払拭して、純粋に君からのサプライズを楽しみたい。
その純粋さが本物であるか、そんなことは問題ではない。
僕と君さえ、夢の世界へと誘ってくれたら十分なのだ。
幸い、その晩眠っているうちに、随分と気持ちの整理ができた。
見たことを覚えてもいないけれど、そんな夢の中に現実を閉じ込めてしまおう。そうして現実を夢が乗っ取るのだ。
目が覚めていることを認識し合っている状態で、寝言を確からしくほざくのだ。
いつからか僕と君だけの言葉になって、世界になるから。
暗示を掛けているうちに、不思議なもので、本当にそう思えてきた。
起きたばかりだから、夢と現実の区別が確実になりきっていないのだろう。
そうでもなければ、これほど現実を閉じ込めることはできなかったろう。
今から僕は君と旅に出る。
これから何年も何十年も何百年も、二人で寄り添い各地を回るのだ。
知らないことを知って、それが楽しくて、でもそれは二人でいるからで。
つまりこの幸せは続くということなのだ。そう、永久に。
どれも夢のようだけれど、現実も存在していることを喜ぼう。
「すみません、起こしてもらえませんか?」
いつまでもベッドの中にいるわけにもいかないのだから、そろそろ起き上がるべく、僕は声を上げた。
自分で起き上がって、君の待つところへ行き「おはよう」と囁くようなことはできない。
僕の声に反応して、世話のために着いてくれているらしい人たちが部屋に入ってくる。
持ち上げられて、車椅子へと乗せられた。
そっと君の後ろに立ち、驚かせて笑わせる、そんなテンプレートも僕には通用させられない。
「おはようございます」
それでも君は笑い掛けてくれる。
「おはようございます」
挨拶を返す声を僕は持っている。
この幸せを持っているのだから、それは十分なことなのだろうと思う。
思おうとしているところもあるかもしれないが、思うところがあるのも間違えない。
間違えなく、僕は幸せだ。
これだけは間違えなく言えるから、僕は自信を持って挨拶をした。
「みなさんとも、どうぞよろしくお願い致します。僕のためにありがとうございます、これは自惚れでは、ないですよね?」
返ってくるのがみんな笑顔だったから、安心して僕も笑えた。
どこへ行って何を見るのか、緊張するが楽しみだな。




