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残された時間の中で、僕には何ができるだろうか。
この震える手で、君を守ることができるのだろうか。
君の隣にいられることが、僕にはとても幸せなことだ。
君の笑顔を見られることが、僕にとっては何よりも幸せなことだ。
だからこそ、この幸せを大切にしたい。この幸せの中にいたい。
最高に幸せな時間を終わらせてしまうのが、壊してしまうのが僕なのだと思うと、僕は僕が憎くて仕方がなかった。
この体が憎い。
病院の外の景色を、窓から見えるものとしか知らない。
幸せな時間を過ごすに連れて、最初からただでさえ弱い僕が弱っていくということが、僕にはどれほど辛いことであろうか。
けれどそれよりも辛いのは、君に悲しい思いをさせてしまうことだ。
寝たきりで何もできない僕にいつも君は会いに来てくれる。
「今日は遅くなってしまってすみません。あなたも知っているでしょうけれど、外は雪が降っていますから、あたしも含めて人々が慎重に歩いておりました。外は寒くてならないので、早く来たいとは思っておりましたが」
「ああ、おはよう。大変な中、わざわざ来てくれてありがとうございますね。風邪を引いてもいけませんから、無理して来ることありませんでしたのに」
午前十時から午後四時まで、君は僕の病室にいる。
家から病院まで毎日歩いてきてくれるのだ。
決められているわけではないのだから、もちろん、数分くらいの誤差は日によってあるけれど、帰る時間が遅くなることはあっても来る時間が一時間以上遅くなることはなかった。