第九話「発現」
先にオブジェクトの力を使い剣を召喚して僕の前を歩く法子さん。 その後ろをおっかなびっくり付いていく僕。場所は人気の無い倉庫や工場が並ぶ工業地帯のようだ。
「あまり離れないでね。 でないとあなたを庇いきれないから」
「あ、うん」
前方を向いたまま声をかけてくる法子さんに震えた声で答える僕。なんと情けない事か。早くオブジェクトが僕になにか力を寄越してくれれば法子さんの役に立てるのに・・・・・・そうすれば法子さんが生き残る可能性が高まり、そして最後はどうにかこうにか法子さんをリタイアさせて最後の一人になった僕はゼロとあんな事やこんな事を愉しむんだ・・・・・・。
「っ!? 伏せて!」
すぐ後ろを歩いていた僕の頭を力づくで押さえつけ地面に叩きつけるような勢いで伏せさせる法子さん。そのすぐ上を炎の塊が飛んで行って弾けた。
「炎を操る能力か・・・・・・」
接近戦が主体の法子さんとは相性が悪い相手だ。 懐に入り込めればなんとでもなるだろうけどそう簡単には入らせないだろうしそうならないように相手も必死で炎を操り法子さんを焼き殺しにくるだろう。
「今の火の玉だけが攻撃手段ってわけではないはず。 とにかく一旦物陰に隠れましょう」
そういって法子さんは綺麗に並べられているフォークリフトの陰に僕を引っ張りながら隠れた。
「何処かにいるはずだけどこうも暗いと・・・・・・」
「何かないかな・・・・・・」
そう言って周囲を警戒しつつ隠れていると急に頭上が明るくなり何事かと思って見上げると複数の火の玉が僕らの真上周辺に落下してきているところだった。
一瞬の判断で法子さんは近くの倉庫の壁を剣で切り裂きそこにダイブ、と同時に火の玉が着弾してかなりの爆発音を響かせ数台のフォークリフトと地面を破壊した。
「このままじゃ何もできないまま殺されるっ! 何か、何かないの!?」
燃え上がる炎に照らされて浮かぶ焦る法子さんを見て僕は改めて何も出来ない自分を呪ったが、心の余裕が無くなっている法子さんがこちらに背を向けて中腰になっており僕はまだ立ち上がっておらずしゃがんでいる体勢なので目の前に法子さんの尻が突き出させる図になっておりそれも炎でなんとなく輪郭が見える程度で出来る事ならまじまじと尻のラインを眺めまわしてやりたいと心から思っていたら、なんということだろうか、急に昼間にでもなったかのように目に映る景色が鮮明に見えるようになったのだった。
「え!? なにこれどういうことっ!?」
急に声を出した僕に驚いた法子さんは僕に向き直り何事かと確かめる。
「もしかして、それがあなたの能力なんじゃない? 暗視能力とでもいえばいいのかしら」
「普通暗視ゴーグルとかで見ると緑一色だった気がするけど、僕のは本当に昼間と同じ光景に見えてるんだよね、これなら相手が何処にいるかちょっとは見つけやすいかも」
僕の話を聞いて法子さんは何かを決断したらしく僕の顔を見て話した。
「良い? 私は一旦外の広い場所に出ていくから君はどこから炎が飛んできてるか、もし出来るなら相手がどこに居るかも観察して頂戴、 それが分かったら大声で叫んで、そこに全力で跳ぶから」
「分かった」
僕と法子さんは頷き合いそれぞれ行動に出る。相手が殺す気で行動している以上、法子さんがあの剣で相手をどうこうすることに僕が口を挟むことじゃない、だから僕は自分の法子さんの身を守るために相手を殺す手助けをすることに躊躇は無かった。
「全てはゼロとスケベするために!」
僕はそう言い放ち法子さんが出ていったのと違う方向の燃えてないフォークリフトの陰に隠れながら首位を見渡した。
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