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第二十一話「さよならくらいは言いたかった」

 僕の透視を使い曲がり角や見通しの悪い区画、崩れた瓦礫の向こうや爆発炎上している車や部屋などあらゆる物の先に潜んでいないかを見極めながら法子さんの先導を務めていたのだが、敵との遭遇は出来るだけ避けつつ残り数人になって消耗した所を狙うつもりだったがそう思い通りに行くわけも無く、透視に気を取られ過ぎて足元のガラス片を踏んでしまい、その音がきっかけとなって敵に気づかれ戦闘に突入してしまっていた。


「ほほぉ、結構な上玉じゃねえか! なあお前さっさと降参しろよ。 したら命だけは助けてやっからよぉ」


 何を考えているのか言うまでもない程のゲスな笑みを浮かべる男が剣を構える法子さんに話す。


「それで? そのあとはあなたにこの身体を好きなように弄ばれるってことでしょう?」

「ひゃはははは! よくわかってるじゃねえの。 あったりめえよ、てめえのそのスケベな体に女の喜びってやつをたっぷり教え込んでやっからよぉ! あ、ちなみにガキ出来たら面倒だからそんときは腹のガキと一緒に消すからそのつもりでな」


 ゲスというよりクズな発言に言葉を失う法子さん。剣を握る手に力が籠る、


「あんたみたいなクズは私が殺して上げる。 どうせ女は今あんたが言ったようにして殺して、男は問答無用で殺して勝ち残ってきたんでしょうから殺されたって文句はないでしょう?」

「大した自信だなぁ? そんだけデカい口叩いたんだ、ちっとはバトルで楽しませてくれよぉ!?」


 男はそういうと手を槍のように構えると法子さんへ駆け出し間合いを詰める、対する法子さんは迎え撃つように微動だにせず構える。

 男の手が突き出されそれを最小限の動作で躱し手のスナップだけで剣を小さく振り上げ腕を切り捨てようとした法子さんだったが、刃が男の肘の辺りに当たった直後金属にでも当てたような音が響き法子さんの剣は弾かれ、予想外の事にひとまず間合いを取りなおそうとした法子さんだったが男がそれを見逃すはずも無く無防備になった腹へ肘を叩き込む。


「かはっ!?」

「ただの格闘バカだと思ったか? それだけで勝ち残れるわけねえだろうがバァカ。 俺の能力は全身硬質化、あらゆる攻撃に耐える絶対防御、見た目が変わらねえから今のお前みたいに斬撃、または打撃で俺に攻撃を仕掛けてきたやつらを返り討ちにするのがたまんねえだよね」


 勢いよく壁まで吹っ飛ばされ腹を抑えて咳き込みながらもよろよろと立ち上がる法子さんを愉快そうに眺めながら男は語る。


「さぁ、どうする? 連れの野郎は能力なんか使わなくても瞬殺だろうからいいとして。 正直さっさと降参してほしいんだよねぇ」


 男はゆっくりと法子さんへと歩み寄っていく。


「楽しそうじゃねえか、俺も混ぜろよ」


 崩れた壁から声がしてそちらに目をやると守さんが槍を構えて立っていた。


「ま、守さん!」

「なんだあんた? こいつらの仲間か」

「だったらなんだ」


 守さんは槍を男に向けて構えつつ前進して間合いを詰めていく、男はそれに合わせて法子さんから守さんに標的を変えて先ほどの手を槍のように構えてこちらもまた距離を縮めていく。


「随分硬そうな鎧着てんだな、俺のとどっちが硬いか勝負といこうか」


 男はそういうとゆっくりとした動きから一転、一気に駆け出し守さんに手を突き出し一発で仕留めようと仕掛けた。

 対する守さんもカウンター狙いで鎧の防御力を信じあえて男の攻撃を受けた上で槍で貫こうと動いた。


「ぐっ!?」

「へへ大した硬さだな、だが武器はそれほどでもねえみたいだな」


 結果は男の攻撃を受けた守さんの鎧には亀裂が走りいくつか破片が足元に落ち、衝撃はそのまま守さんに届いたようで軽く呻きながらも耐えていた。一方槍を受けた男の身体は傷一つなく弾き槍の刃先を握り込んで動きを封じ込めていた。


「どれ、もう二発くらい叩き込めばその自慢の鎧も砕けるだろうよ。 そしたら生身のてめえをサンドバックにして遊んだ後にそこの女をたっぷり可愛がってるところを見物させてやるよへへへ」

「そこのってどこのだ?」

「あ?」


 守さんの言葉の意味がわからず法子さんが居た場所に顔を向けようとした男の目に法子さんの剣が突き刺さる。

 刺すだけではなく法子さんはそこから剣を横なぎに振るい男の頭の半分が切り飛ばされた。


「ありがと、守さん」

「本当はあのまま俺がこいつをぶっ倒して終わりのはずだったんだがなぁ」


 残念そうな苦笑いを浮かべて守さんは倒れこんで鎧を解除して瓦礫にもたれかかって動かなくなった。


「え?」

「たぶん、他の所での戦闘でのダメージでしょうね。 よくこんな身体で戦い続けようとしたもんだわ」


 法子さんがしゃがみ込んで守さんの目を閉じてやる、鎧で隠れて見えなかった守さんのスーツはボロボロで殆どぼろ雑巾のような状態で腹からは大量の出血があり素人目にも致命傷だった。


「そんな、守さん・・・・・・」

「行きましょう、守さんの分まで戦うのよ」


 法子さんは僕の腕を掴み引っ張って前に立たせる。すると僕の背中にコツっと法子さんの頭が当たる。


「さよならくらいは言いたかった・・・・・・」


 震える法子さんの声がやけにしっかりと僕の耳に聞こえた。

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