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第十七話「支配」

 階段を殆ど飛び降りる勢いで下っていき、時折襲い掛かってくるOLさんやらおじさんを法子さんと守さんが多少は手加減して殴りつけたり蹴っ飛ばしたりしていくのを僕は必死に転びそうになりながらも追走していた。


「ちょ、ちょっと! ペース落とせませんかね!?」

「なに言ってんの! ペースをあなたに合わせてたらすぐに囲まれちゃうわよ! ゴーゴーゴー!」


 僕の提案を瞬時に却下し駆け下りていく法子さん。守さんは苦笑いを浮かべつつもペースは落とさず法子さんの後を息一つ乱さずに追っている。

 しばらく降りていくと、操られているのかなんなのかよくわからないこのビルの従業員の人たちが襲ってくる人数が減ってきて、今いるフロアにたどり着くと僕の目に映るのは大きな会議室と思われる部屋の一番奥、ドラマとかで重役さんが座っている椅子に腰かけている人物一人だけだった。


「二人とも気を付けて、この部屋に一人で待ち構えているみたいだ」


 小声で伝えると二人は無言で頷き返しアイコンタクトを交わし二人は指でカウントを開始し勢いよくドアを蹴り破り、部屋へと突入した。

 部屋は暗く、月明かりが薄っすらと差し込む程度で誰かが椅子に座っている程度しか普通の人には見えていないだろう、だけど今の僕には昼間と同じように見えているので相手がどんな奴かもはっきりと認識できた。

 中肉中背、人畜無害という言葉そのものといった印象を受けるどこにでもいる普通の青年だった。


「こんばんは、僕の操り人形たちを掻い潜ってここまで来れたんだね」

「随分余裕の態度ね。この階にはあなたのお人形はいないみたいだけど、接近戦特化の私たち相手にあなた一人で勝てるのかしら?」


 法子さんは剣を突きつけながら挑発をするが、相手は至って冷静で愛想よくニコニコと笑い法子さんと守さんを一瞥し、最後に後ろにいる僕が真っ直ぐ自分を見ていることに気づいたのか笑みを深めた。


「後ろの君、月明かりしかないこの暗い部屋でまっすぐ僕の顔を見ているってことは暗視能力持ちかな? すごいねえ。 君はもしかしたら複数の能力を持っていたりするかい?」

「・・・・・・だとしたら?」


 僕はなるべく声が震えないように懸命に強がってなんでもないような調子で答える。


「危険だな。すごく危険だ。 能力の複数持ち、君単体ならそうでもないかもしれない・・・・・・けど、もしそれが遠距離系の能力者と組み合わさったら? 能力じゃなくたってなんらかの武器を扱える人物と組んだら? そうなった時君の能力はとてつもないアドバンテージを得ることになる」


 青年はゆっくりと椅子から立ち上がりこちらに向かって一歩一歩静かに歩み寄ってくる。


「動かないで、それ以上近づけば殺すわよ」

「そうはならないさ・・・・・・ね? 守さん」

「は、なれ・・・・・・ろお前ら」


 青年は急に守さんの名前を呼ぶと、守さんは苦しそうな声を上げて退避を促してきた。


「ま、守さんどうしたの!? まさかこいつに・・・・・・?」

「いつの・・・・・・まに、しか・・・・・・けやがった・・・・・・?」


 青年は余裕たっぷりな笑みを崩さずに答える。


「この間、隣の人にクッキー貰ったでしょ? あれに混ぜといたんです。 一応この会社の人ほぼ全員に行き渡ってるんで動かそうと思えばいくらでも出来ます。 僕が指示を出せばね」

「一人に食わせて操ってそいつをきっかけに他の連中にも食わせて増殖させていったわけか・・・・・・」

「そういうこと」


 青年の説明に僕がこの状況に至るまでの経緯の過程を話すと満足そうに僕を見ながら頷く。


「そういうわけで、君たち、ここでそこの守さんと殺されちゃって」


 青年が指を鳴らすとギリギリ意識を保っていた守さんの様子が一変して上階で襲ってきていた従業員の人たちのように完全に支配されてしまったようで躊躇なく法子さんに襲い掛かった。

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