第十三話「まずは友達から」
今回は堂君ではなく拓斗君のお話です。
俺が助けた女は殆ど喋ると言う事をせず、「ん」とか「いや」とかごく短い言葉で俺の質問に答えるだけでハッキリ言ってめんどくさい事この上なかった。 だが、手に持っていたビー玉みたいな物を大事そうに握りしめていたのが気になって腹が減っていたようなので連れてきた近くのファミレスで飯を食わせていた時、テーブルの上に置いたそれに手を伸ばしたら物凄い勢いで腕を掴まれ、本気で殺されんじゃないかと思える視線で睨まれすぐにそれを返すと大人しくなった。
「なぁ。 それってそんなに大事なもんなのか? 一体なんなんだよそれ」
「これを使って戦って願いを叶える」
女はまともに言葉を発したが内容が何かの漫画のような話で話半分で聞き流した。要するに電波ちゃんだと俺は判断した。
「願いを叶えるねえ・・・・・・お前何歳だよ? そんなもんで遊んでないで勉強するかもっと今どきの若者らしいもので遊べよ」
「イマドキとはなんだ? 私の年は18だ」
「はっ!? お前、いやあんた俺より年上なのかよ・・・・・・全然みえねえ」
「それよりこの食べ物は美味だな、もっと食わせろ」
「オムライス知らねえのかよ・・・・・・どっからどう見ても日本人にしかみえねえ外見だがあんたどこから来たんだ?」
なんとなく会話は出来るので安心したが話してるうちになんかこう齟齬みたいなものを感じてきて色々質問をしていくことにした。
「私はここの世界の人間ではない。 ゼロによってつれてこられた。 私がこれを使って勝ち残り願いを叶える。そして私は元の世界に戻る」
「そのゼロってのがあんたにそのビー玉を渡して力を与えたってか」
「ん」
短く肯定の意を表す女。
「そういやあんた名前は? 俺は川島拓斗 たくとでいい」
「私の名はサーシャ。 ただのサーシャだ。 たくと」
サーシャという響きだけを見るとどう見ても日本人ではないのだが外見が完全に日本人なこの女との初コミュケーションはこんな流れだった。
それから食後の運動だといって人気の少ない良く堂がエロ本を漁っている河川敷に来るとより人目につかない橋の下まで移動してサーシャはおもむろにビー玉を握り込む、するとサーシャを黒と紫の炎みたいな物が渦を巻いて覆い隠したかと思うとすぐにそれは消え、中から全身甲冑の騎士が現れた。
「どうだ、たくと。 これが私の力だ」
「・・・・・・マジなのか」
目の前で見せられた光景に最後まで信じずにいたが流石に疑いようもないので俺は両手を挙げてため息をついた。
「参ったねこりゃ。 で、俺もその殺し合いに参加しろってのか? それともここで俺を殺すのか?」
「そんなのは望んでいない。 だが助けてくれた恩がある。 だから私が戦って殺した相手から何か役に立ちそうなものを奪ってくる。 それをたくとにやる」
「いやいや。 そんなの良いからよ。 あんたの好きなようにしろよ。 俺は殺すのも殺されるのも御免だ」
「では、どうやって恩を返せばいい? 身体か?」
変身を解いて元の美女の姿に戻ったサーシャが上のシャツを無造作に脱ぎ捨てようとするのを慌てて止める。
「待て待て待て。そういうのいいから!」
「だが・・・・・・」
申し訳なさそうに何かお返しをしたいと訴えてくるサーシャの真っ直ぐな目に狼狽えつつ俺はなんとも歯切れの悪い返事を返す。
「じゃあさ・・・・・・俺と友達になってくれよ。 戦いが無いときは時間あるんだろ?」
「ん」
「だったら、戦いの時はもちろんそっちの都合で動いてくれて構わない。 それ以外の時は俺と遊ぼうぜ」
「・・・・・・そんなのでいいんか?」
「ああ、そういうのでいいんだよ」
「ん、たくとがそれでいいのなら」
「じゃあ、これからよろしくサーシャ」
「ん」
大分暗くなっていたがぼんやりと見えるサーシャの笑顔は倒れていた時に想像していたよりも綺麗に俺の目に焼き付いたのだった。
「ん」とか短い言葉で感情表現してくる女の子可愛いと思ったら下のボタンからポイント入れられます。




