第十一話「好きでやってるわけじゃない」
炎を操る能力に目覚めた参加者を退けた僕と法子さんは迎えの車に乗りそれぞれ自宅近くで降ろしてもらい解散になった。
その後、僕は興奮が冷めないうちに元気な息子をスッキリさせてから風呂に入り清々しい気持ちで寝間着に着替え寝ようとしたが、ケータイに着信が来ている事に気づいた。
「ん? 誰からだろ」
ケータイを操作し着信履歴を見れば拓斗からだった。急用かもしれないし、今日はすっきりしたあとなので僕は拓斗に電話をかけた。
「あ、もしもし拓斗? 電話出られなくてごめん風呂入ってた」
何度目かのコールの後繋がったので拓斗に謝罪をした。
「ああ、堂。 いや別に謝らくていいよ。 明日学校で聞いても良いかなってくらいの要件だったから」
「あ、そうなんだ。 で、どうしたの?」
僕が問うと電話口の向こうで拓斗が深呼吸をするのが聞こえた。
「あのさ・・・・・・いや、やっぱりいいや。 忘れてくれ、悪いなわざわざ電話してもらってんのに」
「別に構わないけど、本当にいいの?」
僕は再度尋ねるが拓斗は別に大丈夫だというので通話はそれでおしまいになり僕はベッドに横になりそのまま横になり眠りに落ちた。
次の日の朝。 いつも通りに起きると階段をドタドタと駆け上がってくる音が響き何事かと思っていると母親がノックも無しに僕の部屋を勢いよく開けて入ってきた。
「な、なにどうしたのさ母さん」
「たたたたた拓斗、今玄関に女の子が! すっごい可愛い女の子があんたと一緒に登校しに来たって! 彼女!? 彼女なの!?」
驚きの余り声はひっくり返り音量は凄い大きく目は激しく泳ぎ動揺しているのが見てわかる。そんな慌てぶりを見せる母親の言葉に僕はポカンと立ち尽くす。
「登校・・・・・・? 待って着替えたらいくから」
「はははははやくしてね! リビングで待っててもらうから!」
再び慌ただしく階段を駆け下りていき話し声が微かに聞こえるがさすがに誰かまで判別は出来なかったが着替えも終わったことだし僕は鞄を持って階段を降りていきリビングのドアを開けるとそこに居たのは、朝のニュースを興味なさそうな顔で眺めている法子さんの姿があった。
「おはよう、やっぱり法子さんか」
「おはよう、ええそうよお漏らし君。 一応昨日の件について伝えておこうと思ってね」
母親に聞き取られないように気持ち低めの音量で挨拶と会話をしてから僕は手早く朝食を済ませ法子さんにはコーヒーを出して待ってもらい身支度を整えると僕らは家を出た。
ちなみに母親は終始動揺しっぱなしでコップを割ったり砂糖と塩を間違えたりと散々な様子だった。
「まさか、法子さんとこうやって登校するなんて思ってもなかったよ」
「好きでやってるわけじゃない。 あくまで報告のためよ」
そう言って法子さんは淡々と歩きながら昨日の戦闘の話を聞かせてくれた。
結論から言うとあの炎使いは法子さんだけを殺すつもりだったが直前で避けられて自らの炎で自分を爆殺するという呆気ない最期を遂げた事。 昨日だけで各所で事件が発生しており炎使いのように脱落者は出たようで少しずつだが数がこれから減っていくだろうという話だった。
「これで、順調に生き残っていけば・・・・・・ゼロと・・・・・・」
「ん? 何か言ったかしら」
小さく漏らした独り言に反応した法子さんが俯いていた僕の顔を覗き込んでくる。 視界一杯に映る法子さんの綺麗な顔となんだか分からないが花のような優しい匂いに動揺して後ずさってしまう。
「なななんでもないよ!」
「そ。 じゃあ私は自分の学校に向かうわ。 また放課後」
「うん、またね法子さん」
そう言ってそれぞれの学校へと向かう道へと分かれて歩き出した。
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