体より先に心をころす方法
初めての衝動を感じたのは二年前の十二月十四日だった。
それまでは彼が一方的に告白してくるばかりで、私は本当になんとも思ってはいなかった。今思えばそれは自分でも気づいていなかっただけで、毎日の彼からのアプローチに対しての感情は確かに積み重ねられていて、その日ついに決壊した、それだけのことだったのだとも言える。
「なあ。俺はお前のことが好きだ」
「知ってるわ。毎日毎日幻聴が聞こえるくらい言ってくれるんだから」
「だからさ、俺だけのものになってくれ」
「具体的に言うと?」
すぐには答えず、携帯でも取り出すような手軽さで、バタフライナイフを学ランの内ポケットから取り出した。
「俺の目の前で死んでくれ。そしたらお前を俺の一部にするんだ」
「ああ、そうなの。でもそういうことなら、お願いを聞いてあげるわけにはいかないわね」
電話に応じるように私もスカートのポケットから両手にハサミとカッターを構えた。
「殺すのは私の方で、私はそのあとに死にたいから」
ここには私たち以外には誰もいない二人だけの時間。普段の私たちを人が見ると、仲の良いカップルに見えるかもしれない。それくらい日常的で淡々とした、それはワルツのようなコロシあい。
CPお題(殺伐・ヤンデレ編)やってみたーhttps://shindanmaker.com/238431からのお題。初めての衝動/それはワルツのようなコロシあい/体より先に心をころす方法。