生きている私から、もういないあなたへ
この学校を卒業する前日、つまり今日は最後の放課後。私は名残惜しさから校舎を歩き、最後に屋上の扉を開いた。
私にとっては最後でも、この学校はいつもと同じ景色でしかなかったけれど、屋上のコンクリートを濡らす雨の雫は涙色に見えた。
ここは親友と過ごした思い出深い場所だ。二年生のとき、卒業式の合唱で歌う曲を作ろうと決めたのもここだった。だけど、彼女は半年前に交通事故にあって、帰らぬ人となってしまった。きっと私の詩には永久に音楽がつかないままになってしまうのだろう。それでも私は今日まで、以前と変わらない頻度でここを訪れ続けていた。ここに来る度に、あのときと同じように、引っ込み思案だった私を明るい前向きな彼女が引っ張っていってくれるような気がしていたから。でも、私は明日卒業する。彼女にも本当に別れを告げなければならない。
さよなら。あなたの分まで頑張るよ。
心の中で別れを告げて、扉の方へ向いた私の耳元に誰かが囁いた。
「さよならなんて言わせないわよ」
背後から不意に回された腕が首にかかり、一瞬で息ができなくなる。そして次の瞬間、強い力によって体が空中に放り出された。落下防止のフェンスを軽々と越えるのが見える。
【創作向け】100のお題から選んだーhttps://shindanmaker.com/196345からのお題。【71/さよならなんて言わせない】【68/いつもと同じ景色】【47/雨の雫は涙色】。