愛しのまりも
今日は授業が早く終わり、アパートに帰ってきたのは夕方だった。寒くなってきたと思って屋根の上を見れば、気の早い真ん丸な月が覗いている。まあそんなことは特に気にすることもなく、俺は家に入ると真っ先にベッドに飛び込み、傍に置いている机を見てため息をつく。
「俺のまりもが可愛すぎる……」
ディープブルーの瓶の中を揺蕩うまりもは見ているだけで心を癒してくれる。
「ん?」
体勢を変えた拍子に枕から手紙が落ちた。『今度のバレンタインデー、家行くからね』。
「やべっ!」
そういえばそんなことを言っていた。
束縛気味な彼女のことだ、まりもにうつつを抜かしてデートの回数が少なくなっていると知ったらどうなるか分かったもんじゃない。
「へえ。俺のまりもが可愛すぎる……ねえ?」
氷のような声が聞こえた。まりもに夢中だった俺は彼女が台所に立っていたのに気づかなかったようだ。
「言い訳……する?」
「い、言い訳っていうか、まずまりもから目を離してくれない?」
「そのまりもが悪いのよね。あなたが堕ちてしまうわ」
「あっ、やめて」
その後のことは語るまでもない。予想通りの落ちがついて、うちには猫禁止令、インコ禁止令に続き、まりも禁止令が出された。
恋愛お題ったーhttps://shindanmaker.com/28927からのお題。「夕方のアパート」で登場人物が「言い訳する」、「氷」という単語を使ったお話。
妙なお題だけで三題話をしてみやがれったーhttps://shindanmaker.com/161245からのお題。「まりもが可愛すぎる」と「堕ちて」と「枕から手紙」。
創作お題メーカーhttps://shindanmaker.com/242953からのお題。「バレンタインデー」「月」「束縛」。




